転生したら倉庫キャラ♀でした。

ともQ

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火の都サラマン激突編

222話 ウィンディア・ウィンド奪還戦 その4

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 糸状の触手をフル展開。
 現在、僕の扱える触手は2本ある。上下左右、ありとあらゆる角度から攻撃を仕掛けているが、ヒオウは全て――回避していく。
 認めざるを得ない、こいつは――僕より遥かに実戦経験を積んでいる。
 今まで修羅場をくぐり抜けて来た数が違うのか。フレイムドルフ同様――命の境界線のライン、踏み込んできた脅威を完全に認識している。
 ヒオウは槍を器用に回転させながら、

「安心しなさい。あなたのクソ汚らわしいミミモケ族のナコちゃんは――まだ生きているわ。ううん、息をしている? どう言ったらいいのかしらね? あれだけの強い個体、すぐに死なせるなんて勿体ないのよ。良いこと思い付いたわ。ナコちゃんの前にあなたの首を持って行ったらどんな反応をしてくれるのかしら? 心が壊れる? それとも怒りで覚醒する? あぁあ、想像するだけで楽しいわぁっ!」
「そのペラペラとうるさい口を――閉じろ」
「くっふっふ、あっはっはっ! 黙らせてみなさいよっ?!」

 打つ手は――ある。
 だが、無策で放つわけにはいかない。僕は一つの可能性を待っていた。ヒオウは間違いなくなにかを狙っていると感じたからだ。
 警戒レベルをマックスにする。

「さあて、準備が整ったわ。まだまだ話していたいのだけれど、残念――私の勝ちよ」

 そして、その瞬間は訪れた。
 ヒオウが槍の構えを――左手を前、本来の利き腕にチェンジする。
 その瞬間、恐ろしいほどの強大な魔力が周囲に溢れ出した。

「今、私は自由になる――"自縄じじょうの解放" っ!」

 初めて聞くスキルだった。
 この異次元の魔力量、このタイミングで"閃の一槍"を放たれたら――僕は跡形も残らないだろう。

「プレイヤー、さすがのあなたも後付のスキルは記憶にないでしょう? これは意図的に自身を縛り付け、劣勢に追い込めば追い込むほど、魔力を一時的に向上することができるスキルなのよ」
「……まさか、自身を改造したのか?」
「強くなるためには当たり前よ。フレイムドルフ様のお力になれるのならば――私はなんだってするっ!」

 ヒオウが槍を掲げ、投擲の構えを取る。
 直撃すれば――死ぬ。そう、直撃すればの話だ。
 真正面から迎え撃つ。
 投擲の直線上に触手を展開、エサを察知した獣のように先端が獰猛に蠢いた。

「暴食。あの槍ごと喰らえ」

 僕はその必殺の一撃を――飲み込んだ。


 ――《 閃の一槍×1 》を獲得。


「は?」

 ヒオウが起きた事実に目を見開く。
 暴食は相手の持つスキルを貪欲に喰らい尽くす。習得には厳しい条件が必要だが、獲得ならば――話は別である。
 萌太郎さんの主力というだけあって、暴食は全てが規格外だった。
 スキルを喰らわれた対象は一時的に使用不可のデバフまで付与される。
 
 ただ、僕はまだまだ扱い切れていない。
 不明確な部分は多々あり、魔槍と閃の一槍、同時に喰らった場合――どちらのスキルを獲得できるか賭けの部分があった。
 まるで、暴食自身に食べ物の好みがあり生きているかのようである。
 捕食時の性能を加味し、バフに近い方を暴食は選択すると考えたのだ。

「ご馳走さま。今度は僕の番だよ」

 カウンター、閃の一槍を発動する。
 全てを失い、無防備になったヒオウの身体に――触手を侵入させる。
 貫通力10倍という強化、容易く鎧の上から突き刺さった。 
 体内から全身を拘束――"縛"により身動きを封じる。

「僕の勝ちだ。悪いが――ヒオウ、君にかける慈悲はない」
「……ふざ、けるなっ! 私はまだ、終わっていないっ!!」

 ヒオウが拘束を解こうとするが微動だにしない。
 細胞のいたるところに張り巡らされた糸状の触手――操り人形みたいなものだ。
 操作を行う傀儡師に歯向かうことなど不可能だろう。
 この形勢が揺るぐことはない。
 僕は追加で触診をヒオウに突き刺し――先ほどの話に戻る。

「実験していたと言ってたね。楽しいって話は本当なのかな?」
「……が、ぁああっ! あがぁあっ!!」

 状態異常、少しずつ――毒を付与していく。
 ヒオウの顔が紫色に変色していき――勢いよく血を吐き出した。
 こんな非人道的な行為のどこに楽しさを見出だせるのか。
 僕には――全く理解できない。

「く、ふふっ。楽しさは、理解できたかしら? 私よりあなたの方が強かった。認めてあげる。さあ、早く、殺しなさいな」
「最後に言い残すことがあるなら――聞こう」
「あは、ふふふ、あひゃははっ! あっはっはっはっ!」

 ヒオウが絶叫に似た声で笑い始める。

「フレイムドルフ様、フレイムドルフ様、愛していましたっ! いつまでも私はあなたを天から見守っていますっ!!」
「さよなら、狂信者」

 炎花の女将軍ヒオウ。
 その最後は全身をバラバラに――花びらが舞い散るよう、艦内を真っ赤な鮮血で染め尽くすのであった。
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