365 / 426
エレメント正邪激闘編
361話 後藤さん
しおりを挟む
「相変わらず、ストーンヴァイスは賑わっているね」
素材の売買に関しては随一の国だろう。
気になるアイテムはいっぱいあるが――目的は別にある。この人で溢れる広大なエリアの中、はたして発見できるのか否か。
以前、酒場でラミュアが口にしていた。
『アクアニアスは剣聖と呼ばれるもの、ストーンヴァイスは銀髪眼帯の男と犬耳のミミモケ族が奮闘しているって話だ』
フレイムドルフが、各国を攻めていた時である。
僕たち以外にも、世界の理不尽に抗っているものがいた。
剣聖の正体は僕の妹と判明したが、銀髪眼帯男とは間違いなく後藤さんだろう。
コールディンとの一件以来、ストーンヴァイスは避けていると思っていたが、理由があって拠点地にしていた可能性もある。
まだ、滞在してくれていることを――祈る。
「クーラ、後藤さんを見つけました」
「マジで?」
「あの目を引く姿は間違いないと思います」
想像以上に一瞬であった。
ナコと物陰に隠れながら、こっそりと様子を窺う。
銀髪、眼帯、両腕に包帯、中二病の代名詞みたいなファッション――僕の記憶に合致する。
「一人、ミミモケ族を連れていますね」
犬耳の女の子がいた。
雪のように淡い白の毛並み、ピコピコと上下左右に尻尾を揺らしながら――後藤さんの後を小走りで付いて行っている。
……一体、どういった組み合わせなのか。
それはさて置き、犬耳の女の子――歩幅を気にせず歩く後藤さんを、必死に追いかけている姿がとにかく愛らしい。
「か、可愛いすぎる」
ポツリと、無意識に言葉が漏れた。
その時、禍々しいオーラを感じ――視線を移すと、ナコが頬を膨らませながら僕を睨み付けていた。
「……」
「違うんだ、ナコ」
「なにが違うんですか?」
「今の可愛いは、子供の仕草的な意味合いであって――深い理由は一ミリもないんだよ」
「……私は、可愛くないですか?」
「ナコはめちゃくちゃに可愛いよ」
僕は即答する。
実際、ナコは誰もが振り向くほどの美少女だ。カメラ機能でキャラ作成をしたということで――もとの世界の容姿と変わらない。
ホムラもまた同様なのだろう、姉妹揃って目を見張るレベルとなっている。
ナコが疑うようジト目をしながら、
「……嘘っぽい」
「ど、どうしたら信じてもらえるかな」
「じゃあ、ナコ愛してるって100回言葉にしてください」
「あれ? 内容変わってない?」
その時、僕たちに影が覆い被さる。
「おい、お前ら――隠れる気あんのか? ごちゃごちゃぐだぐだ、騒がしくって気付いちまっただろうが」
目の前に後藤さんが立っていた。
素材の売買に関しては随一の国だろう。
気になるアイテムはいっぱいあるが――目的は別にある。この人で溢れる広大なエリアの中、はたして発見できるのか否か。
以前、酒場でラミュアが口にしていた。
『アクアニアスは剣聖と呼ばれるもの、ストーンヴァイスは銀髪眼帯の男と犬耳のミミモケ族が奮闘しているって話だ』
フレイムドルフが、各国を攻めていた時である。
僕たち以外にも、世界の理不尽に抗っているものがいた。
剣聖の正体は僕の妹と判明したが、銀髪眼帯男とは間違いなく後藤さんだろう。
コールディンとの一件以来、ストーンヴァイスは避けていると思っていたが、理由があって拠点地にしていた可能性もある。
まだ、滞在してくれていることを――祈る。
「クーラ、後藤さんを見つけました」
「マジで?」
「あの目を引く姿は間違いないと思います」
想像以上に一瞬であった。
ナコと物陰に隠れながら、こっそりと様子を窺う。
銀髪、眼帯、両腕に包帯、中二病の代名詞みたいなファッション――僕の記憶に合致する。
「一人、ミミモケ族を連れていますね」
犬耳の女の子がいた。
雪のように淡い白の毛並み、ピコピコと上下左右に尻尾を揺らしながら――後藤さんの後を小走りで付いて行っている。
……一体、どういった組み合わせなのか。
それはさて置き、犬耳の女の子――歩幅を気にせず歩く後藤さんを、必死に追いかけている姿がとにかく愛らしい。
「か、可愛いすぎる」
ポツリと、無意識に言葉が漏れた。
その時、禍々しいオーラを感じ――視線を移すと、ナコが頬を膨らませながら僕を睨み付けていた。
「……」
「違うんだ、ナコ」
「なにが違うんですか?」
「今の可愛いは、子供の仕草的な意味合いであって――深い理由は一ミリもないんだよ」
「……私は、可愛くないですか?」
「ナコはめちゃくちゃに可愛いよ」
僕は即答する。
実際、ナコは誰もが振り向くほどの美少女だ。カメラ機能でキャラ作成をしたということで――もとの世界の容姿と変わらない。
ホムラもまた同様なのだろう、姉妹揃って目を見張るレベルとなっている。
ナコが疑うようジト目をしながら、
「……嘘っぽい」
「ど、どうしたら信じてもらえるかな」
「じゃあ、ナコ愛してるって100回言葉にしてください」
「あれ? 内容変わってない?」
その時、僕たちに影が覆い被さる。
「おい、お前ら――隠れる気あんのか? ごちゃごちゃぐだぐだ、騒がしくって気付いちまっただろうが」
目の前に後藤さんが立っていた。
0
あなたにおすすめの小説
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる