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南ノ神 朱雀
壱,空ノ星宿
しおりを挟む「………此処はどこなのっ?!」
私たちが南に歩き続けてはや一ヶ月以上たっていた。
青藍の所に行ったのは春の半ばほどだったからもう夏にさしかかっている。
そして私たちは青藍に教えてもらった朱雀の住処についた……はずだった。
「なんで?!私たち、青藍に教えてもらったとおりきたでしょ?!ついたのよね、千凪?」
「そ、そうだよ…」
私の物凄い剣幕に千凪が驚いたように言った。
それでも私の鼻息は荒い。
「じゃあなんでここはさら地なのよーっ!!!!」
私は点に向かって叫んだ。
そう、ついたのだ。しかし、そこにはなにも無かったのだった。
それで私は憤慨しているわけだ。
「ま、まあまあ落ち着こう、千幸ちゃん!怒ってもなにもならないよー!」
千雪は止めようと、きゃんきゃんいってる私の両腕を抱えて言った。
私はそのまま脱力し千雪に体重を預けた。
「わかったわよぅ…」
ぼそっと言うと千雪は手を離し私を解放した。
私はむっとして空を見上げた。
「朱雀ーっ!!いるんだったらでてきなさーいっ!!」
ほとんど投げやりな、鬱憤ばらしだった。
しかし……
「おう?よんだか?俺ならここにいるぜ?」
突然、ここにいる誰でもない人の声が。
さらにばっ、と人影な降ってきた。
「俺を呼んだのは誰だ?」
朱雀だ。まさか呼んで来るとは。
朱雀は真っ赤な髪を無造作に結い上げ、上半身裸、腰に布を巻いているだけで、小柄ながら筋肉質な体つきだ。黄色の瞳は鋭く、男前な顔つきをしている。
朱雀はにかっと笑った。
「お前らか、千影とやらが言っていた奴は。俺は朱雀の朱空(しゅら)だ。お前らは…女二人と男一人、あと犬神、っと。久しぶりだな!会いたかったぜ」
朱空は私たちを数えてから千雨に向かって歩み寄った。
あれ、女二人って言った…?
ちらっと千雪を見ると目が死んでいた。
あ、精神破壊されたね。
近づいてきた朱空に千雨は犬歯を見せて笑った。
「本当に久しいな、朱空。またやるか?」
「へっ、神籍剥奪されたおめーじゃ俺に勝てねーよ。出直しな!」
「ほう、言うじゃないか。負けたら酒奢れ」
「そこまで言うならやってやろーじゃねーか。負けても知らんからな!」
はいはいやめましょ。時間少ないよ、はやくしよう。
「はい、やめましょー!朱空、こっち時間ないからよろしくねーあ、あとこいつ男!」
千凪がするりと割り込み、笑顔でさらりと言った。ついでに千雪が項垂れる。
朱空はぽかんと千雪を見ていたが、大声で笑い始めた。
「ぐはははっ!!お前男なのかよ!そんなにちびっこくって細くて髪が長けりゃ女に見えるぜ!」
「…あなたにちびって言われる筋合いないし、千雨だって髪ながいし。」
千雪は拗ねたように言った。
朱空はぜいぜい笑っていたが落ち着かせるとふいにこっちを見た。
「さて、用があるんだってな。ようこそ、“赫ノ星宿”(あかのほしやど)へ!」
「……え?」
思わず口から声がもれた。私だったかもしれないし、もしかしたら全員かもしれない。
しかし、そんなのどこにもない…?
朱空は首を傾げた。
「あるだろ?」
「何処に?」
私が聞き返す。
「上に」
「へ?」
私が上を見上げると…なんかういてるっ?!
「これが“赫ノ星宿”」
空には、赤い逆三角形の物体が。これが星宿だそう。
「おー久しぶりに見たけど変わんないねー無骨さ!」
千凪が見上げながら言う。
それにうんうんと頷く千雪。
千雨にいたってはこちらを見てにやにやしている。
私だけが知らなかったんですねはいさっさと教えてよ!!
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