転生したら倉庫キャラ♀でした。

ともQ

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エレメント正邪激闘編

407話 偽りのない言葉

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「あの悪夢の日、俺たちのギルドをお遊びで壊滅――メンバーを皆殺し、その要因となったやつがいる」

 後藤さんは言う。

「クーラ、ジョブに『テイマー』がいるのは知ってるだろ」
「モンスターを自由に操ることができるジョブだね」

 テイマー。
 調教や操りというスキル、モンスターを手駒にすることが可能なジョブである。ゲーム時は驚くくらいの超絶不遇扱い、ボス相手には全く効果がなく、序盤の弱いモンスターしか操ることができなかった。
 完全なネタ枠、ユニーク職の一種である。

「俺のカード師と同様、そのテイマーを極めていた馬鹿が一人いてな」
「まさか」
「ひゃはっ、大体の想像は付くんじゃねえかぁ? ゲーム時、不遇だったスキルが化けるのはリアルとなった今じゃ常識だろ」
「モンスターだけじゃなく、人間を――操れるっていうのか?」
「俺たちはな、メンバー同士で殺し合いをさせられたんだ」

 壮絶な――真実だった。
 運良く、リンたちだけは騒動の終盤に帰って来た。
 3人は目の前の光景に硬直するのみ、戦える精神状態ではなかったという。
 後藤さんは――即座に3人を瀕死に追いやったと話した。

「確かに、俺は操られていた。だがな、リンの恋人を――殺したことは事実、今でもあの心臓を握った感触は忘れられねえ」
「黒幕の存在、リンには伝えないの?」
「言っただろ? 俺が、殺したんだ。復讐するべき相手としては――間違っちゃいねえんだよ」
「全然、違うのっ! 後藤は、なにも悪くないのっ!」
「おいおい。お前が泣く必要はねえだろ」

 後藤さんがイリスの頭をなでる。

「だって、だって、悪いのは――そのテイマーの人なのっ!」
「信じ切っていた俺にも非はある」

 一つ、疑問が残っていた。
 リンの話では――後藤さんはリンたちを殺さず、強制的に転移させたと言っていた。操られていたのならば、この行動は完全に矛盾している。殺し合いの場から、なんとか脱出させているに他ならない。
 後藤さんは眼帯を外しながら、

「操りは瞳を通して脳に指示が送られる。解くための道は一つしかねえだろ」

 右目が――なかった。
 あまりの覚悟に僕は言葉を失う。おそらく、操りをかけられる隙間を狙い――指示を受ける直前、完全に遮断したのであろう。
 さらに、後藤さんは左目を取り出しながら、

「左目は――『魔眼』を詰めている。これがまた不便でな、魔力を込めねえと視界が映らねえ」

 魔眼、Sランクアイテムの一つ。
 ゲーム時は未踏破の地もマップに映るという優れもの、最新ダンジョンの攻略等には引っ張りだこのアイテムであった。
 リアルとなった今、こんな使い方があるのか。

「両目と言いてぇところだったんだがな。これがまた――片目でないと魔力供給のバランスが崩れるのか、視界がボヤけやがる」
「後藤さんの格好、ファッションだと思っていたよ」
「ひゃはっ、中二病すぎんだろ」

 笑いながら、後藤さんがいつもの姿に戻る。
 やはり、後藤さんは――僕の考える後藤さんだった。出会った当初の言葉の重み、転生の先駆者として世界の厳しさを伝えてくれていた。
 僕はナコと視線を合わせ――頷き合う。

「クーラ、やりましょう」
「ああ。後藤さんは絶対に死なせない、死なせたくない」

 まずは、勝つ。
 勝って――全てを清算してみせる。
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