異世界無宿

ゆきねる

文字の大きさ
240 / 701
第十七章 臨時の同盟

第二百三十三話 しらばっくれる

結論から言うと、夜間の襲撃は来なかった。
ベリアと交代しながら戦闘に備えていたが、杞憂に終わったのだ。

皆で集まって朝食を取り終えると、イズミは面倒だが冒険者ギルドへ向かう事にした。
厄介事や面倒事は、早めに済ませてしまいたい。
今日はそんな気分なのだ。

ギルドの受付嬢に昨日貰った紙を手渡すと、すぐに奥の部屋へ案内される。
扉を開けると年配の男、ツォーネットが書類をまとめている所だった。

「失礼いたします、イズミ様がいらっしゃいました」

「ありがとう。どうぞ此方へ」

ツォーネットが視線を上げると、受付嬢がソファまでイズミをエスコートした。

「最初に言っておくが、俺個人に関して話せる事は少ない」

向かいのソファに座ったツォーネットに対して、初手で断りを入れておいた。

「王国のギルドから届いた資料を拝見しました。正直あまり良い事は書かれておりませんでしたが…」

「非協力的かつ挑発的な態度と言動、ギルドに対し敵対意識が強く自己中心的で協調性が無いとか、そんな感じか?」

「詳しくは申し上げない事に致します。大切なのは子供達の救出に関する事ですので」

ツォーネットが机に資料を置き、質問が始まった。

「最初の質問ですが、どうやって子供達が誘拐された場所を見つけたのですか?」

「相棒のお陰でね。広範囲の魔法反応を調べる事が可能で、偶然それに引っかかった。調べてみたら廃墟に複数の反応があり隠匿魔法がかかっていると分かったので、友人であるフラウリアに話をしたという所です」

「そこまで調べられるとは、驚きの精度ですな」

資料と話しの内容を確認しつつ、ツォーネットが質問を続ける。

「廃墟には複数の賊が居て、主な対応はイズミ殿とベリア殿が受け取ったと伺っておりますが、正しいですかな?」

「ええ、廃墟内に入ったのは私とベリアの2人だ」

「ベリア殿は風魔法を使えると仰ってましたので隠密行動は理解出来ますが、イズミ殿はどのように?」

「…比較的静かに攻撃が可能な武器があるとだけ、言っておきます」

「秘密ですか」

資料に羽根ペンで追記をしながら、ツォーネットは目だけでイズミを見る。

「私の様な無宿人は味方は少ないものでして、手の内はなるべく隠しておきたいのです」

イズミは少しだけ戯けた口調で返した。

「隠匿魔法と防御魔法を突破したのはイズミ殿が?」

「えぇ、そうなります。方法を聞いても参考にはならないかと」

「具体的には?」

「高威力な武器による物理的破壊です。武器に関してはお答え出来かねます」

「…成程」

メモを取っているツォーネットの動きが止まり、イズミの顔をジッと見る。
どのような武器なのか気にはなるが、答える気が無いと分かると次の質問へと移った。

「ここからが我々が知りたい事になります…子供達には隷属の魔法が掛けられていたとの報告があります。しかし、この町で保護した時点で魔法は解かれていました。フラウリア殿が仰るには、とある魔法を使う事で解除出来ると。冒険者ギルド本部に問い合わせても、そんな魔法は知らないとの回答でした。イズミ殿は何かご存知ですかな?」

「分かりませんね。そもそも、私は魔法を使えない人間でして」

イズミはなるべく冷静に、そして表情に出さないように努めながら答えた。
腕時計が関わる話は全カットにしておきたいからだ。

「…そうですか、では別の質問をさせて下さい。ベリア殿の扱うナイフについてです」

話す気が無いと判断したのか、ツォーネットはベリアのククリナイフについて質問をして来た。

「エルフの方ですら驚く程の、魔法剣と呼んで差し支えない代物です。それを何処で入手したのか」

「ベリアの武器について聞かれても困るな。俺の武器じゃないから、知らんとしか言いようが無い」

「クラーケン討伐の時点で、ベリア殿はイズミ殿と旅を共にしていますよね?」

「えぇ。でも存じ上げませんね」

ツォーネットとイズミの睨み合いが続く。
イズミは基本的に話す意思が無いので、聞かれてもはぐらかすか秘密にするだけなのだ。

「…どうやら貴方は、秘密にしておきたい事が多いようですな」

「男も女も、秘密の多い方が魅力的では?」

「多過ぎるとむしろ怪しくなり、疑われるものです」

ツォーネットの目つきが鋭くなるが、イズミは気にせず笑顔を作る。

「勝手に疑うのは結構だが、俺の旅路の邪魔だけはしないでくれ…邪魔した者がどうなったのかも、その資料に書いてあるのでしょう?」

イズミが冷たい笑みを浮かべ鋭い眼光でツォーネットを睨むと、ソファから立ち上がり強引に話を切り上げようとする。

ゴーン、ゴーン、ゴーン…

唐突に町の広場の方角から鐘の音が5回なった。
イズミがこの町に来てから、初めて聞く音だった。
感想 25

あなたにおすすめの小説

犬の散歩中に異世界召喚されました

おばあ
ファンタジー
そろそろ定年後とか終活とか考えなきゃいけないというくらいの歳になって飼い犬と一緒に異世界とやらへ飛ばされました。 何勝手なことをしてくれてんだいと腹が立ちましたので好き勝手やらせてもらいます。 カミサマの許可はもらいました。

異世界で 友達たくさん できました  ~気づいた時には 人脈チート~

やとり
ファンタジー
 異世界に突然迷い込んだ主人公は、目の前にいた人物に何故かぶぶ漬け(お茶漬け)を勧められる。  そして、自身を神の補佐である天使というその人物(一応美少女)に、異世界について教わることに。  それから始まった異世界での生活は、様々な種族や立場の(個性的な)人に出会ったり、魔界に連れていかれたり、お城に招待されたり……。  そんな中、果たして主人公はどのような異世界生活を送るのだろうか。  異世界に迷い込んだ主人公が、現地の様々な人と交流をしたり、一緒に何かを作ったり、問題をなんとかしようと考えたりするお話です。  山も谷も大きくなく、話の内容も比較的のんびり進行です。 現在は火曜日と土曜日の朝7時半に投稿予定です。 感想等、何かありましたら気軽にコメントいただけますと嬉しいです! ※カクヨム様、小説家になろう様、ノベルアップ+様にも投稿しています

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。 彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。 ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~

ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。 異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。 夢は優しい国づくり。 『くに、つくりますか?』 『あめのぬぼこ、ぐるぐる』 『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』 いや、それはもう過ぎてますから。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

W職業持ちの異世界スローライフ

Nowel
ファンタジー
ブラック企業の社畜、鈴木健一 ある日彼はトラックに轢かれ亡くなった。 そして、気付くと魂の姿になっていた。 橋の神様の提案で異世界転移をすることに。 橋を渡った先には扉があって…。