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火の都サラマン激突編
227話 星の寵愛
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「ナコ、まだ動くのが辛かったら――肩を貸すよ」
「いえ、もう大丈夫です」
死の間際だったという事実が嘘のように、ナコが元気よく立ち上がる。
ナコは魔力の核が機能し始めると、驚くほどに回復していき――いつも通りに動くことが可能となっていた。
白雪がそんなナコの姿を見て――目を見開く。
「これは驚いた。この娘――『星の寵愛』を宿すものか」
「星の寵愛?」
僕は聞き返す。
「古来より、星の寵愛を宿すものは側にいるものに――幸せを与えると言われている」
「師匠、その星の寵愛がわからないんだけれど」
「この娘、今まで魔力切れを起こしたことなどないだろう。星の寵愛は世界に深く愛されたものが持つ特性みたいなものだ」
白雪は言う。
「異常なまでの回復力、これは魔力の核だけの力ではない。自然と世界から魔力を吸収しているのだ」
「つまり、魔力が無尽蔵ってこと?」
「そういうことだ。星の寵愛を宿すものは闇属性に多い。妾たちは通称『オート・ドレイン』と呼んでいたな。世界から加護を受けているようなもの、非常に稀有な存在だ――大事にしてやれよ」
「「ほえぇー」」
白雪の博識さに僕とナコは感嘆の声が漏れる。
ナコの強さのからくりをひと目で見抜いてしまうとは、さすが悠久の時を生きるドラゴン――知識量が半端じゃない。
ナコが白雪の手を握り、ぴょんぴょんと跳ねながら、
「すごい、すごいですっ! 私、今までなんで魔力がなくならないのか――全くわからなかったんですっ!」
「そ、そうか? これくらい、ドラゴンならば普通のことだぞ」
「わぁあ、ドラゴンさんなんですかっ?! その可愛らしいお角、装備ではなかったんですねっ!」
「クーラ、なんだこの純粋な瞳は――妾、反応に困っちゃう」
白雪がナコに圧倒されている。
「わかるー、素直なところが愛らしいよね」
「どこぞのピンク娘、ライカとは性格が大違いだな。ナコと言ったか――成分を分けてやったらどうだ」
「まあ、ライカもほら――個性的だけど、優しい子だから」
噂をすればなんとやら、慌ただしい足音が響き、
「あっ、黒猫ちゃんが目覚めてるぅっ! やっぱり、クーにぃはすごいねぇっ!!」
「ライカ、おかえり。他に囚われている人はいなかった?」
「一人だけいたよ。なんか全身鎖に繋がれながら、情けなく泣き喚いているお兄さんがいたから連れて来たよ。自分じゃもう動けないって言うから、仕方なくライカが抱えて来てあげたんだぁ」
ライカの右手をよく見ると、首根っこ掴まれた人物がいた。
抱えていた要素はどこ?
無理やり引きずって来たのだろう。お兄さんは気絶中、衣服は破れまくり――満身創痍の状態だった。
なんか、ジャングルに住んでいそうな風貌になっている。
「俺はまだ死にたくないよぅ、死にたくないよぅ――って、泣き叫ぶ姿が面白すぎてライカ笑い転げちゃったぁ。助けて欲しかったら芸でも見せてよって言ったら、グリーンラム草原の羊の真似し始めてね、すっごい似てたなぁ」
「……どこら辺が優しい子なんだ」
「師匠、さっきの言葉は撤回で頼むよ」
ドラゴンすらもドン引きである。
しかし、このお兄さんどこかで見たことがあるような――僕は間近に歩み寄り、顔を改めて確認する。
やはり、僕の記憶が正しければ――間違いない。
特徴のある野生的な面持ち、二十代半ばくらいの青年、問題は服の隙間から飛び出した尻尾だった。
それはミミモケ族である証――ゲーム設定上、見てはいけないものを見てしまった。
僕は一度、落ち着くために――深呼吸する。
「……王様だ」
「えっ? クーにぃ、なんて?」
「このお兄さん、風の都ウィンディア・ウィンドの――王様だよ」
「きゃははっ! 羊の真似してた人が? めちゃくちゃウケる」
ライカさん、笑いごとじゃないからね。
「いえ、もう大丈夫です」
死の間際だったという事実が嘘のように、ナコが元気よく立ち上がる。
ナコは魔力の核が機能し始めると、驚くほどに回復していき――いつも通りに動くことが可能となっていた。
白雪がそんなナコの姿を見て――目を見開く。
「これは驚いた。この娘――『星の寵愛』を宿すものか」
「星の寵愛?」
僕は聞き返す。
「古来より、星の寵愛を宿すものは側にいるものに――幸せを与えると言われている」
「師匠、その星の寵愛がわからないんだけれど」
「この娘、今まで魔力切れを起こしたことなどないだろう。星の寵愛は世界に深く愛されたものが持つ特性みたいなものだ」
白雪は言う。
「異常なまでの回復力、これは魔力の核だけの力ではない。自然と世界から魔力を吸収しているのだ」
「つまり、魔力が無尽蔵ってこと?」
「そういうことだ。星の寵愛を宿すものは闇属性に多い。妾たちは通称『オート・ドレイン』と呼んでいたな。世界から加護を受けているようなもの、非常に稀有な存在だ――大事にしてやれよ」
「「ほえぇー」」
白雪の博識さに僕とナコは感嘆の声が漏れる。
ナコの強さのからくりをひと目で見抜いてしまうとは、さすが悠久の時を生きるドラゴン――知識量が半端じゃない。
ナコが白雪の手を握り、ぴょんぴょんと跳ねながら、
「すごい、すごいですっ! 私、今までなんで魔力がなくならないのか――全くわからなかったんですっ!」
「そ、そうか? これくらい、ドラゴンならば普通のことだぞ」
「わぁあ、ドラゴンさんなんですかっ?! その可愛らしいお角、装備ではなかったんですねっ!」
「クーラ、なんだこの純粋な瞳は――妾、反応に困っちゃう」
白雪がナコに圧倒されている。
「わかるー、素直なところが愛らしいよね」
「どこぞのピンク娘、ライカとは性格が大違いだな。ナコと言ったか――成分を分けてやったらどうだ」
「まあ、ライカもほら――個性的だけど、優しい子だから」
噂をすればなんとやら、慌ただしい足音が響き、
「あっ、黒猫ちゃんが目覚めてるぅっ! やっぱり、クーにぃはすごいねぇっ!!」
「ライカ、おかえり。他に囚われている人はいなかった?」
「一人だけいたよ。なんか全身鎖に繋がれながら、情けなく泣き喚いているお兄さんがいたから連れて来たよ。自分じゃもう動けないって言うから、仕方なくライカが抱えて来てあげたんだぁ」
ライカの右手をよく見ると、首根っこ掴まれた人物がいた。
抱えていた要素はどこ?
無理やり引きずって来たのだろう。お兄さんは気絶中、衣服は破れまくり――満身創痍の状態だった。
なんか、ジャングルに住んでいそうな風貌になっている。
「俺はまだ死にたくないよぅ、死にたくないよぅ――って、泣き叫ぶ姿が面白すぎてライカ笑い転げちゃったぁ。助けて欲しかったら芸でも見せてよって言ったら、グリーンラム草原の羊の真似し始めてね、すっごい似てたなぁ」
「……どこら辺が優しい子なんだ」
「師匠、さっきの言葉は撤回で頼むよ」
ドラゴンすらもドン引きである。
しかし、このお兄さんどこかで見たことがあるような――僕は間近に歩み寄り、顔を改めて確認する。
やはり、僕の記憶が正しければ――間違いない。
特徴のある野生的な面持ち、二十代半ばくらいの青年、問題は服の隙間から飛び出した尻尾だった。
それはミミモケ族である証――ゲーム設定上、見てはいけないものを見てしまった。
僕は一度、落ち着くために――深呼吸する。
「……王様だ」
「えっ? クーにぃ、なんて?」
「このお兄さん、風の都ウィンディア・ウィンドの――王様だよ」
「きゃははっ! 羊の真似してた人が? めちゃくちゃウケる」
ライカさん、笑いごとじゃないからね。
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