転生したら倉庫キャラ♀でした。

ともQ

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エレメント正邪激闘編

388話 ギルド対抗戦(予選) その12

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 にぃに、にぃに。


 妹が、僕を呼ぶ声が――した。
 薄っすらと、妹の顔も視界に映し出されている。もとの世界の記憶? 
 これは、走馬灯だろうか。

「にぃに、しっかりしてっ!」

 いや、違う。

「……琴葉。なんで、ここに」

 本物である。
 今はギルド対抗戦、どうして――琴葉がいるんだ。全身の痛みにより、頭が上手く回らない。
 黒騎士は大剣を肩に乗せながら、

「おいおい。そんな動かして大丈夫か? 俺っちの一撃を受けた直後だ。本当に耐え抜くとは思わなかったけどな」
「私のにぃにが、簡単に死ぬわけないでしょ」

 ナコが僕に両手を当てる。
 心地よい光、少しずつ、少しずつ――身体が軽くなっていく。光の魔力により、回復してくれているのだろう。

 ……ナコの瞳からは、涙が溢れていた。

 また、心配をかけてしまった。
 しかし、今回ばかりは――痛み分けということで勘弁してもらおう。
 後ろで待機していた黒騎士の一人が動き、

「ディアゴ、目的は達成した。もう行くぞ」
「あぁー。姉貴、そいつで10組殲滅したんッスね」

 姉、貴?
 女性、だったのか? 鎧を通した声質では判断しづらいが、体格的には十分にありえる話だ。
 姉貴と呼ばれた黒騎士は、ベンジェの首を頭上高くに投げ、

「他は相手するまでもない――"黒爆"」

 黒い紋章、派手に爆散する。
 世界の脅威と称されていたベンジェが呆気なく殺された。
 代わって、目の前にいる新たな存在は何者なのか。


 ――ギルド"Liberty"、リーダー死亡により脱落となります。


 アナウンスが流れる。
 ディアゴと呼ばれた大柄の黒騎士、そのディアゴが姉貴と従うリーダー格の黒騎士、残り一人は――ただ静かに立っている。
 ディアゴは大剣を背中に納めながら、

「俺っちたちはもう行く。あんたたち、ラッキーだったな。"Killer+Killer"は10組を目安に、それ以上は考えてなかったんだ」
「ディアゴ、余計な話は時間の無駄だ。残り8組も間もなく決まる、私たちは例の場所で待機するぞ」
「うぃっすっ!」

 どうやら、立ち去ってくれるようだ。
 ただの気まぐれか、一撃を耐えたことの約束を守ってくれたのか――どちらかはわからない。
 インターバルを設けられることは――非常に大きい。

 黒騎士たちの背を見守り、安息の時が訪れるのを――静かに息を潜めて待つ。
 情けないことではあるが、今はそれ以外に選択肢はなかった。
 だが、それを――許さないものがいた。

「ちょっと、なに勝手に帰ろうとしてるの」
「あぁっ?」
「私の大切で大好きなにぃに、これだけ一方的にボッコボコにしといてさ――許すわけないじゃん」

 ディアゴの足が止まる。

「あんた、本気で言ってるのか」
「本気と書いて、そのまま"ホンキ"に決まってるだろ――このデカブツが」

 剣聖、琴葉が――ディアゴに斬り掛かった。
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