異世界無宿

ゆきねる

文字の大きさ
241 / 625
第十七章 臨時の同盟

第二百三十四話 奇襲妨害

しおりを挟む
イズミは右手をそれとなくバックサイドホルスターに伸ばしながら、部屋の扉を開けて辺りの確認をする。

冒険者ギルド内も慌ただしいが、武器の準備等はしていなかった。

「やれやれ…町の鐘が5回鳴るのは、貴族様が来られた合図です。どの御方なのやら」

背後からため息をつきつつツォーネットが歩いてくる。
町の冒険者ギルド責任者である為か、貴族への対応も業務に含まれているようだ。

イズミは忙しそうなギルドの職員を1人掴まえると、話し合いは終わったと伝えて裏口から外へ出たいと話した。

「分かりました。表は貴族様がいらっしゃいますので、そのまま裏通りをお使いになった方が早く帰れるかと」

「どうもありがとう」

裏口まで案内をしてくれた職員の手にチップ代わりの金貨を握らせ、裏通りを静かに歩き始めた。


冒険者ギルド入口。
普段なら町の人達で賑わう通りだが、今は賑やかさも薄れている。
冒険者ギルドの建物前に馬車が数台止まり、統一感のある装備を身に纏った兵士の1人が馬車の扉を開ける。

「お嬢様、テルジム町の冒険者ギルドに到着しました」

「そう、分かったわ」

馬車から降りた女は、目の前に現れた男に声を掛けた。

「あらツォーネット、何時もより疲れた顔をしてるわね」

「ソフィア様はご機嫌麗しいようで。朝から書類をまとめていましたら、目が疲れてしまいまして…年は取りたくありませんな」

「そう?私には良い年の取り方をしているように見えるけれど」

ソフィアと呼ばれた女性がツォーネットの案内でギルドの応接室へ入って行く。
ツォーネットは近くにいた職員を呼び止めると、イズミへの聴取の中断の言伝を頼む。

「私はソフィア様と打ち合わせに入りますので、イズミ殿からの聴取は後日行いたいと話をしておいて下さい」

「イズミさんでしたらツォーネットさんがソフィア様のお出迎えをしている時に、話は終わったと言って裏口から出て行きましたよ」

「…やりおるな」

硬い表情を崩したツォーネットだったが、ため息をついたら元の表情に戻る。
そしてソフィアの待つ応接室へ入って行った。


裏口から冒険者ギルドの建物を出たイズミは、裏通りから少し移動をしてから通りの状況を確認する。

「…貴族と馬車と兵士、面倒事じゃなければ良いが」

イズミが通りに居る人間観察をしていると、向かい側の裏通りへ通じる小道から馬車を観察している男が見えた。

男が右手を胸の位置まで持ち上げると、掌に火球が現れる。
兵士達はまだ気付いていないようで、特段の動きは見られなかった。

「…どうするイズミ、また面倒事に首を突っ込むのか?」

イズミは自問自答をした後にため息をつく。
覚悟を決めホルスターに手を伸ばし、銃のグリップを握るとセイフティを外して通りへ歩き出した。

「おい、そこの!何してんだ?」

「!」

奇襲攻撃に集中していたのかイズミに気付いていなかった男が、声を掛けられると同時に火球をイズミへ投げ付けて来た。

「うぉ!?」

イズミは銃を抜きつつ背中から倒れ込むようにして火球を避けると、男に向けてリズム良く3発撃ち込んだ。

銃声が通りに響き渡り、火球が燃え上がるのに気付いた兵士達が防御体勢を取り始める。
男に銃弾は命中したが、まだ動けるようでその場を逃げ出した。
イズミは銃を男に向けたまま起き上がると、銃を両手持ちで構えて逃げる背中に向けて2発撃った。

男は耐え切れず倒れ込んだので、イズミは一度周囲を見渡してから銃を男へ向けつつゆっくりと接近する。

「何処の連中から知らないが、物騒な事は良く無いな。目的はなんだ?」

男の顔を確認する為に横たわる身体を転がすと、銃弾は胸部に命中していたようで出血が酷く、既に話が出来るような状態では無かった。

ザシュ…

イズミの背後から物音がしたので咄嗟に振り向くと、ローブで顔を隠した何者かがストーンバレットを仕掛けて来る所だった。

イズミは咄嗟に銃を撃ちながら建物の角まで移動して身を隠すと、銃は弾切れとなりスライドが止まる。
避けたストーンバレットが倒れている男をズタズタにすると、路地裏は束の間の静寂に包まれた。

イズミは深く静かに呼吸を整えると、空になった弾倉を地面へ落とす。
予備弾倉を左手で取り出し、銃へ詰め込みスライドストップに指をかける。
敵の物音に注意しつつ銃を構え直すと、通りに向けて半身を出して銃を撃ち込もうと身構えた。

通りには、既にローブの敵は居なかった。

「逃げた…のか?」

ローブの敵が立っていた場所には、僅かに血がついていた。
これがマグナムだったら倒せていたかもしれない。
そう考えてしまうが、この拳銃でも一応戦える事は分かった。

セイフティを掛け銃をホルスターに仕舞い空になったマガジンを回収した所で、兵士達がやって来しまった。
その為、空薬莢の回収は出来なくなった。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

彼に勇者は似合わない!

プリン伯爵
ファンタジー
連日の残業で終電帰りのサラリーマン、神無月無名21歳。 ある夜、突然足元の光に包まれ異世界へと召喚されてしまう。 そこは豪華絢爛な王宮。 第一王女ラクティスは、彼を含む男女5人を「勇者」として召喚したと告げる。 元の世界では時間がほぼ止まっているという説明を受け、半ば強制的に魔国との戦いに協力することになった無名たち。 発現した無名の紋章は歴代でも最高クラスを示し万能の勇者と称され、周囲を驚愕させる。 元の世界への帰還を条件に口頭で協力を約束する勇者たちだが、無名だけは王家に対し警戒心を抱き、王に元の世界への帰還とこの世界で得た力を持ち帰ることを書面で約束させる。 協調性がないと周囲から思われながらも、己の最適解を優先する無名は、果たして他の勇者たちと協力し、魔国を打ち倒して元の世界へ帰ることができるのか。 それぞれの思惑が交錯する中、勇者たちの戦いが幕を開ける。 これは社会不適合者が歩む成長の物語。

不死身のボッカ

暁丸
ファンタジー
逓信(ていしん)ギルドに所属する甲殻人ボッカ。歩荷(ぼっか=運搬人)だからボッカと素性を隠す特急便の運搬人。 小柄な身体に見合わぬ怪力、疾風のスピードと疲れ知らずのスタミナで、野を越え山越え荷物を運ぶ。 逓信ギルドの運搬人になったのは、危険な迷宮には入りたく無いから。面倒と危険を避けてすんなり仕事を終わらせたいのに、時にギルド支部長に命じられ行きたくも無い魔獣狩りの運搬人として駆り出される。 割とチートな身体能力を持ちながら、戦闘能力はからっきしで過剰な期待はされたく無い。こんな殺伐とした異世界生活なんかとっとと終わらせて眠るように死にたいと願う、そんな<不死身の歩荷>のお話。 ※種族名とか用語は前作と共通にしてますが、別の世界の物語です。世界観も若干違います。 ※「歩荷」とは一般的にいう「ポーター」のことですが、長距離運送も兼任しています。 ※作者が設定厨なので、時々本筋に関係ない解説回が入ります。 ※第16回ファンタジー小説大賞にエントリーしてみました。

僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~

めでめで汰
ファンタジー
バッファーの少年カイトのバフスキルは「ステータス欄の中に入って直接数字を動かす」というもの。 しかし、その能力を信じなかった仲間からカイトは追放され迷宮に置き去りにされる。 そこで出会ったLUK(幸運)値の高い少女ハルと共にカイトは無事迷宮から生還。 その後、カイトはハルの両親を探すため地下迷宮の奥へと挑むことを決意する。 (スライム、もふもふ出てきます。女の子に囲まれるけどメインヒロインは一人です。「ざまぁ」もしっかりあります)

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

龍と旅する。

水無月
ファンタジー
治安が良くない島々や国を龍と旅する物語。 主人公たちが探すのは「龍の卵」。だがそれを狙うのは彼らだけではなく、「龍狩り」や貴族とも争うことになる。 出会いと別れを繰り返して、ロッドとレリスは大海原を渡る。 ・海龍 ロッド……最強。頼りになる。こいつ一人でいいんじゃないかと思われるが、とある理由からレリスと行動している。威厳のある話し方をするが、中身は幼い男の子。 ・人間 レリス……男性。人間基準で言えば強いが、あくまで人間の枠組みの中でのこと。お人好し。 ※注意 〇喧嘩しまくりの異種族同士ですが、彼らはお互いを家族だと認識しています。家族愛です。 〇レリスが生まれ持った性質のせいで「龍の卵」なみに狙われる時があります。徐々に巻き込まれヒロインみたいになります。 〇上記のふたつが無理な方はお気を付けください。表紙と挿絵は手描きです。

処理中です...