異世界無宿

ゆきねる

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第十九章 暴力の嵐

第二百九十話 移動再開

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翌朝。
イズミ達が宿屋の朝食を食べていると、外が騒がしい事に気が付いた。

「何かあったのか?」

ベリアが女主人に尋ねる。

「朝一番に国からの調査隊が来て、犯罪組織の拠点が壊滅したって正式な報告があったのさ。今までは何もしてくれなかったのにね」

犯罪組織の規模が大きかったり、バックの支援者が権力者だったりすると、色々と複雑な事になる。

「コレを期に近くの領地を管理しているフーディン子爵家が、この村の管理を一時的に代行するって話だよ」

「良いのか悪いのか、旅人には分からんな」

イズミは食べ終えた食器を片付けると、昨日のプリンを取り出した。
今回は皆に2つずつ行き渡るようにした。

「…アタシも良いのかい?」

「当然。今後自作する時は1人だからな」

もう一度厨房を借りてカラメルを作ると、女主人は真剣な眼差しで工程を確認していた。

「砂糖を焦がすと苦くなるのは知ってたけど、その苦味を利用するとはねぇ」

「そうだ。この焦がしの時は、砂糖を変に混ぜないってのも大事だ。ちなみにだが、自作する時はこの作業を最初にやった方が良いぞ。最初に作ってカップに入れておいて、そこに卵と牛乳を混ぜた液をゆっくり注ぎ込む」

「最初に?つまり、苦いのが最後に来る感じね」

完成したカラメルを持って行くと、ベリアは慣れた手つきでプリンへかける。

「朝から甘い菓子が食べられるなんて、最高だなぁ」

「1日の終わりに食べるのも良いが、これはこれで良いよな」

プリンをしっかりと味わったら、本来の目的である旅に戻る。

ベリアが移動の準備をしている間に、女主人へプリンの作り方を簡単ながら説明しておいた。

「…まぁ、ザックリ説明するとこんな感じだな」

「火加減と時間管理が肝なのは、どの料理でも一緒だね」

思ったよりも飲み込みが早いので、近いうちに良い物が作れるかもしれない。

「イズミ!準備出来たぞ」

「よし、では我々はこれで」

そう言うと2人は宿屋の前に停めていたマスタングに乗り込む。

「どうもね!またいらっしゃいな」

女主人はそう言うと、手を降って2人を送り出した。


「さて、火山地帯まではどのくらいだ?」

「…先日かなりの距離を進みましたので、遅くても7日程度で到着するかと」

ふざけた連中の拠点に殴り込みをかけた際、既に約200kmは移動をしていたのだ。
当初の予定より早くて当然である。

「火山地帯へ到着したら、ドワーフの酒や武器を見なくちゃな」

ベリアは既に冒険者モードに切り替わっており、期待に胸を膨らませているようだった。

「温泉もあるみたいだし、引き渡しした卵の事もあるしな」

「フラウリアとの約束もあるだろ」

「そうだったな。それも全部、到着してからだ」

まったりとマスタングは火山地帯を目指して走り続ける。
その姿を女神や精霊達、一部の魔族達が各々の魔法で観察をしていたのだった。


時を同じくして。

「お父様、この問題はお父様でも手に余る事態なのでは?」

ソフィアは大量の証拠品を確認しながら呟いた。

先日、自身の知り合いの部下が届けてくれた証拠品は膨大だった。
ソフィアと父親、両者が共に信頼出来る人物3人と一緒に関係者リストと犯罪内容をまとめ始めていたが、関係者が多過ぎるのである。

「教会にも関係者が居るみたいだし、ミレニア様にも一報を入れるべきかと」

「うむ…光の神子様にも一報を入れるのは当然ではあるが、報告をする順番を間違えると厄介だ」

ソフィアの父はこめかみを揉むようにしながら、大きなため息をついた。

「お父様、まだ証拠品の半分も確認出来てませんよ?」

「分かっておるが、如何せん歳には勝てぬものがあるのだ。まず文字が読み難い」

そんな弱音を吐きつつ、証拠品の分別を続ける。
問題は盗品の確認に入った時だった。

「こんな物まで盗んでいたとはな…」

「お父様、それは?」

「本来ならば、隣国の王貴が持っているべき逸品だ。ソフィア、至急元老院に報告を」

「まだ全ての証拠品を確認し終えた訳では…」

「国家間の重大問題に発展し得る緊急の事案だ。第一報は必要だ」

父親の真剣な表情と重い口調が、事の重大さをソフィアに伝えているようだった。

「今日も徹夜になりそうね…今後イズミに会ったら、一発くらい引っ叩いてやる」

任された最初の仕事が、国家間の問題になる異次元の大仕事になると悟ったソフィアは、思わず遠くを旅しているイズミに対してボヤきを入れた。
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