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火の都サラマン激突編
223話 あの日の約束
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くちゃり、ぐちゃり。
いつまで経っても、慣れることのない咀嚼音――戦闘終了後、僕はヒオウの残骸を喰らい尽くす。
非人道的な行為だということは理解している。
しかし、髪の毛一本残すつもりもない。リボルという存在が裏にいる限り――"因果の掌握"がある限り、復活の恐れがあるからだ。
――《 スキルの精度超アップ×1 》を獲得。
暴食へと進化はしたが、捕食時の性能が消えているわけではなかった。
リアルになったからこそ強力なスキルではあるが――ゲーム時、一度きりのバフを獲得したところでパーティーの役には立たなかったなと心底思う。
今は一つ一つの戦闘に重みがある。
だからこそ、特化した能力は全体的な戦況を覆すという――計り知れない強さを持っていた。
全てが終わったと同時、ライカと白雪が戻って来る。
「……クーにぃ。黒猫ちゃん、見つけたよ」
ライカの沈んだ声色に胸がざわつく。
「クーラ、貴様の仲間は見つけたが――自身の目で確認しろ」
白雪がナコを抱きかかえながら僕の方へと歩み寄って来る。
一見、外傷等は見当たらないが――ナコの力なく目を閉じた姿、息をしているのかと心配になるほどだった。
白雪はナコを床に寝かせ、身体の中心部に触れながら、
「……魔力の核が、損傷しているな」
「魔力の核が、損傷?」
「この娘とは異なる魔力が体内のいたるところに蔓延している。反発する属性を無理やり一つの器に詰め込んだのか――なんて恐ろしいことをする」
「師匠、率直に言ってほしい――このままだと、ナコはどうなってしまう?」
「以前、魔力の核について軽く話したのは覚えているか? 魔力の核とは――日々、魔力を自然回復する役割も担っている。現在、その機能が完全に停止している状態と言っていい。この世界で生きるものに魔力が必要不可欠なことくらいは知っているだろう」
白雪は言う。
「娘の残存魔力から察するに、今のまま放置すればいつ死んでもおかしくはない。数日後か、数時間後か――あるいは、すぐということもありえる。明確な時間、正確な判断は妾にもできない」
「どうすれば助かる? 助けることができる?」
「……」
白雪が厳しい表情を浮かべる。
「魔力の核が損傷して、生きた延びたという事例は妾の記憶にはない。最強種のドラゴンであろうとも、極稀にこういったケースはあったが――皆、等しく死んだ」
「そんなっ! どうにか、なんとかする方法は、ないのかっ?!」
「……クーにぃ」
ライカが僕の背中を抱き締める。
わかっている、わかっているんだ。大声を出そうが、吼え狂おうが、現状がなに一つ変わらないことくらい――わかっている。
それでも、叫ばずにはいられなかった。
「ナコは、ナコは、僕がこの世界に転生して来てから、ずっと、ずっと、一緒にいた大切な仲間なんだ――家族なんだっ! こんなところで、死なせるわけにはいかない、死んでほしくないっ!!」
「……クー、ラ?」
僕の声に気付き、ナコが弱々しく目を開く。
僕はナコの手を優しく握り、不安にさせないよう気持ちを取り繕うとするが――駄目だった。
涙が、涙が――零れ落ちてくる。
「……ナコ、ナコっ」
「必ず、来てくれると、信じていました」
言いながら、僕の手を握り返す。
震える手、いつもの元気なナコの姿はない。
強く握り締めたら――粉々に砕けてしまいそうだった。
「クーラ、聞いてください」
なにかを決意したように――ナコが言う。
「自分の身体が、どういう状態なのかはわかっています。前に、私がクーラと交わした約束は覚えていますか?」
「……やめてくれ、ナコ」
「私は、いつまでもクーラと一緒にいたい。クーラと共に、歩んで行きたい。あなたと一つになることで――力になりたい」
ナコは柔らかな笑顔を浮かべながら、
「私を食べてください、クーラ」
いつまで経っても、慣れることのない咀嚼音――戦闘終了後、僕はヒオウの残骸を喰らい尽くす。
非人道的な行為だということは理解している。
しかし、髪の毛一本残すつもりもない。リボルという存在が裏にいる限り――"因果の掌握"がある限り、復活の恐れがあるからだ。
――《 スキルの精度超アップ×1 》を獲得。
暴食へと進化はしたが、捕食時の性能が消えているわけではなかった。
リアルになったからこそ強力なスキルではあるが――ゲーム時、一度きりのバフを獲得したところでパーティーの役には立たなかったなと心底思う。
今は一つ一つの戦闘に重みがある。
だからこそ、特化した能力は全体的な戦況を覆すという――計り知れない強さを持っていた。
全てが終わったと同時、ライカと白雪が戻って来る。
「……クーにぃ。黒猫ちゃん、見つけたよ」
ライカの沈んだ声色に胸がざわつく。
「クーラ、貴様の仲間は見つけたが――自身の目で確認しろ」
白雪がナコを抱きかかえながら僕の方へと歩み寄って来る。
一見、外傷等は見当たらないが――ナコの力なく目を閉じた姿、息をしているのかと心配になるほどだった。
白雪はナコを床に寝かせ、身体の中心部に触れながら、
「……魔力の核が、損傷しているな」
「魔力の核が、損傷?」
「この娘とは異なる魔力が体内のいたるところに蔓延している。反発する属性を無理やり一つの器に詰め込んだのか――なんて恐ろしいことをする」
「師匠、率直に言ってほしい――このままだと、ナコはどうなってしまう?」
「以前、魔力の核について軽く話したのは覚えているか? 魔力の核とは――日々、魔力を自然回復する役割も担っている。現在、その機能が完全に停止している状態と言っていい。この世界で生きるものに魔力が必要不可欠なことくらいは知っているだろう」
白雪は言う。
「娘の残存魔力から察するに、今のまま放置すればいつ死んでもおかしくはない。数日後か、数時間後か――あるいは、すぐということもありえる。明確な時間、正確な判断は妾にもできない」
「どうすれば助かる? 助けることができる?」
「……」
白雪が厳しい表情を浮かべる。
「魔力の核が損傷して、生きた延びたという事例は妾の記憶にはない。最強種のドラゴンであろうとも、極稀にこういったケースはあったが――皆、等しく死んだ」
「そんなっ! どうにか、なんとかする方法は、ないのかっ?!」
「……クーにぃ」
ライカが僕の背中を抱き締める。
わかっている、わかっているんだ。大声を出そうが、吼え狂おうが、現状がなに一つ変わらないことくらい――わかっている。
それでも、叫ばずにはいられなかった。
「ナコは、ナコは、僕がこの世界に転生して来てから、ずっと、ずっと、一緒にいた大切な仲間なんだ――家族なんだっ! こんなところで、死なせるわけにはいかない、死んでほしくないっ!!」
「……クー、ラ?」
僕の声に気付き、ナコが弱々しく目を開く。
僕はナコの手を優しく握り、不安にさせないよう気持ちを取り繕うとするが――駄目だった。
涙が、涙が――零れ落ちてくる。
「……ナコ、ナコっ」
「必ず、来てくれると、信じていました」
言いながら、僕の手を握り返す。
震える手、いつもの元気なナコの姿はない。
強く握り締めたら――粉々に砕けてしまいそうだった。
「クーラ、聞いてください」
なにかを決意したように――ナコが言う。
「自分の身体が、どういう状態なのかはわかっています。前に、私がクーラと交わした約束は覚えていますか?」
「……やめてくれ、ナコ」
「私は、いつまでもクーラと一緒にいたい。クーラと共に、歩んで行きたい。あなたと一つになることで――力になりたい」
ナコは柔らかな笑顔を浮かべながら、
「私を食べてください、クーラ」
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