異世界無宿

ゆきねる

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第十七章 臨時の同盟

第二百三十二話 口裏合わせ

「ベリア、聞こえるか?」

「なんだイズミ?」

魔法通信が繋がると、いつも通りのベリアの声が聞こえてきた。

「今は何をしてる?」

「今?冒険者ギルドに呼ばれて、襲撃者騒ぎの話をする所」

ギリギリの所だったようだ。
ベリアに隠しておいて欲しい事だけ急ぎで伝えて置いた。

「あの腕時計の事は、秘密で頼む」

「アタイのナイフはどうする?」

「詳しく聞かれたら、旅の途中で出会ったへんちくりんな爺さんに鍛えて貰ったと言って、茶を濁してくれ」

「分かった」

イズミは突貫の隠蔽工作を済ませると、マスタングの運転席のシートにもたれ掛かる。

「その場しのぎの悪知恵浅知恵で、何処まで隠せるかね?」

「彼等も馬鹿ではありませんので、監視の目がつくかと」

「だよなぁ」

大きなため息をついたイズミが、武器の修復状況を確認する。

「ショットガンは完了しました。マグナムはもう少しかかりそうです」

「そうか」

イズミは実体化されたショットガンを受け取るとショルダーバッグに仕舞い、壊れた腕時計をグローブボックスに入れた。

「朝の戦闘で壊れたみたいでな」

「此方も修復しますか?能力付与は出来ないですが」

「悩みどころだな」

今後の戦闘でも有効活用出来る能力だが、今の自分では使い切れないのが気になる。

「では、通常修復します。明日の朝には完了します」

「ありがとう」

マスタングはイズミの回答を聞く前に、腕時計の修復に入った。
ステアリングを優しく撫でたイズミは、マスタングから降りて飯屋を探しに歩き出した。

夜は酒場が賑やかだと考えていたが、その中で一店舗だけまだ席に余裕がありそうな店があった。

店に入ると、入口は薄暗いが中はしっかりと明るかった。

「…いらっしゃい」

「この町に来て間もなくてね、オススメはなんだい?」

イズミはテーブル席に座ると、店主だろう男に話しかけた。

「肉と野菜のパン包みだな」

「では、それを2つ頼む」

少し待っていると、ブリトーのような食べ物が乗った木製の皿が目の前に差しだされた。

「手に持って食べやすい大きさを意識して、薄く長く焼いたパンで巻いたんだ。昼飯時じゃ人気なんだ」

ガブリと大きく噛じると、ソーセージとシャキッとした野菜が詰まっていた。
食感も味も悪くない。
強いて言うならば、ソースが欲しい所である。
チリソースみたいな。

「確かに、昼飯にピッタリだな。小腹が空いた時にも夜食にも良さそうだ」

「手軽で腹持ちも良いから、オススメなんだ」

食べながら納得したイズミは、1つ目をすんなりと食べ終えた。
もう一つも平らげ会計を済ませると、子供達の保護をしている建物へ向かうベリアが見えたので後を追って声をかける。

「おうベリア、ギルドとの話はどうだった?」

「大変だったな。クラーケン討伐まで遡ってアレコレ聞かれたよ…」

疲れた顔をしているベリアが、話を続ける。

「あのナイフについてもそうだし、魔術師のフレイムバーストをどう防いだのか、襲撃者撃退の詳細とかをみっちり」

「面倒だな、まったく」

イズミは腕を組み、自分がどう説明をするべきかを考え始める。
そもそも、自分は冒険者ギルドに登録されていない人間なので、個人的には拒否しても構わないのだが。

「腕時計?ってのは言わなかったけど、ナイフの事はガッツリ聞かれたぞ。ギルドの責任者にも詰められるし、同業のエルフ達からも目を輝かせての質問攻めでよ…もしかすると、後を付けられてるかもしれない」

「そんなか」

「そのくらい凄い武器って事だ」

ベリアが周囲を確認するも、付けられてはいないようで向き直り建物へ入る。

「すぐにイズミとマスタングが関わってる事くらいは勘付くと思う」

「だよな。どうしたものやら」

後先を考えない行動を続けると、面倒事が同時多発的に押し寄せるのだ。
皺寄せとか年貢の納め時とか、色々な言い方はあるが、何処かで清算する事になる。

イズミはふとヒールで治癒された左腕を軽く叩き、回復具合を確かめる。
しっかり痛くて、少し涙が出そうになった。
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