456 / 625
第二十五章 オブリビアダンジョン
第四百四十四話 特別ゲスト来たる
しおりを挟む
「来ちゃいました。ギムレットを頂こうかしら」
それは光の女神だった。
部屋にいる全員が言葉を失い、目の前に広がる状況を理解しようと努めているが、誰も理解しきれていない。
「…言ったろう、手を打ったと」
女神の膝の上で丸まっている野良猫が、欠伸をしながらイズミに言った。
「もう少し丁寧と言うか、それとなくな動きだと思っていたんだ。ゴリ押しとは」
「1番手っ取り早いだろ。ケーキ以外のお菓子をくれ」
野良猫の存在に気付いたテレジア達が、我に返ったのか声を荒げた。
「あぁ!昨日の精霊様だ」
「御子諸君、昨日ぶりだな」
どうやら野良猫と御子達は知り合いではあるようだ。
「どういうご関係で?」
「ええと、昨夜メダルを使った祈りの練習を皆でしていた際に、精霊様がそのお姿でお見えになられまして。聖魔法の特訓をして頂いたのです」
イズミが野良猫に顔を向けると、光の女神に尻尾の付け根を軽く叩かれていた。
「お主らの練度ではオブリビアで少々苦労しそうだったのでな、軽くコツを教えたのだ」
「軽く?」
野良猫の言葉に疑問形で返したのはロレッタだった。
彼女基準では野良猫の特訓が軽くの領域を逸脱していると感じているのかもしれないが、この場ではそれ以上の発言はしなかった。
「御子の皆さんと直接会うのは初めてね。私は…この精霊の保護者みたいなものよ」
光の女神は自らの名を名乗りはしなかったが、その圧倒的な魔力を感じ取った御子達は無意識に悟っていた。
テレジア達は椅子から立ち上がると、綺麗かつ丁寧な礼をする。
「お初お目にかかれて光栄で御座います」
「テレジア、セリーヌ、ロレッタ。そんなに硬くならなくても良いわよ…ここは教会ではありません」
「しかし…」
女神は顔を上げた御子達が身に付けているメダルを見つけると、表情が柔らかくなった。
「イズミ、あのメダルは私の横顔を模したのかしら?」
「元々はジェヴェドール王国に居た時にお世話になったエレナ・ブロズムナード嬢が魔法で作り上げた、女神様の氷像をモデルにしています」
「うーん…出来れば正面からのレイアウトで微笑んでいる方が、ご利益があるように感じませんか?この様なイメージで」
女神はガラス製に見えるペンとインクと羊皮紙を実体化すると、スラスラと女神が思い描くメダルのイメージを描いてイズミに見せた。
非常に緻密に描かれている。
我が道を行く女神様に苦笑しつつ、イズミはメガネをかけてマスタングにイメージ図をスキャンしてもらう。
「確認しました。実体化しますか?」
「よろしく頼む…ベリア、すまないがマスタングから荷物を回収して来てくれないか?礼はカクテルのサービスでどうだ」
「任されよう!」
ベリアは凄まじいスピードで部屋を出ると、全速力でマスタングへと向かって走り出した。
女神が描いたイメージ図をイズミは受け取らず、テレジア達に渡すように頼むと、女神は羊皮紙の空白部分に魔法陣と何かの文字を書いてからテレジアに手渡した。
「イズミ!回収して来た」
「早いな」
「お菓子と、カクテルな!」
目の前に美味しい餌があると、人は限界を超えた能力を発揮出来る事もあると聞いた事があるが、ここで発揮するものなのだろうか。
疑問に感じつつメダルを受け取ると、女神様のチェックが入った。
「どれとれ…流石は我の眷属が拵えただけの事はある、完璧ね」
わざとらしく言葉にした女神は、メダルを3人に直接手渡した。
「ありがとう御座います!有難き幸せ」
「私、今までで1番感動していますわ!」
「温かい…母に抱擁された時の温もりと安らぎに似たものを感じます」
三者三様の感想を述べているが、大切な事がまだ始まっていない。
「ええと皆様、席にお座り下さい」
イズミが皆に落ち着いてもらうと、改めて菓子の用意をする。
ちゃんとこの部屋に居る人数分と野良猫分である。
「この場を作った理由は…忘れちったな、取り敢えずオブリビア調査前のお茶会を始めるとしましょう!お酒は少々お待ちを」
こうして突然のゲストを含めたお茶会が始まった。
皆は用意されたお菓子…イチゴのショートケーキ、マカロン、数種類のクッキー…を真剣な表情で見ていたがベリアと女神は迷わずクッキーに手を伸ばしている。
イズミは全員分の水と紅茶を用意して渡し終えると、カクテル作りに取りかかる。
ジンとライムジュースと、今回はシロップも入れてシェイクする。
ジンは特級品のドワーフ酒、ライムジュースはカクテルセットの物を使い、シロップはヒュミトールの酒屋で見つけた、トロミのある砂糖水で代用した。
アイテムボックスは非常に便利で氷も溶けずに保管が出来るようなので、今後も何かと活用出来そうである。
シェイカーに僅かに残ったギムレットを手の甲に乗せて口へ運び、完成度を確かめる…自分で作るにしては上出来だろう。
「お待たせしました、ギムレットです」
突然シェイクを始めたイズミに驚きつつも、テレジア達は女神様とベリアに渡されるカクテルから目が離せずにいた。
それは光の女神だった。
部屋にいる全員が言葉を失い、目の前に広がる状況を理解しようと努めているが、誰も理解しきれていない。
「…言ったろう、手を打ったと」
女神の膝の上で丸まっている野良猫が、欠伸をしながらイズミに言った。
「もう少し丁寧と言うか、それとなくな動きだと思っていたんだ。ゴリ押しとは」
「1番手っ取り早いだろ。ケーキ以外のお菓子をくれ」
野良猫の存在に気付いたテレジア達が、我に返ったのか声を荒げた。
「あぁ!昨日の精霊様だ」
「御子諸君、昨日ぶりだな」
どうやら野良猫と御子達は知り合いではあるようだ。
「どういうご関係で?」
「ええと、昨夜メダルを使った祈りの練習を皆でしていた際に、精霊様がそのお姿でお見えになられまして。聖魔法の特訓をして頂いたのです」
イズミが野良猫に顔を向けると、光の女神に尻尾の付け根を軽く叩かれていた。
「お主らの練度ではオブリビアで少々苦労しそうだったのでな、軽くコツを教えたのだ」
「軽く?」
野良猫の言葉に疑問形で返したのはロレッタだった。
彼女基準では野良猫の特訓が軽くの領域を逸脱していると感じているのかもしれないが、この場ではそれ以上の発言はしなかった。
「御子の皆さんと直接会うのは初めてね。私は…この精霊の保護者みたいなものよ」
光の女神は自らの名を名乗りはしなかったが、その圧倒的な魔力を感じ取った御子達は無意識に悟っていた。
テレジア達は椅子から立ち上がると、綺麗かつ丁寧な礼をする。
「お初お目にかかれて光栄で御座います」
「テレジア、セリーヌ、ロレッタ。そんなに硬くならなくても良いわよ…ここは教会ではありません」
「しかし…」
女神は顔を上げた御子達が身に付けているメダルを見つけると、表情が柔らかくなった。
「イズミ、あのメダルは私の横顔を模したのかしら?」
「元々はジェヴェドール王国に居た時にお世話になったエレナ・ブロズムナード嬢が魔法で作り上げた、女神様の氷像をモデルにしています」
「うーん…出来れば正面からのレイアウトで微笑んでいる方が、ご利益があるように感じませんか?この様なイメージで」
女神はガラス製に見えるペンとインクと羊皮紙を実体化すると、スラスラと女神が思い描くメダルのイメージを描いてイズミに見せた。
非常に緻密に描かれている。
我が道を行く女神様に苦笑しつつ、イズミはメガネをかけてマスタングにイメージ図をスキャンしてもらう。
「確認しました。実体化しますか?」
「よろしく頼む…ベリア、すまないがマスタングから荷物を回収して来てくれないか?礼はカクテルのサービスでどうだ」
「任されよう!」
ベリアは凄まじいスピードで部屋を出ると、全速力でマスタングへと向かって走り出した。
女神が描いたイメージ図をイズミは受け取らず、テレジア達に渡すように頼むと、女神は羊皮紙の空白部分に魔法陣と何かの文字を書いてからテレジアに手渡した。
「イズミ!回収して来た」
「早いな」
「お菓子と、カクテルな!」
目の前に美味しい餌があると、人は限界を超えた能力を発揮出来る事もあると聞いた事があるが、ここで発揮するものなのだろうか。
疑問に感じつつメダルを受け取ると、女神様のチェックが入った。
「どれとれ…流石は我の眷属が拵えただけの事はある、完璧ね」
わざとらしく言葉にした女神は、メダルを3人に直接手渡した。
「ありがとう御座います!有難き幸せ」
「私、今までで1番感動していますわ!」
「温かい…母に抱擁された時の温もりと安らぎに似たものを感じます」
三者三様の感想を述べているが、大切な事がまだ始まっていない。
「ええと皆様、席にお座り下さい」
イズミが皆に落ち着いてもらうと、改めて菓子の用意をする。
ちゃんとこの部屋に居る人数分と野良猫分である。
「この場を作った理由は…忘れちったな、取り敢えずオブリビア調査前のお茶会を始めるとしましょう!お酒は少々お待ちを」
こうして突然のゲストを含めたお茶会が始まった。
皆は用意されたお菓子…イチゴのショートケーキ、マカロン、数種類のクッキー…を真剣な表情で見ていたがベリアと女神は迷わずクッキーに手を伸ばしている。
イズミは全員分の水と紅茶を用意して渡し終えると、カクテル作りに取りかかる。
ジンとライムジュースと、今回はシロップも入れてシェイクする。
ジンは特級品のドワーフ酒、ライムジュースはカクテルセットの物を使い、シロップはヒュミトールの酒屋で見つけた、トロミのある砂糖水で代用した。
アイテムボックスは非常に便利で氷も溶けずに保管が出来るようなので、今後も何かと活用出来そうである。
シェイカーに僅かに残ったギムレットを手の甲に乗せて口へ運び、完成度を確かめる…自分で作るにしては上出来だろう。
「お待たせしました、ギムレットです」
突然シェイクを始めたイズミに驚きつつも、テレジア達は女神様とベリアに渡されるカクテルから目が離せずにいた。
31
あなたにおすすめの小説
彼に勇者は似合わない!
プリン伯爵
ファンタジー
連日の残業で終電帰りのサラリーマン、神無月無名21歳。
ある夜、突然足元の光に包まれ異世界へと召喚されてしまう。
そこは豪華絢爛な王宮。
第一王女ラクティスは、彼を含む男女5人を「勇者」として召喚したと告げる。
元の世界では時間がほぼ止まっているという説明を受け、半ば強制的に魔国との戦いに協力することになった無名たち。
発現した無名の紋章は歴代でも最高クラスを示し万能の勇者と称され、周囲を驚愕させる。
元の世界への帰還を条件に口頭で協力を約束する勇者たちだが、無名だけは王家に対し警戒心を抱き、王に元の世界への帰還とこの世界で得た力を持ち帰ることを書面で約束させる。
協調性がないと周囲から思われながらも、己の最適解を優先する無名は、果たして他の勇者たちと協力し、魔国を打ち倒して元の世界へ帰ることができるのか。
それぞれの思惑が交錯する中、勇者たちの戦いが幕を開ける。
これは社会不適合者が歩む成長の物語。
不死身のボッカ
暁丸
ファンタジー
逓信(ていしん)ギルドに所属する甲殻人ボッカ。歩荷(ぼっか=運搬人)だからボッカと素性を隠す特急便の運搬人。
小柄な身体に見合わぬ怪力、疾風のスピードと疲れ知らずのスタミナで、野を越え山越え荷物を運ぶ。
逓信ギルドの運搬人になったのは、危険な迷宮には入りたく無いから。面倒と危険を避けてすんなり仕事を終わらせたいのに、時にギルド支部長に命じられ行きたくも無い魔獣狩りの運搬人として駆り出される。
割とチートな身体能力を持ちながら、戦闘能力はからっきしで過剰な期待はされたく無い。こんな殺伐とした異世界生活なんかとっとと終わらせて眠るように死にたいと願う、そんな<不死身の歩荷>のお話。
※種族名とか用語は前作と共通にしてますが、別の世界の物語です。世界観も若干違います。
※「歩荷」とは一般的にいう「ポーター」のことですが、長距離運送も兼任しています。
※作者が設定厨なので、時々本筋に関係ない解説回が入ります。
※第16回ファンタジー小説大賞にエントリーしてみました。
僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~
めでめで汰
ファンタジー
バッファーの少年カイトのバフスキルは「ステータス欄の中に入って直接数字を動かす」というもの。
しかし、その能力を信じなかった仲間からカイトは追放され迷宮に置き去りにされる。
そこで出会ったLUK(幸運)値の高い少女ハルと共にカイトは無事迷宮から生還。
その後、カイトはハルの両親を探すため地下迷宮の奥へと挑むことを決意する。
(スライム、もふもふ出てきます。女の子に囲まれるけどメインヒロインは一人です。「ざまぁ」もしっかりあります)
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
社畜の異世界再出発
U65
ファンタジー
社畜、気づけば異世界の赤ちゃんでした――!?
ブラック企業に心身を削られ、人生リタイアした社畜が目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界。
前世では死ぬほど働いた。今度は、笑って生きたい。
けれどこの世界、穏やかに生きるには……ちょっと強くなる必要があるらしい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる