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第二十三章 独自の調査
第四百話 再びのヒュミトール
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オブリンドを出発して7日目、イズミ達は地平線上にヒュミトールのある火山地帯を捉えた。
行きよりも帰りの方が早いのは、イズミの寄り道が少なかったからである。
来た時のルートを微妙にずらしつつ、別の町に入る度にコーヒー豆を探すイズミだったが、遂に入手する事は叶わなかった。
「ヒュミトールが久々に感じるな」
「だな。酒屋に行きたい」
ベリアは購入していた酒をハイペースに飲んでいたのか、残りがあまり無いらしい。
「その前に冒険者ギルドに話をするのが先か?」
「そうだな、それだけが面倒くさい。今の所はヒュミトールに暫く居る予定で良いよな」
「オブリビアのダンジョン疑惑とか、スタンピード問題によるけどな」
一応フラウリアにヒュミトール近辺にまで来ていると魔法通信で伝えておく。
事前連絡は大切なのだ。
「ヒュミトール到着はいつ頃になりますか?」
「そうですね、明日の昼頃には到着するかと」
遠くに見えると言っても、まだ距離はあるのだ。
まったりと移動して今日は夜営である。
ヒュミトールに近付くにつれ馬車や冒険者の姿も増えてきたので、都市に近付いてきたと言う実感が湧いてくる。
日が暮れ始め夜営の準備をする者達とは距離を取りつつ、自分達も夜営の準備を始める。
下手に絡まれるのも面倒だし、目立つのは避けたいのだ。
「ヒュミトールに着いたら、今度こそ温泉に入りたい」
「温泉って、そんなに良いもんなのか?」
「俺は好きだ。適温の湯に全身を任せてまったりしてるだけでも、身体に蓄積した疲労が取れるってもんだ」
「イズミはそもそも、体力がそんなに無いだろ。運動不足だし」
「すぐ筋肉痛になるのは確かだ。ヒュミトールで身体を鍛え直す必要があるかもしれないな」
「それが良い!アタイがスケジュール組むよ」
「それは勘弁してくれ、身体が持たない」
「大丈夫だって、ちゃんと段階を踏むからさ」
満面の笑みでゴリ押してくるベアに、イズミは久しく感じていなかった感覚、身の危険を感じていた。
翌日。
フラウリアに連絡した時間帯である昼頃には、ヒュミトールに到着した。
大きな門の前までマスタングが進むと、門番と共にエレノアの姿があった。
「エレノアさん、お久しぶりです」
「久しぶり!旅先でも頑張ってたらしいね…彼等はラミア族の賓客だから、後は私達が」
エレノアが門番に話をつけると、無事にヒュミトールへ入る事が出来た。
一度門の内側で停車すると、エレノアには後部座席に座ってもらう。
「エレノアさん、屋敷へ行く途中で冒険者ギルドに顔を出しますね。ベリアの到着連絡が必要でして」
「ベリアはAランクだったね、分かった」
エレノアの案内で冒険者ギルドの建物前にマスタングを付けると、ベリアは1人気が重そうに建物へと入っていった。
馬車置き場にて待機していると、エレノアから話を切り出された。
「イズミ、キマイラ討伐の話が国を跨いで冒険者ギルド全体に広まってるのは聞いた?」
「いや。俺は冒険者ギルドに所属してないからな」
「そっか。でさ、これはマンシュタインから聞いた話なんだけど…ベリアをSランクに上げる議論が出てるって」
「それは冒険者としては名誉な事だろ、夢と憧れのSランクだろ?」
イズミは気楽に受け答えをするが、エレノアはため息をついて話を続けた。
「Sランクになると貴族や王族から直接依頼が来る事も多い…いえ直接の依頼がメインにもなる」
「それはつまり」
「ベリアがSランクになれば、貴族や王族はベリアを指定で依頼をするし、そうすれば相棒であるイズミも巻き込めると踏んでる。この議論の発起人はベルトルード公爵だけど、背後にはハルハンディアの元老院がいるし、隣国のジェヴェドール王国にとっても悪い話では無い」
「断るのは、難しくなりそうだな…」
イズミはラムネを実体化すると、エレノアにも渡して一口飲む。
「オブリビアの一件で教会にも目をつけられてるのだが」
「それも聞いてる。教会は王族とは別の意味で厄介だから、気を付けてね…それはそうと」
エレノアは後部座席から顔を覗かせ、ジッとイズミの横顔を見つめる。
「アタシ達の子供の名前、案はあるのかしら?」
「勿論、それは屋敷に到着してから相談するとしましょう…ほら、ベリアも戻って来ましたし」
マスタングに近付いて来たベリアの動きが、非常に硬くぎこちない。
「どうした?」
「なんか…アタイの冒険者ランクが上がるかも知れないって」
助手席に座ったのを確認したイズミは、ゆっくりとマスタングのアクセルを踏む。
「あのキマイラを討伐した訳だし、そんな話があっても可笑しくは無いか。取り敢えずグラテミアさんの屋敷に到着してから、諸々考えるとしましょうかね」
マスタングはヒュミトールの道を徐行で走行し、グラテミアの屋敷の前で停まる。
門が開くと従者が馬車置き場の用意が出来てると教えてくれたので、指示された場所へと向かった。
行きよりも帰りの方が早いのは、イズミの寄り道が少なかったからである。
来た時のルートを微妙にずらしつつ、別の町に入る度にコーヒー豆を探すイズミだったが、遂に入手する事は叶わなかった。
「ヒュミトールが久々に感じるな」
「だな。酒屋に行きたい」
ベリアは購入していた酒をハイペースに飲んでいたのか、残りがあまり無いらしい。
「その前に冒険者ギルドに話をするのが先か?」
「そうだな、それだけが面倒くさい。今の所はヒュミトールに暫く居る予定で良いよな」
「オブリビアのダンジョン疑惑とか、スタンピード問題によるけどな」
一応フラウリアにヒュミトール近辺にまで来ていると魔法通信で伝えておく。
事前連絡は大切なのだ。
「ヒュミトール到着はいつ頃になりますか?」
「そうですね、明日の昼頃には到着するかと」
遠くに見えると言っても、まだ距離はあるのだ。
まったりと移動して今日は夜営である。
ヒュミトールに近付くにつれ馬車や冒険者の姿も増えてきたので、都市に近付いてきたと言う実感が湧いてくる。
日が暮れ始め夜営の準備をする者達とは距離を取りつつ、自分達も夜営の準備を始める。
下手に絡まれるのも面倒だし、目立つのは避けたいのだ。
「ヒュミトールに着いたら、今度こそ温泉に入りたい」
「温泉って、そんなに良いもんなのか?」
「俺は好きだ。適温の湯に全身を任せてまったりしてるだけでも、身体に蓄積した疲労が取れるってもんだ」
「イズミはそもそも、体力がそんなに無いだろ。運動不足だし」
「すぐ筋肉痛になるのは確かだ。ヒュミトールで身体を鍛え直す必要があるかもしれないな」
「それが良い!アタイがスケジュール組むよ」
「それは勘弁してくれ、身体が持たない」
「大丈夫だって、ちゃんと段階を踏むからさ」
満面の笑みでゴリ押してくるベアに、イズミは久しく感じていなかった感覚、身の危険を感じていた。
翌日。
フラウリアに連絡した時間帯である昼頃には、ヒュミトールに到着した。
大きな門の前までマスタングが進むと、門番と共にエレノアの姿があった。
「エレノアさん、お久しぶりです」
「久しぶり!旅先でも頑張ってたらしいね…彼等はラミア族の賓客だから、後は私達が」
エレノアが門番に話をつけると、無事にヒュミトールへ入る事が出来た。
一度門の内側で停車すると、エレノアには後部座席に座ってもらう。
「エレノアさん、屋敷へ行く途中で冒険者ギルドに顔を出しますね。ベリアの到着連絡が必要でして」
「ベリアはAランクだったね、分かった」
エレノアの案内で冒険者ギルドの建物前にマスタングを付けると、ベリアは1人気が重そうに建物へと入っていった。
馬車置き場にて待機していると、エレノアから話を切り出された。
「イズミ、キマイラ討伐の話が国を跨いで冒険者ギルド全体に広まってるのは聞いた?」
「いや。俺は冒険者ギルドに所属してないからな」
「そっか。でさ、これはマンシュタインから聞いた話なんだけど…ベリアをSランクに上げる議論が出てるって」
「それは冒険者としては名誉な事だろ、夢と憧れのSランクだろ?」
イズミは気楽に受け答えをするが、エレノアはため息をついて話を続けた。
「Sランクになると貴族や王族から直接依頼が来る事も多い…いえ直接の依頼がメインにもなる」
「それはつまり」
「ベリアがSランクになれば、貴族や王族はベリアを指定で依頼をするし、そうすれば相棒であるイズミも巻き込めると踏んでる。この議論の発起人はベルトルード公爵だけど、背後にはハルハンディアの元老院がいるし、隣国のジェヴェドール王国にとっても悪い話では無い」
「断るのは、難しくなりそうだな…」
イズミはラムネを実体化すると、エレノアにも渡して一口飲む。
「オブリビアの一件で教会にも目をつけられてるのだが」
「それも聞いてる。教会は王族とは別の意味で厄介だから、気を付けてね…それはそうと」
エレノアは後部座席から顔を覗かせ、ジッとイズミの横顔を見つめる。
「アタシ達の子供の名前、案はあるのかしら?」
「勿論、それは屋敷に到着してから相談するとしましょう…ほら、ベリアも戻って来ましたし」
マスタングに近付いて来たベリアの動きが、非常に硬くぎこちない。
「どうした?」
「なんか…アタイの冒険者ランクが上がるかも知れないって」
助手席に座ったのを確認したイズミは、ゆっくりとマスタングのアクセルを踏む。
「あのキマイラを討伐した訳だし、そんな話があっても可笑しくは無いか。取り敢えずグラテミアさんの屋敷に到着してから、諸々考えるとしましょうかね」
マスタングはヒュミトールの道を徐行で走行し、グラテミアの屋敷の前で停まる。
門が開くと従者が馬車置き場の用意が出来てると教えてくれたので、指示された場所へと向かった。
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