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第二十八章 梅雨が明けるまで
第五百九十九話 試作品と実験
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「イズミさん、トースターの試作品が出来ましたよ」
「早くないですか?」
「お抱えの魔道具職人に設計図を見せたら【この魔道具を今直ぐ俺に作れと言わないなら殺す】と脅されました」
「血の気が多いお方のようで」
「腕は確かですよ」
ゲヘナから素材を受け取ってから数時間後、フラウリアが1番簡単だったと言うトースターの試作品を持ってイズミの部屋に来たのだ。
フラウリアから渡された魔道具もといトースターは、厚切りの食パンにも対応出来る携帯式のようだ。
一度にトースト出来るのは2枚までで、ツマミで焼き時間の調整が可能らしい。
無地のステンレスにも見える外観かつポップアップ式で、とてもイズミ好みである。
「オープントースターとドライフルーツメーカー?は時間が掛かります。なにせ細かな作業工程が多くて職人も苦戦してますので」
「急な依頼なのにすみません」
「いえいえ、彼等も喜んでましたので大丈夫です」
イズミはブレスレット作りを中断して、トースターの調子を確かめる。
手持ちにパンが無いので一度食堂へ向かい、料理人の1人に声をかけて黒パンを貰う。
包丁を借りて厚みを1cmくらいでカットし、トースターにセットしてから焼き時間を調整する。
ツマミを軽く操作すると最大で約一周する代物で、6時丁度の位置が停止で初期位置となっているようだ。
時計回りに操作すると5時位置を少し過ぎた所で停止する、ここがこのトースターの時間調整の限界位置らしい。
「で、これを下げると」
今回はツマミを1/5程回し、レバーを操作してパンをトースターに入れ込むと、ジジジ…と小さな動作音と共に焼きが始まった。
腕時計のボタンを素早く押し込みストップウォッチ機能を起動し、焼きが終わる時間を継続しておく事も忘れない。
クロノグラフ秒針が丁度一周した所で、チンと明るい音と共に黒パンがポップアップしたのでストップウォッチ機能を停止させる。
「約1分か」
イズミはツマミ周りに目印として線を引こうと思い、フラウリアに頼み羽根ペンを貸してもらう。
ツマミの停止位置と現在位置、そして1/5の位置に目印を付けてから黒パンの焼き加減を確かめる。
「うーん…ほとんど焼き色も付いてないですね」
「焼き時間が短かったのでしょうか?」
黒パンを2人で試食しながら、次はもう1/5程ツマミを回す。
これで2/5、約2分の焼き時間になる筈だ。
この位置も羽根ペンで印を付けておき、先程と同じ厚みの黒パンをセットしてレバーを操作する。
これも腕時計で時間計測をすると、予想通り約2分で黒パンがポップアップした。
「今回は焼き色もありますね」
「食感も変わりましたよ」
「黒パンならもう少し焼いた方が美味しいかもしれませんね。白パンならこの位でも良いかも」
そんな会話を食堂の隅で実験をしながらしていたのだが、どうも休憩に入っている屋敷の従者達からの視線を感じる。
「イズミさん、食べ方は焼くだけではないですよね?」
「そうですね。焼いた後でジャムとかを乗せたり、野菜やお肉にチーズを乗せたり挟んだり、バターを乗せるだけでも良いです」
「料理長に少し頂いて来ますね」
焼いただけでも美味しさが変わるが、具材も加えると楽しみやアレンジは本当に多種多様になる。
奥深過ぎて沼から抜け出せなくなる方も現れるかもしれないし、この魔道具をフル活用して専門店を出しても繁盛するかもしれない。
「貰ってきました」
フラウリアが持って来たのは、薄切りの肉と新鮮な野菜だった。
相談した上でツマミをもう1/5操作し、黒パンを2枚用意して約3分で焼き、肉と野菜を挟み込む。
「では」
一口食べたフラウリアの動きが止まり、無言のまま厨房へと移動してゆくのを眺めながらイズミも一口食べてみる。
「うん、良い感じ」
ジャムやバターを使ったら、あるいはハチミツをかけたらとつい考えてしまう。
「…香ばしい匂い」
「料理長、食べてみてください」
料理長をほとんど強制的に連れてきたフラウリアが、焼いた黒パンのサンドを食べると真剣な顔つきになる。
「これは…焼いた黒パンの温かさと香り、食感も表面はサクッとして内側は柔らかさがある。肉と野菜も食感の複雑さと味わいに華を添えている。コレだけでも充分に満足出来る一品になっています」
「魔道具の用意が出来たら、普段のメニューに追加も出来るのでは?」
「そうですね…人数と焼き時間を考慮すると少し難しいですが、カットしたパンを事前に準備して皆さんの好みに合わせて各自で魔道具を使ってもらうのがよいでしょう」
「肉や野菜は?」
「別皿に用意して渡し、乗せたり挟んだりを選ばせるのが現実的ですね。全てを厨房でやると時間がかかり過ぎる可能性が高いです」
「…一度にそこそこの量をトースト出来ないのが、このトースターの難点なのね」
料理長は魔道具の使用感と出来た料理のレビューが欲しいとして、フラウリアにトースターを3台程製作を依頼した。
試作品1号はイズミが一旦借りて、もう少し実験をする事になる。
この実験をしっかりとゲヘナにも見られており、姿を見せずともイズミに料理を作れと強烈な圧をかけたのは数分後の事だった。
「早くないですか?」
「お抱えの魔道具職人に設計図を見せたら【この魔道具を今直ぐ俺に作れと言わないなら殺す】と脅されました」
「血の気が多いお方のようで」
「腕は確かですよ」
ゲヘナから素材を受け取ってから数時間後、フラウリアが1番簡単だったと言うトースターの試作品を持ってイズミの部屋に来たのだ。
フラウリアから渡された魔道具もといトースターは、厚切りの食パンにも対応出来る携帯式のようだ。
一度にトースト出来るのは2枚までで、ツマミで焼き時間の調整が可能らしい。
無地のステンレスにも見える外観かつポップアップ式で、とてもイズミ好みである。
「オープントースターとドライフルーツメーカー?は時間が掛かります。なにせ細かな作業工程が多くて職人も苦戦してますので」
「急な依頼なのにすみません」
「いえいえ、彼等も喜んでましたので大丈夫です」
イズミはブレスレット作りを中断して、トースターの調子を確かめる。
手持ちにパンが無いので一度食堂へ向かい、料理人の1人に声をかけて黒パンを貰う。
包丁を借りて厚みを1cmくらいでカットし、トースターにセットしてから焼き時間を調整する。
ツマミを軽く操作すると最大で約一周する代物で、6時丁度の位置が停止で初期位置となっているようだ。
時計回りに操作すると5時位置を少し過ぎた所で停止する、ここがこのトースターの時間調整の限界位置らしい。
「で、これを下げると」
今回はツマミを1/5程回し、レバーを操作してパンをトースターに入れ込むと、ジジジ…と小さな動作音と共に焼きが始まった。
腕時計のボタンを素早く押し込みストップウォッチ機能を起動し、焼きが終わる時間を継続しておく事も忘れない。
クロノグラフ秒針が丁度一周した所で、チンと明るい音と共に黒パンがポップアップしたのでストップウォッチ機能を停止させる。
「約1分か」
イズミはツマミ周りに目印として線を引こうと思い、フラウリアに頼み羽根ペンを貸してもらう。
ツマミの停止位置と現在位置、そして1/5の位置に目印を付けてから黒パンの焼き加減を確かめる。
「うーん…ほとんど焼き色も付いてないですね」
「焼き時間が短かったのでしょうか?」
黒パンを2人で試食しながら、次はもう1/5程ツマミを回す。
これで2/5、約2分の焼き時間になる筈だ。
この位置も羽根ペンで印を付けておき、先程と同じ厚みの黒パンをセットしてレバーを操作する。
これも腕時計で時間計測をすると、予想通り約2分で黒パンがポップアップした。
「今回は焼き色もありますね」
「食感も変わりましたよ」
「黒パンならもう少し焼いた方が美味しいかもしれませんね。白パンならこの位でも良いかも」
そんな会話を食堂の隅で実験をしながらしていたのだが、どうも休憩に入っている屋敷の従者達からの視線を感じる。
「イズミさん、食べ方は焼くだけではないですよね?」
「そうですね。焼いた後でジャムとかを乗せたり、野菜やお肉にチーズを乗せたり挟んだり、バターを乗せるだけでも良いです」
「料理長に少し頂いて来ますね」
焼いただけでも美味しさが変わるが、具材も加えると楽しみやアレンジは本当に多種多様になる。
奥深過ぎて沼から抜け出せなくなる方も現れるかもしれないし、この魔道具をフル活用して専門店を出しても繁盛するかもしれない。
「貰ってきました」
フラウリアが持って来たのは、薄切りの肉と新鮮な野菜だった。
相談した上でツマミをもう1/5操作し、黒パンを2枚用意して約3分で焼き、肉と野菜を挟み込む。
「では」
一口食べたフラウリアの動きが止まり、無言のまま厨房へと移動してゆくのを眺めながらイズミも一口食べてみる。
「うん、良い感じ」
ジャムやバターを使ったら、あるいはハチミツをかけたらとつい考えてしまう。
「…香ばしい匂い」
「料理長、食べてみてください」
料理長をほとんど強制的に連れてきたフラウリアが、焼いた黒パンのサンドを食べると真剣な顔つきになる。
「これは…焼いた黒パンの温かさと香り、食感も表面はサクッとして内側は柔らかさがある。肉と野菜も食感の複雑さと味わいに華を添えている。コレだけでも充分に満足出来る一品になっています」
「魔道具の用意が出来たら、普段のメニューに追加も出来るのでは?」
「そうですね…人数と焼き時間を考慮すると少し難しいですが、カットしたパンを事前に準備して皆さんの好みに合わせて各自で魔道具を使ってもらうのがよいでしょう」
「肉や野菜は?」
「別皿に用意して渡し、乗せたり挟んだりを選ばせるのが現実的ですね。全てを厨房でやると時間がかかり過ぎる可能性が高いです」
「…一度にそこそこの量をトースト出来ないのが、このトースターの難点なのね」
料理長は魔道具の使用感と出来た料理のレビューが欲しいとして、フラウリアにトースターを3台程製作を依頼した。
試作品1号はイズミが一旦借りて、もう少し実験をする事になる。
この実験をしっかりとゲヘナにも見られており、姿を見せずともイズミに料理を作れと強烈な圧をかけたのは数分後の事だった。
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