連れ去られた先で頼まれたから異世界をプロデュースすることにしました。あっ、別に異世界転生とかしないです。普通に家に帰ります。 ② 

KZ

文字の大きさ
24 / 101
天使のホワイトデー

まな板の上の鯉の気持ち

しおりを挟む
♢13♢

 どこを間違えたんだろう。
 どこから間違っていたんだろう。
 あれからずっとそんな感情に支配されてる。
 俺はまた、やらかしてしまったようだ……。

 天使とお姫様を仲直りさせるどころか、事態はより悪化してしまった。おまけに天使は手を骨折。強制帰宅となってしまった。
 知りたい人もいると思うから、その際のもようをお伝えする。
 あのあとすぐに天使を城の医者の元へと連れていき、診察してもらった。その診察の結果は骨折。ヒビはいってた。

『大丈夫! 大丈夫!!』

 そう天使はしきりに言い張っていたが、保護者である執事がどこかに電話して、さほど時間が経たずに大丈夫ではないと判断されたのだろう。

『──なに!? なんでこんなに人がいるの。ちょ──、アタシをどうするの!? 助けて。レート、助けてーーーー』

 何処かから現れた大量の白い服の人たちによって、天使はタンカで運ばれていった。
 あとから知ったが、アレは天使の皆さんだったようだ。こうして天使は強制的に帰宅させられたのだ。

『プロデューサー殿。ここまでの騒ぎにになるとは……。思ったよりも大ごとになってしまいました。申し訳ないです。しかし、怪我して滞在ではどのみちご迷惑になったでしょうし。私もこれで失礼いたします』

 胡散臭い執事もそう言い残して帰っていった。あとに残されたのは、起きた事についていけず呆然と立ち尽くす俺だけだった。

 これが昨日の顛末だ。
 そして今日……なんかピンチです。


 ※回想1


 天使が強制的に帰っていった昨日。
 今日は日曜で学校が休みな俺は、朝からお姫様のところに来ている。だが、昼過ぎからはバイトに行かなくてはならないから、こうしていられる時間には限りがある。

 昨日あのあと、お姫様と天使は一度も顔を合わせもしなかった。天使は強制帰宅させられたし、お姫様はミルクちゃんのところに行って昨日は帰ってこなかったからだ。
 そんなふうだったお姫様を心配し、優しい俺は朝からやってきたんだ。しかし……。

「おはよう! 今日もいい天気だね! あっ、ここは雲より上だからいつも晴れだったね。あっはっは──」

「……」

 先ほどから布団に潜ったままピクリともしない。これは天使にしていた無が発動しているのか?

「今日のオヤツは昨日のひなあられを持ってきたんだ。 ……しまった。自分から昨日とか言ってしまった……」

「…………」

 やはり、お姫様は布団から顔すら出さない。ちなみに今の発言はわざとではない。
 ガチで言ってしまった……。今日も俺はダメだ。ダメダメだ。

「じゃあ俺は城門の様子を見てくるから。二クスに投げっぱなしになってるからな」

 クローゼットの鍵が朝から開いていたし、起きていると思うんだがな。少ししたらまた来てみよう。
 そう思って、俺はお姫様の部屋をあとにした。


 ※回想2


 俺が城門の修理の責任者なのに、まるっきり放置という状況が気になっていた。
 昨日は様子を見ることすら忘れていた。情けない。なので、今日は責任者らしいことをしたい。

「お疲れ様でーす」「でーす」

 どうかしてしまったアンチと大工さんたちに、すれ違うたびに挨拶される。
 それに返事を返しながら、城門の方へと進んでいく。

「馬鹿な。もう足場ができているし、作業は始まっているだと!? しかも結構進んでいる!」

 俺は異世界大工を舐めていたらしい。
 アンチという労働力を得て、ゴリラ組の作業効率は凄まじく上昇していたようだ。
 アンチは単純作業を。大工さんたちは専門的な作業と、お互いに完全に分担することにより作業は効率よく早くなっている。

白夜はくやさん、おはようございます。昨日は大変だったようですね」

 これらを指示したのだろうイケメンが、わざわざ近寄ってきて声をかけてきた。今もあれこれと指示を出していて忙しいだろうにだ。
 それなのに、俺にすら声をかけてくれるイケメン。死ねばいいのに。

「ここにも俺は必要ないようだな……」

「どうされたのですか?」

「どうされたじゃねーよ。お前で足りてるからショック受けてんだよ! 天使の件でもダメだったし、こっちも役立たずじゃ、俺はどうすればいいんだよ!」

「気にしすぎじゃないでしょうか? 彼らを連れてきたのも白夜さんですし、使いの皆さんにやる気を出させたのもアナタだ。修繕は捗り、労働力についても事は進んでいる。それなのに少し上手くいかなかっただけで、落ち込む必要はないと思いますよ」

 言うことまでイケメンはイケメンなのか。ちゃんと俺をフォローしやがる。二クスめーー。
 こんなことを言われたら悪態つけない!
 コイツはこんな俺を評価している。あー、いいヤツ過ぎて逆にムカつくくらいだ。死ねばいいのに。

「開門、開門──」

 悪態つけないし、二クスになんと返そうか考えているとそんな声が響いた。
 現在ただ置いてあるだけの、ぶっ壊された元城門が開くらしい。兵士たちの人力で。

「なぁ、いつもはそんなこと言わなくね? 開門なんて言ってんの初めて聞いたぞ?」

「……それだけの人物がきたのでしょう」

「ここにこれるヤツは限られてんだろ?」

 こないだそんなことをニックさんが言ってた。
 許可なく城へは行けないし、許可のあるヤツもいないと。それなのに、どういうわけだ?

「白夜さん。急いで帰られた方がよろしいかもしれません」

 そう言った二クスの言葉はもう遅く、ゾロゾロと元城門から入ってきた白い集団は、あっという間に俺たちを取り囲む。
 その白い集団は、昨日見た天使たちと同じ格好のヤツらだった。


 ※回想ではなく今現在!


 上記のようなことがあり、なんか拘束され、なんか連行され、なんか今から審判的なことにかけらるらしい。 ……これはアレかな?

『娘に手を出されて黙ってられん! 戦争だ!』

『犯人は死刑しました。だから、許して?』

 ──となるやつ……。って、こんなこと考えてる場合じゃねーーっ!
 セクハラで死刑ですらない。俺はなんの理由で審判されるの!? 天使の審判とか絶対に死ぬヤツだよね!?

「どうされました。顔色が悪いですよ?」

「二クス……日本のことわざを教えてやろう」

 何故だかイケメンも一緒に拘束された。きっと天使を叱りつけたからだろう。
 それがモンスターペアレントの逆鱗に触れ、死刑にされるんだろう。哀れイケメン。

「ことわざとは?」

「昔からある言い伝えだな。それに、今の俺たちにピッタリな言葉がある」

 なんて、死刑になりそうなのはイケメンだけにあらず。イケメンが死刑ということは、隣にいる俺も同じだよね。
 天使が怪我したのは俺のせいだし……。

「ほう、是非ご教授ください」

「まな板の鯉。そんな言葉がある」

「どのような意味が?」

「鯉というのは魚だ。まな板は調理台。意味は調理台の上に載せられた魚のように、捌かれるのをただ待つしかないという意味だ! 捌かれるに裁かれるがかかっていて面白い……──なんて言ってる場合じゃねーんだよ! このままじゃ天使に裁かれて死ぬぞ!?」

 ズラリと並びに並んだ天使たちがいる、この先は会議室。現在なんかが話し合われている。
 なんかとは、──まあ俺たちのことだろうね!

「落ち着いてください。死にはしません」

「そんな言葉を信じられるわけないだろうが! 手枷に繋がれてるよ。天使たちはもれなく武装してるしね。何より天使ビームもあるじゃない!」

 考えれば考えるほど死ぬと思う。
 それに……めっちゃこわいおっさんがいた。王様を初めて見た時くらい怖かった。怖かったよー。アレがきっとモンスターペアレントだ。
 次回は果たしてあるのだろうか? 続く。といいな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完】BLゲームに転生した俺、クリアすれば転生し直せると言われたので、バッドエンドを目指します! 〜女神の嗜好でBLルートなんてまっぴらだ〜

とかげになりたい僕
ファンタジー
 不慮の事故で死んだ俺は、女神の力によって転生することになった。 「どんな感じで転生しますか?」 「モテモテな人生を送りたい! あとイケメンになりたい!」  そうして俺が転生したのは――  え、ここBLゲームの世界やん!?  タチがタチじゃなくてネコはネコじゃない!? オネェ担任にヤンキー保健医、双子の兄弟と巨人後輩。俺は男にモテたくない!  女神から「クリアすればもう一度転生出来ますよ」という暴言にも近い助言を信じ、俺は誰とも結ばれないバッドエンドをクリアしてみせる! 俺の操は誰にも奪わせはしない!  このお話は小説家になろうでも掲載しています。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

処理中です...