異世界無宿

ゆきねる

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第二十三章 独自の調査

第三百九十九話 色々と忘れてた

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翌朝。
イズミはベリアと共に朝食を食べてから、ヒュミトールまでの食料を購入しに市場へ向かう。

マスタングでの移動であれば並の冒険者基準の半分以下で到着するので、そこまで買い込まずに済むのは財布に優しい点である。

「いやー、昨日の夕飯は美味かったな。葉野菜も油で揚げてるのがあったからどんなもんかと思ったけど、苦味も無くて良かった」

「そりゃオススメだからな。かなり手間のかかってそうな料理だったけど、あれで採算が取れるものなのかね」

「油も上質なヤツだと思うぞ。食べてて胃がキツくならなかったし」

昨日の夕食に選んだサンドリザードの油揚げは、確かに絶品だった。
ベリアが上機嫌に酒を注文して飲み会を始めそうな勢いだったので、それを止めるのに苦労したほどだ。

「美味い飯と美味い酒があったら、そりゃ楽しまないと駄目だろ?」

「それもそうだけどさぁ」

買い出しを終えた2人は、宿屋に一声掛けてからマスタングへ向かう。
トランクに食料を詰め込んでいると、シンシアがやって来た。
その後ろには老夫婦が居る。

「あの…」

「どうしました?」

準備を済ませたイズミがシンシアの元に歩いてゆくと、老夫婦が丁寧に頭を下げる。

「あのブローチを見つけて下さって、本当にありがとうございます」

「いえいえ、見つけたのは偶然ですので。運が良かっただけです」

「領主様の命で避難をしている際に、妻が落としてしまったようでして。しかしどうしても諦めきれなかった」

そう言ってブローチを懐かしそうに見つめる老夫婦を、イズミもベリアも温かく見守った。

「本当に、ありがとうございます!」

シンシアが改めてお礼の言葉と共に深々と頭を下げるので、イズミは頭を上げてもらうと笑顔で言った。

「偶然と幸運が重なっただけですよ。では、我々はコレで」

挨拶を済ませたイズミは、マスタングに乗り込むとヒュミトールへ向けて走り出した。


「…そうだ、忘れてた」

「何を?」

「グールとの戦いの時に、マスタングから悪臭から嗅覚を守るドリンクを貰ったんだ」

ベリアは助手席から外の景色を見ていたが、イズミへと顔を向ける。

「独特な味でさ、後で美味しい飲み物が欲しいと言ったら、それはイズミに相談してくれって返事を貰ったのを思い出した」

「遅くね?」

「あー、ちょっと勿体無い事したかな」

「夜食用に渡したジャムでチャラって事にしておいてくれ」

「今回は、そう言う事にするよ…イズミも何か忘れてないか?」

ベリアが意味ありげに聞いてきたが、イズミは考えても浮かんで来なかった。

「…何かあったっけか」

「本当に忘れてるのか?2人のパパになるんだろ」

「あ!名前か…まいったなぁ」

完全に忘れていたが言葉には出さない、ヒュミトールまでの移動には数日かかる。
その間に候補を数個絞り出さなければ、アヤとエレノアに詰められそうだ。

「アヤの子供には…アンナとかアリサとかイヴとかかな、もう少し長くても良いのか?エレノアの子供にはエリカとかエストレアとかエルシノアとかか?他にも候補を出しておかないとマズイかな」

「イズミ、今までで一番困った顔をしてるぞ?」

ベリアがニヤニヤしながらイズミの独り言を聞いている。

「そりゃ名前ってのは大事だからな、悩みもするし顔にも出てくるさ。てか、女神様からの啓示の対応って、アレで終わりなのか?」

「さぁ…分からない」

「その辺は女神様からアプローチが有るのか無いのか」

「どうなんだろう」

そんな話をしながら、マスタングは平原をまったりと走って行くのだった。


一方その頃。

「もう完成したのね、思ったより早かったじゃない」

「叔母様、美容クリームのレシピがベースなのでスムーズに進められただけですわ」

日焼け止めクリームの試作品を手にしたグラテミアは、1枚の手紙と共に転送魔法で南国に拠点構える同族の元へ送る。

「ベースが一緒なら、他のクリームも作りやすいのかしら?」

「材料次第ではありますが、半月もあれば試作品を作る段取りくらいは出来るかと」

フラウリアの回答を聞いたグラテミアは、机に置かれたレシピ本を開く。

「実は手元にもう2種類、クリームのレシピがあるのだけれど」

「…帰ってもよろしいでしょうか?」

「それは駄目よ、このレシピからが本番と考えるべきだわ」

嫌そうな表情を隠そうともせず、フラウリアはレシピ本に目を通す。

「シミ・そばかす消しクリーム、ニキビ治療クリームですか」

「これが作れれば、大抵の肌トラブルに対応出来るようになる。そうなれば」

「世の女性を味方に付ける可能性が高まり、安定した収益の確保も出来ると」

「そんな単純な話にはならないけど、良い交渉材料にはなるわね」

「分かりました、取り急ぎ材料の確保を始めます」

「頼むわね」

必要な材料を確認したフラウリアが部屋から出ると、レシピ本に新たな項目が追加されたと表示される。

「何かしら…シャンプー、トリートメント?」

新たな美容商品のレシピを読んだグラテミアは、閉じた扉を見ながら静かに微笑む。
フラウリアの仕事は、暫く落ち着く事は無さそうである。
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