上 下
1 / 1

恨み晴らします2(天罰) ― 完結編 ―

しおりを挟む
ー 恨み晴らします1(屈辱)の文章末 ー  
 
 あっという間に時が過ぎ、土曜日となった。今日も両親とも早朝から勤めに出ていて、なぜか早樹が場の空気を読んだのか、ソワソワしている。
「早樹、部活行ってくるね」
「お姉ちゃん頑張って、上手くいくといいね」
 いつもはつらい練習も、今日は終えるのを早く感じられた。後片付けを済ませるといよいよだ。早樹の心臓の高鳴りが聞こえてきそうです。
「もし行ってもいなかったらどうしよう。それより告白でも何でもなかったら」
 余計な心配が友梨の気持ちを押しつぶそうするが、勇気をもって指定された体育館の裏に向かった。
 恐る恐る校舎角から覗き込むと、確かに天馬がそこにはいた。不安を感じながらも緊張した面持ちで近づいて行く。
「やあ、金城さん。本当に来てくれたんだね」
「八神先輩、いつも見ていました。話すのは初めてだけど」
「ありがとう、じゃあズバリ言うね、俺と付き合ってほしんだけど」
「えっ、何て?」
 友梨の喜びが頂点に達した。夢じゃないか、今すぐ大声で叫びたい気持ちだ。
「あっ、今のうちに言っとくけど、俺には2人の彼女がいるんだ。だから金城さんが3人目。それでよければ付き合ってくんない?」
 友梨は耳を疑った。先ほど以上の驚きだ。
「この人、正気なの?」
「まあ今すぐ返事くれなくてOK。そんなに急がないから。明日の日曜日にこの場所で。よく考えろよ、俺と付き合えるなんて幸せ者だぞ」
 そう言うと、天馬は去って行った。友梨には何が起きているのか、頭が爆発しそうだ。 
  

ー 恨み晴らします2(天罰) ー

 早樹は、部室で待っててくれてる結月のところに飛んでいった。
「ちょっと結月聞いて~!」
 ことの全てを打ち明けると、さすがの結月も怒り心頭だ。
「何それ、完全なクズじゃない。絶対に許せない。思い知らせてやろう」
「どうやって?」
「そうりゃそうね、力じゃ勝てるわけないし」
「このことネットに上げるのってどう?」
「そんなのシラを切られたらおしまいだし、下手すりゃ名誉毀損で訴えられちゃう」
「まあじっくり考えようか」
 とにかくこんなばかげた話は、他人は決して話せない。

「ただいま、って誰もいないか?」
「何で私がいるよ」
 早樹が迎えてくれた。でもそのときなぜか、友梨は小学生の早樹に打ち明けていた。
「へえ、中学生って大変ね。まあ変な男に捕まっちゃったと思って」
「何生意気言ってるの」
 それでも早樹には素直に話すことが出来るほど、心を許せる相手だ。
「あっいい考えがある!」
 早樹がスマホで検索した。
「お姉ちゃんも探してみて、これ」
 
 そこには、

 # 恨み買います

の文字がたくさん出ていた。

「テレビでやってたけど、人の恨みを晴らしてくれる代行屋がいるんだって」
「へえ、そんなのあるんだ。でも恐そう」
「じゃあここはどう?何か学生専門みたい。〝#ファー〟って書いてある」
 友梨は言われるままに検索してみると、すぐにヒットした。
  
ようこそ〝ファー〟へ 貴方の恨み買います もちろん貴方に迷惑はかけません
隠密のうちに処理します ぜひ恨みを晴らしませんか なお初回は無料です

「これね。でもバレちゃったらマズいし」
 友梨も大きな決断に迫られました。そもそもこんなオープンなのに大丈夫なのだろうか?

 翌日になり友梨が返答する時間が迫ってきた。
  
   YES OR NO ?
 
 体育館の裏にはすでに天馬が来ていて、その表情からはどこか余裕すら感じさせられる。
『俺が断られるはずがない』
 そんな自信を伺い知ることが出来る。そのときだった、複数の人影が。
「お前が八神っていうガキか?」
 天馬は、会ったこともない大柄な厳つい二人の男に囲まれた。
「よくも俺の妹に手を出したな。落とし前つけてもらおうか」
 道村と名乗るその男は、どうやら天馬が付き合ってる道村有香の兄のようだ。
「いえ僕は有香さんと真剣な」
「真剣?ふざけんな!お前複数の女と付き合ってるんだよな」
 あまりの迫力に天馬の体の震えが止まらず、失禁までしてしまった。
「いいかすぐに自分の悪行をネットに載せろ。そして妹たちの前から去れ。二度と現れんな、さもないと」
「あっ、ははい」
 もう涙声で失神寸前。それ以後に天馬が学校に登校してくることはなくなった。

 数日後に発刊された裏業界の月刊誌に〝世直し代行屋ファー〟代表S氏のインタビューが載った。
     
「世直し代行なのねらいは何ですか?」

 悪がのさばってる 世直し世直し

「きっかけは何ですか?」

 法が弱者を守ってないから代わって仇討ち
       
   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「最後に、世間に向けて一言お願いします」
       
 悪さしてるお前ら さぞかし夜道に気をつけろよ   
                                  
                                                   
  あなたの恨み買います



しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

幸介による短編恋愛小説集

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:418pt お気に入り:2

転生ババァは見過ごせない!~元悪徳女帝の二周目ライフ~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:9,820pt お気に入り:13,493

ショート朗読シリーズ

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:284pt お気に入り:0

だから何なん?

青春 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:1

龍の寵愛

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,803pt お気に入り:2

死が見える…

ホラー / 完結 24h.ポイント:2,172pt お気に入り:2

誰がKY?

青春 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:1

処理中です...