26 / 39
第26話 魔王様には内緒で試す
しおりを挟む
「ここが客室だよ」
「案内してくれてありがとう。ところで、あなたはどこで寝ているの? もしかして、私と同じ部屋なんて言わないわよね」
「安心して。僕はニャンニャ様の部屋に住んでるから」
「は?」
「ニャンニャ様の部屋だよ」
「……ろ、ロリコン?」
「今日一で真剣な顔するのやめてくれないかな」
まあ、普通に考えれば――そういった感想になるのか。
「大丈夫、あと一人ニャンニャ様の双子でワンワって子がいるんだ。二人じゃなくて三人一緒だから」
「……はあ。私たちの世界とは常識が違うだろうから一概にダメと決めつけるわけにはいかないけれど。変な気だけは絶対に起こさないでね? 連帯責任で私まで追い出されることになるかもしれないわ」
「その点についてはさらに大丈夫、万が一にも僕がその気を起こしたとしても一瞬にして強制帰還になってるよ」
戦闘力の差を考えてみてほしい。
とりあえず、納得してくれたのだろう。碧土さんは一言「そう」とだけ言い残し客室にインしようとする。
僕はふと、碧土さんが後ろ手に持つ花――『フラ・フラワー(ピンク)』が目にとまり、
「そういえば、その花食べられるらしいよ」
「へぇ、そうなの? どんな味がするのかしら」
言うが早いか、碧土さんが躊躇なくその花に噛り付く。
碧土さんの所属するサークルは『プラント艦隊』という。サークル名から察する通り、植物に関するものが大好きなのだろう。興味を持ったものには一直線とでもいおうか、分野は違えど碧土さんからは僕と似た空気が感じ取れる。
碧土さんはポリポリと爽快な音を鳴らしながら、
「うんっ、私たちの世界でいうレタスみたいな味ね。歯応えはそれ以上だけど――って、なんで私の顔をじっと見ているの?」
「いやー、どうなるのかなって」
はたして、どのような効果があるのだろう――僕は碧土さんを観察する。
「??? どうもなにも、今言った通りの味――」
感想を言い終える寸前、碧土さんが不意に口もとを抑え、
「――っ、ん」
「エロい!」
艶めかしい声が手の隙間から漏れる。
正直、僕はこのピンクの花――『フラ・フラワー』の効果を少し疑っていた。プラシーボ的な意味合いが大きく、そこまで大した効果はないのだろうと思っていたのだ。
碧土さんは全身を震わせながら首もとまで真っ赤に、
「……っ、ぁ、天音くん。私言葉のニュアンスを、受け取り違いしていたわ。あなた、今、どう『なる』のかなって、こ、こうなること、わかってたわね? も、もういい。部屋で、休むわ」
潤んだ瞳で言う。
碧土さんは怒る気力すらもわかないようで――ふらりとした足取りで客室の扉を開けようとする。そのドアの開く勢いにすら耐え切れず後ろに倒れかけたので、僕は慌てて碧土さんの身体を支える。
「ふゃあ。へ、変なところ、触らないで」
「ごめん、倒れそうだったから」
「い、今、身体が敏感になってるの。は、早く、放して」
想像を遥かに超えた効果である。
客室に入る直前、碧土さんはぎりぎりと歯噛みしながら、
「……治ったら、覚えてなさい」
試した代償の大きさに僕の全身も違う意味で震えるのであった。
「案内してくれてありがとう。ところで、あなたはどこで寝ているの? もしかして、私と同じ部屋なんて言わないわよね」
「安心して。僕はニャンニャ様の部屋に住んでるから」
「は?」
「ニャンニャ様の部屋だよ」
「……ろ、ロリコン?」
「今日一で真剣な顔するのやめてくれないかな」
まあ、普通に考えれば――そういった感想になるのか。
「大丈夫、あと一人ニャンニャ様の双子でワンワって子がいるんだ。二人じゃなくて三人一緒だから」
「……はあ。私たちの世界とは常識が違うだろうから一概にダメと決めつけるわけにはいかないけれど。変な気だけは絶対に起こさないでね? 連帯責任で私まで追い出されることになるかもしれないわ」
「その点についてはさらに大丈夫、万が一にも僕がその気を起こしたとしても一瞬にして強制帰還になってるよ」
戦闘力の差を考えてみてほしい。
とりあえず、納得してくれたのだろう。碧土さんは一言「そう」とだけ言い残し客室にインしようとする。
僕はふと、碧土さんが後ろ手に持つ花――『フラ・フラワー(ピンク)』が目にとまり、
「そういえば、その花食べられるらしいよ」
「へぇ、そうなの? どんな味がするのかしら」
言うが早いか、碧土さんが躊躇なくその花に噛り付く。
碧土さんの所属するサークルは『プラント艦隊』という。サークル名から察する通り、植物に関するものが大好きなのだろう。興味を持ったものには一直線とでもいおうか、分野は違えど碧土さんからは僕と似た空気が感じ取れる。
碧土さんはポリポリと爽快な音を鳴らしながら、
「うんっ、私たちの世界でいうレタスみたいな味ね。歯応えはそれ以上だけど――って、なんで私の顔をじっと見ているの?」
「いやー、どうなるのかなって」
はたして、どのような効果があるのだろう――僕は碧土さんを観察する。
「??? どうもなにも、今言った通りの味――」
感想を言い終える寸前、碧土さんが不意に口もとを抑え、
「――っ、ん」
「エロい!」
艶めかしい声が手の隙間から漏れる。
正直、僕はこのピンクの花――『フラ・フラワー』の効果を少し疑っていた。プラシーボ的な意味合いが大きく、そこまで大した効果はないのだろうと思っていたのだ。
碧土さんは全身を震わせながら首もとまで真っ赤に、
「……っ、ぁ、天音くん。私言葉のニュアンスを、受け取り違いしていたわ。あなた、今、どう『なる』のかなって、こ、こうなること、わかってたわね? も、もういい。部屋で、休むわ」
潤んだ瞳で言う。
碧土さんは怒る気力すらもわかないようで――ふらりとした足取りで客室の扉を開けようとする。そのドアの開く勢いにすら耐え切れず後ろに倒れかけたので、僕は慌てて碧土さんの身体を支える。
「ふゃあ。へ、変なところ、触らないで」
「ごめん、倒れそうだったから」
「い、今、身体が敏感になってるの。は、早く、放して」
想像を遥かに超えた効果である。
客室に入る直前、碧土さんはぎりぎりと歯噛みしながら、
「……治ったら、覚えてなさい」
試した代償の大きさに僕の全身も違う意味で震えるのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる