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第十三章 陰謀の気配
第百七十四話 旅路の準備
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イズミは半ば居候状態になっている辺境伯の屋敷にて、一通りの挨拶回りを済ませると馬車置場にてマスタングに寄りかかっている。
「イズミ、明日出発なんだろ?」
「そうだが」
ベリアがブラシで毛並みを整えつつ、マスタングを見ている。
「食料は大丈夫なのか?」
「旅の道中で買い出しでもするさ…ある程度備えもある」
そう言うとマスタングのトランクを開け、食料を実体化させる。
野菜は少なくなり始めているが、主食と水は問題無いレベルだった。
「明日の朝出発したら、1箇所寄り道してからハルハンディアに向かう」
「寄り道?」
「あぁ。以前頼んでいた物がそろそろ完成している筈でな」
イズミは身体を伸ばしてから、マスタングの移動ルートに変更を加えた。
翌日。
出発前にゾルダとベリアが最後の実戦訓練をしている。
結果はゾルダの3戦全勝だったが。
「まだまだ動作に隙があるぞ」
「くぅ~、スピードだけでは埋められないか」
その姿を見ているイズミとエレナには、到底対応の出来ない次元の戦闘だった。
イズミは良くても2発目を避けられないだろうし、エレナは練習中の魔法を会得するまでは1発目すら危うい。
「さすがはSランク冒険者だろ?」
アレクセイが装飾が控えめな服装で屋敷の外へ出て来た。
「敵に回す未来は避けたいですね」
イズミは正直に答える。
「侵入者の件は、各領主及び国王陛下にもお伝えしている。領地跨ぎ故に調査は国が取りまとめをする。イズミ殿は安心して旅に戻れるぞ」
「何かあればエレナ様を経由して頂ければ、連絡は可能です。精霊様が取り持ってくれるそうですので」
エレナの方を見ると、エレナの背後からジーヴルがスッと現れ手を振っている。
「まさか精霊様にお会いするだけではなく、娘が契約まで交わすとは…」
「第三者視点なら面白いで片付きますが、私も当事者の1人ですので…何かあれば馳せ参じます」
「娘の件を国王に伝えるのが辛いぞ…婚約者問題が激化する…ハルハンディアに向かうなら当初第一候補だった公爵家の領地を通過する事になる。心して行く良い」
こめかみを抑えつつ考え込むアレクセイを見たイズミだったが、気の利いた返しが出来ず苦笑いを浮かべた。
「公爵家も私の存在を?」
「もう把握しているだろう。エレナの能力が覚醒した理由も、ある程度掴んでいると思っておいた方が良いぞ」
今度はイズミが頭を抱える番だった。
下手をすると公爵家からの圧力や旅路の妨害もあるかもしれないのだ。
「…その公爵家と我が一族は仲が良い。それに公爵家の愛娘は10歳ながら既に4大属性を使いこなしている天才だ」
「人格に難ありとか?」
「研究熱心、完璧主義、そして面白いと思った物には執着する事も多々ある」
「…聞く限りでは魔術師に思えますが」
「だから王家に嫁がせて、魔術師の道から遠ざけたいのだ」
アレクセイの言葉には重みや棘を感じる。
貴族としての本音と建前があるのだろう。
「貴族と言うのは、色々と大変ですな」
イズミは半分現実逃避も含んだ返事をする。
アレクセイが笑い声をあげると同時に、イズミの肩を叩いた。
「この程度なら日常茶飯事だ。舞踏会が近付くと胃に穴があくか思うような日々に早変わりだ」
イズミはつくづく、貴族で無くて良かったと痛感していた。
「イズミ、明日出発なんだろ?」
「そうだが」
ベリアがブラシで毛並みを整えつつ、マスタングを見ている。
「食料は大丈夫なのか?」
「旅の道中で買い出しでもするさ…ある程度備えもある」
そう言うとマスタングのトランクを開け、食料を実体化させる。
野菜は少なくなり始めているが、主食と水は問題無いレベルだった。
「明日の朝出発したら、1箇所寄り道してからハルハンディアに向かう」
「寄り道?」
「あぁ。以前頼んでいた物がそろそろ完成している筈でな」
イズミは身体を伸ばしてから、マスタングの移動ルートに変更を加えた。
翌日。
出発前にゾルダとベリアが最後の実戦訓練をしている。
結果はゾルダの3戦全勝だったが。
「まだまだ動作に隙があるぞ」
「くぅ~、スピードだけでは埋められないか」
その姿を見ているイズミとエレナには、到底対応の出来ない次元の戦闘だった。
イズミは良くても2発目を避けられないだろうし、エレナは練習中の魔法を会得するまでは1発目すら危うい。
「さすがはSランク冒険者だろ?」
アレクセイが装飾が控えめな服装で屋敷の外へ出て来た。
「敵に回す未来は避けたいですね」
イズミは正直に答える。
「侵入者の件は、各領主及び国王陛下にもお伝えしている。領地跨ぎ故に調査は国が取りまとめをする。イズミ殿は安心して旅に戻れるぞ」
「何かあればエレナ様を経由して頂ければ、連絡は可能です。精霊様が取り持ってくれるそうですので」
エレナの方を見ると、エレナの背後からジーヴルがスッと現れ手を振っている。
「まさか精霊様にお会いするだけではなく、娘が契約まで交わすとは…」
「第三者視点なら面白いで片付きますが、私も当事者の1人ですので…何かあれば馳せ参じます」
「娘の件を国王に伝えるのが辛いぞ…婚約者問題が激化する…ハルハンディアに向かうなら当初第一候補だった公爵家の領地を通過する事になる。心して行く良い」
こめかみを抑えつつ考え込むアレクセイを見たイズミだったが、気の利いた返しが出来ず苦笑いを浮かべた。
「公爵家も私の存在を?」
「もう把握しているだろう。エレナの能力が覚醒した理由も、ある程度掴んでいると思っておいた方が良いぞ」
今度はイズミが頭を抱える番だった。
下手をすると公爵家からの圧力や旅路の妨害もあるかもしれないのだ。
「…その公爵家と我が一族は仲が良い。それに公爵家の愛娘は10歳ながら既に4大属性を使いこなしている天才だ」
「人格に難ありとか?」
「研究熱心、完璧主義、そして面白いと思った物には執着する事も多々ある」
「…聞く限りでは魔術師に思えますが」
「だから王家に嫁がせて、魔術師の道から遠ざけたいのだ」
アレクセイの言葉には重みや棘を感じる。
貴族としての本音と建前があるのだろう。
「貴族と言うのは、色々と大変ですな」
イズミは半分現実逃避も含んだ返事をする。
アレクセイが笑い声をあげると同時に、イズミの肩を叩いた。
「この程度なら日常茶飯事だ。舞踏会が近付くと胃に穴があくか思うような日々に早変わりだ」
イズミはつくづく、貴族で無くて良かったと痛感していた。
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