221 / 426
火の都サラマン激突編
220話 ウィンディア・ウィンド奪還戦 その2
しおりを挟む
二手にわかれる。
ヒオウはその行動を制止せず、余裕のある態度を崩さない。白雪の言う通り、底知れないなにかを――感じる。
ゲーム時、ヒオウとのボス戦は地上だった。
現在は空中戦、状況が一変しているということは間違いない。ヒオウのジョブは魔槍騎士、その名の通り――槍に魔力を込めて攻撃する火力重視の戦闘スタイルだ。
大陸龍にて対峙した白龍の騎士と同様、距離感が掴みづらい難敵である。
本来ならば、兵士と共に殲滅するつもりだった。しかし、ヒオウは僕の殺意を察知してか――触手がギリギリ届かない位置に立っていたのだ。
偶然? なんて浅はかな考えは持たない。
「くふふ。一人で私に勝てると思ったのかしら? 頭まで汚い触手で埋め尽くされているの? 全員でかかって来ればまだ勝算はあったかもしれないのに」
ヒオウが槍を前方に構えながら言う。
右手が――前? 瞬間的に気付く、ゲーム時と利き腕が異なることに。
警戒するんだ、この行動には必ずなにかしらの意味がある。
僕は両手に触手を展開、一直線に駆け走る。
「行くぞ、ヒオウっ!」
「来なさい、一刻も早く来なさいっ! 臓物を引きずり出してあげるわっ!!」
ヒオウの急所、一撃死を狙う。
脳、心臓、どこでもいいが――重厚な鎧を掻い潜る必要性がある。
白雪と修行した今の僕ならば、針の穴ほどの隙間でも侵入させるのは容易い。
触手と槍の攻防戦、弾き弾かれて――一進一退の状況が続く。
「くふふ、あははっ! 命のやり取り以上に面白いものってあるっ? あるわけない、あるわけないわよねぇええっ!!」
侵入の隙がない。
ヒオウは糸状の触手を感知している? いや、違う――この反応は別の形で認識しているに違いない。
ヒオウは槍を盾のように旋回させながら、
「フレイムドルフ様が忠告された通りだわ。命に迫る脅威、己の感覚こそが自身の命を守るとね」
一度は滅んだ火の都サラマン。
フレイムドルフの異常さだけが際立つが、その配下も戦闘狂に近いからこそ成り立つ国なのである。
王ほどの野心ではないにしろ、皆が胸に火を灯している。
「あぁあ、気持ちいいわ。もっともっと、私を攻めてちょうだい。今の一瞬で何回私を殺そうとしたの? あぁ、あぁあ、遠慮のない子だわ」
炎花の女将軍ヒオウ。
強者は――フレイムドルフだけではないのだ。
ヒオウはその行動を制止せず、余裕のある態度を崩さない。白雪の言う通り、底知れないなにかを――感じる。
ゲーム時、ヒオウとのボス戦は地上だった。
現在は空中戦、状況が一変しているということは間違いない。ヒオウのジョブは魔槍騎士、その名の通り――槍に魔力を込めて攻撃する火力重視の戦闘スタイルだ。
大陸龍にて対峙した白龍の騎士と同様、距離感が掴みづらい難敵である。
本来ならば、兵士と共に殲滅するつもりだった。しかし、ヒオウは僕の殺意を察知してか――触手がギリギリ届かない位置に立っていたのだ。
偶然? なんて浅はかな考えは持たない。
「くふふ。一人で私に勝てると思ったのかしら? 頭まで汚い触手で埋め尽くされているの? 全員でかかって来ればまだ勝算はあったかもしれないのに」
ヒオウが槍を前方に構えながら言う。
右手が――前? 瞬間的に気付く、ゲーム時と利き腕が異なることに。
警戒するんだ、この行動には必ずなにかしらの意味がある。
僕は両手に触手を展開、一直線に駆け走る。
「行くぞ、ヒオウっ!」
「来なさい、一刻も早く来なさいっ! 臓物を引きずり出してあげるわっ!!」
ヒオウの急所、一撃死を狙う。
脳、心臓、どこでもいいが――重厚な鎧を掻い潜る必要性がある。
白雪と修行した今の僕ならば、針の穴ほどの隙間でも侵入させるのは容易い。
触手と槍の攻防戦、弾き弾かれて――一進一退の状況が続く。
「くふふ、あははっ! 命のやり取り以上に面白いものってあるっ? あるわけない、あるわけないわよねぇええっ!!」
侵入の隙がない。
ヒオウは糸状の触手を感知している? いや、違う――この反応は別の形で認識しているに違いない。
ヒオウは槍を盾のように旋回させながら、
「フレイムドルフ様が忠告された通りだわ。命に迫る脅威、己の感覚こそが自身の命を守るとね」
一度は滅んだ火の都サラマン。
フレイムドルフの異常さだけが際立つが、その配下も戦闘狂に近いからこそ成り立つ国なのである。
王ほどの野心ではないにしろ、皆が胸に火を灯している。
「あぁあ、気持ちいいわ。もっともっと、私を攻めてちょうだい。今の一瞬で何回私を殺そうとしたの? あぁ、あぁあ、遠慮のない子だわ」
炎花の女将軍ヒオウ。
強者は――フレイムドルフだけではないのだ。
17
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?
嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】
ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。
見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。
大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!
神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。
「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる