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第二十六章 梅雨の季節
第五百二十六話 酒と宴と打ち合わせ
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ヒュミトール冒険者ギルド主催の、新たなSランク冒険者誕生記念式典…別名宴会が始まった。
早朝からベリアは冒険者ギルドに向かい式典用の礼服を身に纏い、この地の領主であるガーネディアン公爵が代表してSランク用の冒険者カードを授与する流れだ。
この式典で渡される冒険者カードは仮証であり、本物はベリアの母国であるジェヴェドール王国にて鋭意発行中である。
これは政治的な話やら国とギルドとの取り決めやらで色々とあるらしいが、冒険者ギルドに登録した土地のある国が、正式なカードを交付する事になっていると聞かされた。
これはSランクのみの特別措置で、Aランクまでなら何処の国で昇格しても、近くの大きな冒険者ギルドまでカードが届けられる仕組みになっている。
この世界にSランク冒険者自体が少ないそうだ。
冒険者パーティーとしてのSランクは居ても、ベリアの様にソロの冒険者でSランクは世界広しと言えども5人しか居なかったらしい。
ベリアが6人目であり、現役世代はベリアを含めて現在は3名だ。
イズミも事も特例で冒険者ギルドに登録させて欲しい旨の打診があったが、もう何かしらの組織に所属するつもりは毛頭ないとして固辞した。
ベリアの晴れの舞台なのでイズミも近くから式典の様子を伺っているが、式典後に始まる宴…要するに酒飲み…への期待が高まっているのか、それともヒュミトールにてSランク昇格が決まったベリアへの賞賛の声か。
どちらもかもしれないが、民衆は大盛あがりの状態なので余り近付きたくはなかった。
「…イズミは此処から見てるだけで良いのか?」
「さっき話はしたし、人混みは苦手なんでね」
イズミは式典が始まる直前にベリアには祝いの言葉を贈っているので、今はエレノアのお気に入りの店の窓から人で溢れかえる大通りを眺めていた。
エレノアは妊娠中につきお酒は飲めないので、今はお店でオーダーした紅茶を飲んでいる。
カフェインが含まれてはいるだろうが、量を飲みすぎなければ大丈夫ではある。
もっと飲みたい気分と言われた時には、カフェインレス仕様の紅茶を用意してあげるつもりだ。
昼前から酒を飲めるのも良い話ではあるがマスタングと今後の打ち合わせをする予定があるので、イズミは会食の時に余っていた炭酸の抜けきったトニックウォーターをショルダーバッグから取り出して飲んだ。
勿論お店にも飲み物を頼んではいるし、店側からも許可はもらっている。この1本だけだが。
式典が無事に終わり酒飲み達で街中が賑わいだした所で、イズミ達は裏通りを活用してグラテミアの屋敷まで戻ってゆく。
「イズミ様、少々お時間を頂けますか?」
屋敷に到着するとグラテミアの従者から声をかけられたので、直ぐに返事をして後をついて行く。
執務室に入室したイズミが見たのは、テーブルに広げられている地図と耳の長い男女のペアだった。
「イズミさん、式典と宴は如何でした?」
「想像以上の賑わいで驚きましたよ…此方の方々は」
イズミが自己紹介をしながら空いていた椅子まで歩くと、2人も自己紹介をしてくれた。
「私はヨルヌーク、彼女は妻のジーンだ」
「どうぞよろしく」
全員が椅子に座ると、グラテミアが簡単ながら2人の事を教えてくれた。
「どうも帝国は魔族除けの香を広範囲に焚いているみたいで、代理として来て頂きました。彼等は現地のエルフ族で、ルンカルテ川の上流に集落を構えているので、帝国の動きも直近の分まで把握しています」
広げられた地図には、各国の領土を炭で線を引いて分かりやすくしてあった。
「帝国は思った以上に領土を拡大しているわね。2カ月程前にルンカルテ川上流付近まで侵攻している事は確認済みです」
「オブリビアはどの辺りですか、向こうでも帝国の部隊とやり合ったので」
グラテミアが銅貨を使いオブリビアの位置を示すと、帝国が領土としているエリアからは少し距離があるのが分かる。
オブリビアと帝国領土との間には大きな町も都市も無いので、移動しようと思えば出来てしまうようである。
「帝国ってのは、人口はどのくらい居るんだ?こんなに領土を広げても国民が居なければ何も出来ないのに」
「帝国は侵攻をして得た土地の民をふるいにかけて、使える者は強制的に兵士に、使えない者達は農耕を強制されるわね。現在は兵士だけでも50万人と言われているわ、勿論推定ですけど」
「なら人海戦術も出来る訳か…戦力がある内に侵攻出来るだけするって感じか?ルンカルテ川の上流はどの辺りですか」
エルフ族のジーンが細い人差し指で指し示した場所は、ヒュミトールから北西方向に…大分距離があるようだ。
イズミは椅子に座りつつ足を組み、ショルダーバッグからメガネを取り出して、マスタングに魔法通信を繋ぐ。
「マスタング、今俺が見てる地図を確認出来るか?」
「スキャンします…完了、精度は良好のようですね」
「ルンカルテ川上流までの距離は?」
「凡そ500マイル、キロ計算で800km程度です」
「ディスタンスしてそうな距離だな…俺達が強襲するとなると、色々と事前準備が必要そうだ」
これから約1ヶ月程は梅雨に入る。
梅雨の時期の内に男神様向けの酒盛りの予定もあるので、まったりと移動してはいられないのだ。
まだ酒盛り向けの料理や酒の調達だって必要なのである。
「それでしたら、今日から5日程かけて装備を整えましょう。ジェットエンジンの出力上昇と追加武装の実体化をすれば、500マイルを短時間で駆け抜け帝国の拠点を破壊し尽くし、その足で帰ってこれます」
「何日想定だ?」
「日帰りです。日の出の時刻と共に出発し、日没の時刻には帰還の想定です」
イズミはまだマスタングが使えるようになったジェットエンジンの性能を、イマイチ把握出来ずにいる。
サラッと聞いただけのスペック値であり、まだまともに運転…最早操縦と言った方が良い…経験も殆ど無いのだ。
「お二人との連絡はつけやすい環境にはなってますか?」
「ええ、手配しましたので」
「助かります。では梅雨に入ってから一度連絡すると言う事で」
イズミが椅子から立ち上がると、エルフ族の2人に挨拶をして部屋から出ようとする。
「あの…帝国相手に、何を始めるのですか?」
ジーンが不安そうに聞いてきたので、イズミは当然の様に答えた。
「企みを潰すだけですよ、徹底的にね。詳しい計画内容は現地の状況を把握してからですけど」
笑顔で答えたイズミは、荷物を自室に置いてからマスタングの元へ向かう。
まだベリアは宴から戻ってきていないので、少しの間は2人の時間だ。
「さてマスタング、魔力補給のついでに新装備について話をしようじゃないか」
「かしこまりました、モニターをご確認下さい」
「どれどれ…これは熱いな」
町は宴で盛り上がりを見せる傍らで、イズミは別の盛り上がりを見せることになるのであった。
早朝からベリアは冒険者ギルドに向かい式典用の礼服を身に纏い、この地の領主であるガーネディアン公爵が代表してSランク用の冒険者カードを授与する流れだ。
この式典で渡される冒険者カードは仮証であり、本物はベリアの母国であるジェヴェドール王国にて鋭意発行中である。
これは政治的な話やら国とギルドとの取り決めやらで色々とあるらしいが、冒険者ギルドに登録した土地のある国が、正式なカードを交付する事になっていると聞かされた。
これはSランクのみの特別措置で、Aランクまでなら何処の国で昇格しても、近くの大きな冒険者ギルドまでカードが届けられる仕組みになっている。
この世界にSランク冒険者自体が少ないそうだ。
冒険者パーティーとしてのSランクは居ても、ベリアの様にソロの冒険者でSランクは世界広しと言えども5人しか居なかったらしい。
ベリアが6人目であり、現役世代はベリアを含めて現在は3名だ。
イズミも事も特例で冒険者ギルドに登録させて欲しい旨の打診があったが、もう何かしらの組織に所属するつもりは毛頭ないとして固辞した。
ベリアの晴れの舞台なのでイズミも近くから式典の様子を伺っているが、式典後に始まる宴…要するに酒飲み…への期待が高まっているのか、それともヒュミトールにてSランク昇格が決まったベリアへの賞賛の声か。
どちらもかもしれないが、民衆は大盛あがりの状態なので余り近付きたくはなかった。
「…イズミは此処から見てるだけで良いのか?」
「さっき話はしたし、人混みは苦手なんでね」
イズミは式典が始まる直前にベリアには祝いの言葉を贈っているので、今はエレノアのお気に入りの店の窓から人で溢れかえる大通りを眺めていた。
エレノアは妊娠中につきお酒は飲めないので、今はお店でオーダーした紅茶を飲んでいる。
カフェインが含まれてはいるだろうが、量を飲みすぎなければ大丈夫ではある。
もっと飲みたい気分と言われた時には、カフェインレス仕様の紅茶を用意してあげるつもりだ。
昼前から酒を飲めるのも良い話ではあるがマスタングと今後の打ち合わせをする予定があるので、イズミは会食の時に余っていた炭酸の抜けきったトニックウォーターをショルダーバッグから取り出して飲んだ。
勿論お店にも飲み物を頼んではいるし、店側からも許可はもらっている。この1本だけだが。
式典が無事に終わり酒飲み達で街中が賑わいだした所で、イズミ達は裏通りを活用してグラテミアの屋敷まで戻ってゆく。
「イズミ様、少々お時間を頂けますか?」
屋敷に到着するとグラテミアの従者から声をかけられたので、直ぐに返事をして後をついて行く。
執務室に入室したイズミが見たのは、テーブルに広げられている地図と耳の長い男女のペアだった。
「イズミさん、式典と宴は如何でした?」
「想像以上の賑わいで驚きましたよ…此方の方々は」
イズミが自己紹介をしながら空いていた椅子まで歩くと、2人も自己紹介をしてくれた。
「私はヨルヌーク、彼女は妻のジーンだ」
「どうぞよろしく」
全員が椅子に座ると、グラテミアが簡単ながら2人の事を教えてくれた。
「どうも帝国は魔族除けの香を広範囲に焚いているみたいで、代理として来て頂きました。彼等は現地のエルフ族で、ルンカルテ川の上流に集落を構えているので、帝国の動きも直近の分まで把握しています」
広げられた地図には、各国の領土を炭で線を引いて分かりやすくしてあった。
「帝国は思った以上に領土を拡大しているわね。2カ月程前にルンカルテ川上流付近まで侵攻している事は確認済みです」
「オブリビアはどの辺りですか、向こうでも帝国の部隊とやり合ったので」
グラテミアが銅貨を使いオブリビアの位置を示すと、帝国が領土としているエリアからは少し距離があるのが分かる。
オブリビアと帝国領土との間には大きな町も都市も無いので、移動しようと思えば出来てしまうようである。
「帝国ってのは、人口はどのくらい居るんだ?こんなに領土を広げても国民が居なければ何も出来ないのに」
「帝国は侵攻をして得た土地の民をふるいにかけて、使える者は強制的に兵士に、使えない者達は農耕を強制されるわね。現在は兵士だけでも50万人と言われているわ、勿論推定ですけど」
「なら人海戦術も出来る訳か…戦力がある内に侵攻出来るだけするって感じか?ルンカルテ川の上流はどの辺りですか」
エルフ族のジーンが細い人差し指で指し示した場所は、ヒュミトールから北西方向に…大分距離があるようだ。
イズミは椅子に座りつつ足を組み、ショルダーバッグからメガネを取り出して、マスタングに魔法通信を繋ぐ。
「マスタング、今俺が見てる地図を確認出来るか?」
「スキャンします…完了、精度は良好のようですね」
「ルンカルテ川上流までの距離は?」
「凡そ500マイル、キロ計算で800km程度です」
「ディスタンスしてそうな距離だな…俺達が強襲するとなると、色々と事前準備が必要そうだ」
これから約1ヶ月程は梅雨に入る。
梅雨の時期の内に男神様向けの酒盛りの予定もあるので、まったりと移動してはいられないのだ。
まだ酒盛り向けの料理や酒の調達だって必要なのである。
「それでしたら、今日から5日程かけて装備を整えましょう。ジェットエンジンの出力上昇と追加武装の実体化をすれば、500マイルを短時間で駆け抜け帝国の拠点を破壊し尽くし、その足で帰ってこれます」
「何日想定だ?」
「日帰りです。日の出の時刻と共に出発し、日没の時刻には帰還の想定です」
イズミはまだマスタングが使えるようになったジェットエンジンの性能を、イマイチ把握出来ずにいる。
サラッと聞いただけのスペック値であり、まだまともに運転…最早操縦と言った方が良い…経験も殆ど無いのだ。
「お二人との連絡はつけやすい環境にはなってますか?」
「ええ、手配しましたので」
「助かります。では梅雨に入ってから一度連絡すると言う事で」
イズミが椅子から立ち上がると、エルフ族の2人に挨拶をして部屋から出ようとする。
「あの…帝国相手に、何を始めるのですか?」
ジーンが不安そうに聞いてきたので、イズミは当然の様に答えた。
「企みを潰すだけですよ、徹底的にね。詳しい計画内容は現地の状況を把握してからですけど」
笑顔で答えたイズミは、荷物を自室に置いてからマスタングの元へ向かう。
まだベリアは宴から戻ってきていないので、少しの間は2人の時間だ。
「さてマスタング、魔力補給のついでに新装備について話をしようじゃないか」
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「どれどれ…これは熱いな」
町は宴で盛り上がりを見せる傍らで、イズミは別の盛り上がりを見せることになるのであった。
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