異世界無宿

ゆきねる

文字の大きさ
61 / 618
第五章 カレンの故郷

第六十話 逃げ出したい

しおりを挟む
イズミの頭ではファンタジーとしか浮かんで来ない状態だったので、頼みの綱のアーリアに魔法通信を繋いで指示を仰ぐ事に決めた。

「アーリア?会って話がしたい。動ける時に顔を出してくれ」

「…イズミ?訳ありね、すぐ行くわ」

アーリアは直ぐに来てくれた。
イズミは取り敢えずラムネを渡して相談をする。

「ここって…パターリア寺院の跡地じゃない。こんな所で何かあったの?」

アーリアが言うには、パターリア寺院自体は200年程前に解体されたそうだが、集落自体は暫く残っていたらしい。
その集落も今は無いが、一部はカレンの村に引っ越ししたりして、存在を知っている者もいるらしい。

イズミは地下への階段がある方を指差し、アーリアを読んだ理由を口にした。

「あれ見えるか?なんか、ダンジョンに成ったらしいのだが…どう思う?」

言葉の意味を理解したアーリアの、素っ頓狂な声が響き渡った。



ラムネを飲んで落ち着いたアーリアが、地下への階段に向かって呪文を唱えている。
イズミには良く分からないが、どうやら探索魔法の類いだろうとカレンが教えてくれた。

「間違いないわ。これはダンジョンよ」

「ダンジョンを見つけたら、何処に報告やら連絡が必要になるんだ?」

驚きを隠せないアーリアと、余り事の重大さを把握していないイズミを見たカレンが苦笑いを浮かべた。

「冒険者ギルドね。ダンジョンの規模にもよるけど、発見者にはかなりの報酬が出るわよ。国内外の冒険者がダンジョン攻略をすべくやってくるから」

冒険者の本分は文字通り冒険する事であり、ギルドへ来た依頼をこなしたり、魔物を狩って素材を集めたりとあるが、最大の醍醐味はダンジョン攻略なのだ。

ダンジョンには魔物が湧き、金銀財宝が出たりする。過去にダンジョンで発見された剣や杖が国宝になったりしているとアーリアが熱く語ってくれた。

「それにしても、ダンジョンに『成る』と言うのは興味深い事象ね。こっちで調べてみる」

「よろしく頼む。カレンの村にはダンジョン発見で話をしておくよ」

アーリアが転移魔法で帰る直前、聞き捨てならない台詞をイズミへ突き付けた。

「発見者は調査隊の案内とか頼まれるかもだけど、頑張ってね?」

イズミは今すぐにでもマスタングに乗って走り出したくなった。
未知のダンジョン探索に付き合わされるのは御免だ。

旅はしたいが冒険はちょっと勘弁だ。
マスタングも入れないし。

イズミは逃げ出したい気持ちを抑え、まずはガルシアが村から人を連れて来るのを待つ事にした。



昼も過ぎてまったりとしていたら、ようやくガルシアが戻って来た。
連れて来たエルフの方に挨拶をする。
白いローブを被っているが、目には輝きが残っている高齢のエルフだった。
まずダンジョンの話をする前に、寺院について確認をした。

「寺院の地下?大したものは無かったと思うねぇ。ほとんど荷物置き場さ。雨乞いの儀式とかの道具も、寺院解体と一緒に無くなったからねぇ」

イズミはその話を聞いた上で、ダンジョンらしいと話を振った。

「その地下なんだがね、どうやらダンジョンに成ったらしいんだ」

「ダンジョン!?こりゃ不思議な事もあるもんだ!長生きするのも悪いもんじゃ無いねコリャ」

そう言って笑っていた。
豪胆なエルフだった。
自分ももう少し豪胆な人間になれるだろうかと考えたが、そんな姿が一切浮かんで来なかったイズミは、苦笑いを隠せずにいた。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

処理中です...