魔王城の面子、僕以外全員ステータスがカンストしている件について

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第31話 魔王様自慢の農場

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「しかし、憑依の魔法ですか」

 ダーレンさんがくつくつと笑いながら言う。
 リュージンさんはすでにこの場にいない。よほど驚いたのだろう――「ごめんなさぁぃいいいいい」と叫びながら空へと浮上、一目散に消え去った。
 さすが、魔王様と言うべき存在か。
 あのリュージンさんの怯えた表情から察するに――それ以外のなにか恐怖が刻まれている感がしないでもないけれど。
 碧土さんはコホンと咳払いを一つ、

「……すいません。適当に言ったのですが、彼の見た目と性格からして信じるかなと思いまして」
「いえいえ、存外的を得ていますぞ。憑依と似たような魔法はお持ちだったはず――姫様は魔法に関してはワンニャン王国で右にでるものはいませんからのう。まさに魔王の名に相応しい力を兼ね備えております」
「ワンワがパワーでニャンニャ様が魔法って感じなんですかね」

 僕は性格的な意味も含め、思ったままに聞いてみる。

「そうですな、晴人殿の推察通り姫様たちは武と知にわかれております。それはもう恐ろしいくらいまでに――」

 ふと、ダーレンさんの顔に陰りが差す。

「――いずれ、晴人殿には話すかもしれませんな」

 この話はここで終わりと言わんばかりに、ダーレンさんが早足で前に出る。

「さてさて、想定外に時間を取られましたので少し急ぎますかのう」
「……確かに想定外、ダーレン様はあのリュージンという方を小さいころから知っているのですか?」
「ほっほっほ。穂波殿、わたくしに様付けなどいりませんぞ」
「様付けで呼ばせてください」

 即答、あまりの圧にダーレンさんが一歩後退する。

「しょ、承知しましたぞ。先ほどの話ですが――リュージン坊っちゃんはまだ産まれたころより見知っております」

 ダーレンさんって一体何歳なんだろう。
 そういえば、以前コットンに年齢を聞いた際――フェルティ歴がどうとか言ってた上、ワンワが爆音で乱入してきてわからなくなったんだよな。

「リュージン坊っちゃんは悪い子ではないのですが、いかんせん好奇心が前にでてしまう性格でしてのう」

 道中、ダーレンさんの昔話を聞きながら進む。
 小さいころから大人になるまで――異世界といえど、どこの世界も共通して変わらない部分はいっぱいあるのだ。
 気が付けば、僕たちは目指す場所へと到着していた。

 ――例えるなら、農場だった。

 地平線が見えるほどの広大な土地に色とりどりの野菜、フラ・フラワーと同じくして雪にも負けじと力強い緑の芽がそこら中に確認できる。
 予想を遥かに超えて広い。
 ダーレンさん曰く、この場所はワンニャン王国の生命線の一つなようで――特殊な結界を張って雪の力を弱めていると言った。
 確かに、他に比べて寒さも雪の量も明らかに違う。ところどころに、収穫作業をしている人たちも目視できた。

「うわぁ、すごい――これもすごいわ。見たことない野菜たちがいっぱい! この環境化でたくましく育つからには、意外と歯ごたえとかあるのかしら? ダーレン様、これって試食とかしてもいいんですか?!」

 碧土さんがテンションマックスにて問う。

「ほっほっほ、お好きに食べて問題なしですぞ。基本どれも生で食べれますが、熱を通さないといけないもの少なからずありますので――一度、わたくしにお聞きくだされ」
「色々とお詳しいようですが、ダーレン様はご料理とかなさるのですか?」
「ほっほっほ、嗜む程度ですぞ。いずれ機会があれば腕をふるいましょう」
「……嬉しい。是非ともお願いします」

 両手を組みながら、碧土さんがうっとりとした表情で言う。
 碧土さんってもしかして――おじさん好き? いや普通に紳士的な男性が好みという可能性もある。同年代の男共は純粋に恋愛対象ではなかったのかな。今度タイミングがあったら尋ねてみよう。
 しかし、ダーレンさんの嗜む、か。
 なんかもう僕たちの世界でいう――フランス料理とか、三ツ星レベルの料理を普通に作れそうな雰囲気を感じる。
 それから数時間ほど経ち、

「うん。これくらいでいいかしら」

 碧土さんはテキパキと、苗や種を集めていき――満足いく結果が得られたのだろう。

「天音くん、これ魔王城までよろしくね。私はもう少し見たいものがあるから、一人でお願いできるかしら」

 最後に拷問のような一言を発するのであった。

「あひぃー、この量を僕一人で?!」
「私からの特訓よ。ステータス上げたいでしょう?」
「晴人殿、わたくしも手――」
「駄目です」

 ダーレンさんの言葉を碧土さんが瞬時に遮る。

「――穂波殿?! ま、まだ肝心の部分すら言っておりませんぞ」
「ふふ。ダーレンさんは私の護衛をお願いします」

 碧土さぁん、出発する際は護衛なんていらない的なこと言ってませんでした?
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