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第二十五章 オブリビアダンジョン
第四百四十六話 事実に殴られたかの如く
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お茶会もお開きとなり食器類を片付けていると、女神は御子達と少し会話をした後に野良猫と共に帰っていった。
完全に消え去ると部屋の扉が開かれ、シュナイダーが姿を見せる。
「そうか…帰られたから効果が切れたのか」
「何があったのか…ご説明いただきますよ」
「特別なゲストをお迎えして、ささやかなお茶会をしていただけですよ」
イズミは椅子に座ると、カクテル作りで余ったライムの汁を水に混ぜて飲む。
これはこれで良い、比率上薄いが爽やかな味わいである。
「この魔力の満ち方は尋常ではありません、正に異常事態です。お答え頂けないのであれば教会への反逆行為とみなし、貴方の身柄を拘束しあらゆる手段を用いてでも答えて頂く事にします」
「それが女神様のお導きか?」
「そうです。教会や国への反逆行為など、あってはなりませんので」
自信満々に答えたシュナイダーを、イズミは敵を殺す時の様な鋭い目で睨みつけた。
「女神ではなく、教会を信じている。か…確かにそのようだな」
小さく呟いたイズミは、ゆっくりと椅子から立ち上がる。
「そんなだから招待状を貰えなかったんだよ」
「なにを!?」
シュナイダーの顔が真っ赤になり、今にもイズミに飛びかかって来そうである。
「シュナイダー様。私達は先程、女神様より『直接』祝福を授かりましたわ」
そう告白したのはセリーヌだった。
勝ち誇ったような笑みを浮かべ、シュナイダーの前に立ち言葉を続ける。
「女神様がお認めになられた美酒で盃を交わし、女神様が私達の目の前で描かれた図に沿って作られたメダルを、証拠として授かっておりますわ」
セリーヌの言葉を理解出来ないのか、シュナイダーは口をパクパクさせてはいるものの、言葉が出て来ていない。
メダルを目の前に出され、いよいよ理解の限界に到達したのかシュナイダーは尻もちをついてしまった。
「テレジア、頂いた羊皮紙を見せて差し上げましょう」
「分かりました」
テレジアが丁寧に仕舞っていた羊皮紙を取り出し、シュナイダーには渡さずに見せつける。
シュナイダーの視線はメダル用のレイアウトではなく、余白に描かれた魔法陣と文字に向けられている。
「信じられない…こんな事、信じられる訳が無い!」
完全に容量オーバーのようで、シュナイダーの表情がコロコロと変化しており、むしろ此方が心配になる程だ。
やがて燃え尽きたかのように、力無く動かなくなった。
「さて、帰るとしましょう。オブリビア調査は明日からですし、しっかりと休んでおくのが1番です」
イズミとベリアはテレジア達と別れの挨拶を交わしてから、借りている宿屋へ向かう。
「イズミ。アタイはほぼ確定でSランクになるだろうって、野良猫さんに言われたよ」
「そうか、お墨付きか。退屈しない人生を送れそうだ」
「他人事みたいに言うなよ、アタイはイズミとの旅から離脱するつもりはないからな。面倒事にも付き合ってもらうぞ」
「それが女神サイドの意向なんだろうよ。俺達は皆、女神様の掌の上で踊ってるのさ」
「…言えてるかも?」
「なら、派手に踊った方が楽しいだろ。それに、ベリアが居てくれると俺も助かる」
宿屋に到着したイズミは食事処で夕食を食べようとしたが、ベリアはお菓子で満足したらしく夜食を買って部屋に戻って行った。
その日の夜の事。
日が完全に沈み、光魔法で室内を照らしたテレジア達が夜の祈りを捧げていると、野良猫が姿を見せた。
「精霊様!」
「お茶会ぶりだな。女神様がコレを」
野良猫が何処からか実体化させたのは、メダル用の革紐だった。
「長い方が女神様より授かったメダルに使うようで、首掛けを想定しており日常使いに適しておる。横顔のメダルは短い方の革紐で、祈りを捧げる時に手に持っておくのが良いだろう…オブリビアの調査が終わったら、各々の気に入った紐に交換すると良いぞ」
「分かりました、ありがとうございます」
「それとな、今後はその横顔のメダルが作られる事は原則として無いだろう、そう指示を出した…この世界でお主ら3人しか持っておらん特別なメダルになったな。だが、もしも同じメダルを持つ者が現れたら」
「現れたら?」
「それは女神様からの緊急メッセージだと思う事だ。そのメダルを受け取ったら、速やかに女神様へ祈りを捧げ対処に動くのだ」
野良猫の助言を聞いた3人は、事の重大さに思わず息を飲む。
「教会の動きが遅いと思ったら、あの気楽者に取り次ぐつもりで祈りを捧げれば、我が話をしてやろう」
「気楽…者ですか?」
「現状あの特別な酒と菓子の唯一の出所であり、実はある女神様の所有物だ。奴は気付いておらんようだがな…この事は秘密だぞ?お主らは程良い交友関係に留めておくのが良いだろう、オブリビアでそれとなく恩を売っておけ。奴は義理堅い男だ、存命ならば必ず頼みに応えてくれよう」
3人は顔を見合わせてから、小さく頷いた。
「よろしい…して、聖魔法の特訓もしておくか?菓子と酒をを楽しめて機嫌が良いのだ、応用術を教えてやってもよいぞ」
そこから数時間、野良猫の聖魔法のスパルタ特訓は続いた。
後の時代において、あるハーフエルフの御子が書き残した回顧録にこう記している。
『野良猫の姿をした光の女神の眷属たる精霊は、稀に御子の前に姿を現し聖魔法の使い方を教える事がある。その特訓を乗り越えた者は大成を約束されたようなものだが、1人では心が挫けてしまうだろう。思い出すだけでも身震いがしてしまうほどに、非常に短期間かつ高負荷な特訓なのだ』
完全に消え去ると部屋の扉が開かれ、シュナイダーが姿を見せる。
「そうか…帰られたから効果が切れたのか」
「何があったのか…ご説明いただきますよ」
「特別なゲストをお迎えして、ささやかなお茶会をしていただけですよ」
イズミは椅子に座ると、カクテル作りで余ったライムの汁を水に混ぜて飲む。
これはこれで良い、比率上薄いが爽やかな味わいである。
「この魔力の満ち方は尋常ではありません、正に異常事態です。お答え頂けないのであれば教会への反逆行為とみなし、貴方の身柄を拘束しあらゆる手段を用いてでも答えて頂く事にします」
「それが女神様のお導きか?」
「そうです。教会や国への反逆行為など、あってはなりませんので」
自信満々に答えたシュナイダーを、イズミは敵を殺す時の様な鋭い目で睨みつけた。
「女神ではなく、教会を信じている。か…確かにそのようだな」
小さく呟いたイズミは、ゆっくりと椅子から立ち上がる。
「そんなだから招待状を貰えなかったんだよ」
「なにを!?」
シュナイダーの顔が真っ赤になり、今にもイズミに飛びかかって来そうである。
「シュナイダー様。私達は先程、女神様より『直接』祝福を授かりましたわ」
そう告白したのはセリーヌだった。
勝ち誇ったような笑みを浮かべ、シュナイダーの前に立ち言葉を続ける。
「女神様がお認めになられた美酒で盃を交わし、女神様が私達の目の前で描かれた図に沿って作られたメダルを、証拠として授かっておりますわ」
セリーヌの言葉を理解出来ないのか、シュナイダーは口をパクパクさせてはいるものの、言葉が出て来ていない。
メダルを目の前に出され、いよいよ理解の限界に到達したのかシュナイダーは尻もちをついてしまった。
「テレジア、頂いた羊皮紙を見せて差し上げましょう」
「分かりました」
テレジアが丁寧に仕舞っていた羊皮紙を取り出し、シュナイダーには渡さずに見せつける。
シュナイダーの視線はメダル用のレイアウトではなく、余白に描かれた魔法陣と文字に向けられている。
「信じられない…こんな事、信じられる訳が無い!」
完全に容量オーバーのようで、シュナイダーの表情がコロコロと変化しており、むしろ此方が心配になる程だ。
やがて燃え尽きたかのように、力無く動かなくなった。
「さて、帰るとしましょう。オブリビア調査は明日からですし、しっかりと休んでおくのが1番です」
イズミとベリアはテレジア達と別れの挨拶を交わしてから、借りている宿屋へ向かう。
「イズミ。アタイはほぼ確定でSランクになるだろうって、野良猫さんに言われたよ」
「そうか、お墨付きか。退屈しない人生を送れそうだ」
「他人事みたいに言うなよ、アタイはイズミとの旅から離脱するつもりはないからな。面倒事にも付き合ってもらうぞ」
「それが女神サイドの意向なんだろうよ。俺達は皆、女神様の掌の上で踊ってるのさ」
「…言えてるかも?」
「なら、派手に踊った方が楽しいだろ。それに、ベリアが居てくれると俺も助かる」
宿屋に到着したイズミは食事処で夕食を食べようとしたが、ベリアはお菓子で満足したらしく夜食を買って部屋に戻って行った。
その日の夜の事。
日が完全に沈み、光魔法で室内を照らしたテレジア達が夜の祈りを捧げていると、野良猫が姿を見せた。
「精霊様!」
「お茶会ぶりだな。女神様がコレを」
野良猫が何処からか実体化させたのは、メダル用の革紐だった。
「長い方が女神様より授かったメダルに使うようで、首掛けを想定しており日常使いに適しておる。横顔のメダルは短い方の革紐で、祈りを捧げる時に手に持っておくのが良いだろう…オブリビアの調査が終わったら、各々の気に入った紐に交換すると良いぞ」
「分かりました、ありがとうございます」
「それとな、今後はその横顔のメダルが作られる事は原則として無いだろう、そう指示を出した…この世界でお主ら3人しか持っておらん特別なメダルになったな。だが、もしも同じメダルを持つ者が現れたら」
「現れたら?」
「それは女神様からの緊急メッセージだと思う事だ。そのメダルを受け取ったら、速やかに女神様へ祈りを捧げ対処に動くのだ」
野良猫の助言を聞いた3人は、事の重大さに思わず息を飲む。
「教会の動きが遅いと思ったら、あの気楽者に取り次ぐつもりで祈りを捧げれば、我が話をしてやろう」
「気楽…者ですか?」
「現状あの特別な酒と菓子の唯一の出所であり、実はある女神様の所有物だ。奴は気付いておらんようだがな…この事は秘密だぞ?お主らは程良い交友関係に留めておくのが良いだろう、オブリビアでそれとなく恩を売っておけ。奴は義理堅い男だ、存命ならば必ず頼みに応えてくれよう」
3人は顔を見合わせてから、小さく頷いた。
「よろしい…して、聖魔法の特訓もしておくか?菓子と酒をを楽しめて機嫌が良いのだ、応用術を教えてやってもよいぞ」
そこから数時間、野良猫の聖魔法のスパルタ特訓は続いた。
後の時代において、あるハーフエルフの御子が書き残した回顧録にこう記している。
『野良猫の姿をした光の女神の眷属たる精霊は、稀に御子の前に姿を現し聖魔法の使い方を教える事がある。その特訓を乗り越えた者は大成を約束されたようなものだが、1人では心が挫けてしまうだろう。思い出すだけでも身震いがしてしまうほどに、非常に短期間かつ高負荷な特訓なのだ』
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