異世界無宿

ゆきねる

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第十章 気楽な一人旅

第百二十九話 海の幸

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テルート達から解放されたイズミは、自分の部屋に戻って身体を休めていた。

あんなに話すのは久し振りだったので、話し疲れたと言うのもある。

イズミは腰周りの装備をベッドの近くへ置くと、マグナムを枕元に忍ばせる。
ショルダーホルスターは部屋にあった椅子にぶら下げた。

「よし。明日に備えて寝るか」

そう言ってベッドに入ると、すんなりと眠りについた。


翌朝、準備を整えて宿屋の入口に行って従業員へ声をかけた。

「少し外へ出掛けます」

「分かりました。今なら市場が賑わってますよ」

イズミは市場の場所を教えてもらうと、足早に移動を始めた。

海の匂いと活気の有る市場と来れば、どんな魚が売っているのかを見て回るのが楽しみの1つだろう。

魚と言っても種類は多い。
知識がある訳では無いのでかなり大雑把に見ているが、思った以上に大きな魚が多い。

「旅の人かい?取り立ての魚はどうだい」

イズミが声の主を見ると、魚を網で焼いていた。
白身魚が数匹、網の上で良い色になっている。

「では、1つ貰おう」

イズミは銀貨を1枚渡すと、お釣りと一緒に木の皿へ乗せられた白身魚を受け取った。

「焼き立てってのもあるが、魚は美味いな!」

一口食べた瞬間、元いた世界での食事を思い出す。
骨が多くて食べにくかったとか、醤油をかけ過ぎてしまったとか。
今となっては懐かしい。

美味しいが、一匹を全てこのまま食べるのは正直微妙だ。

こっちの世界にも醤油があれば…

そう考えていたら、先程の男が手招きをして来た。
近付いてみると、男がひょうたんのような物を取り出した。

「お前さんの顔を見たら、直ぐに分かったぞ…美味いが味に物足りなさを感じてる顔だ」

ひょうたんの蓋を外すと、魅力的な濃い香りがする。

「これは物好きな漁師の間じゃ知らない奴はいない、魚醤ってやつだ。誰が最初だか知らないが、俺が生まれる前から親父は作ってたんだ」

食べ物に歴史あり、である。
魚醤を少し垂らしてもらい、改めて魚を食べる。

醤油とは違う味わいだが、この世界ではまだ出会っていない、数少ない濃い味である。

「美味かった!」

あっと言う間に平らげてしまったイズミは、木皿を返却してから市場を散策に戻った。

魚は生物なので購入はせず、気になった店を覗く程度にしておいた。

この町は砂浜が無く、岩間が多いとの事で貝類とかも採れるそうだ。
味噌は無くても、汁物も美味しそうだ。


汁物を売っている店を探したが、見つけた店では1回売り切れたらしく、新たに作っている最中だったので今日の所は見送った。

「さて、今日はこんなで良いかな?」

イズミはまず魚を食べられた事に満足したので、一旦宿屋へと戻る事にした。

その道中でも誰かに見られているような気がしたが、特段被害を受けている訳では無いので無視を決め込んだ。

宿屋に到着してから腕時計を見ると、10時を回った所だったので一度マスタングに乗り込んで周囲の確認をした。

「…気になる魔法反応が2つありますが、攻撃等の意思は確認出来ません」

「監視役だろうな。変な動きがあったら教えてくれ」

「分かりました」

イズミはマスタングに警戒を頼んでから、宿屋へと入った。
従業員に声をかけると、にこやかに返事をくれた。

自分宛てには誰も来ていないとの事なので、安心して部屋へと戻った。
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