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第2章 幼年編
123 森の熊亭
しおりを挟む領都学園から30分ほど。
領都ヴィンランドの庶民街にトールの家、人気の食堂 森の熊亭があった。
お店はシャーリーの叔父さんの食堂よりも大きく、お運びの店員さんも2、3人いた。
多くの王国民は朝晩の1日2食だが、冒険者や肉体労働に携わる人はお昼ご飯も食べている。
庶民街にある森の熊亭はそんな人々にも支えられてお昼どきも賑わっていた。
トールを先頭に、ハンス、シナモン、アリシア、キャロル、俺の6人はお店の勝手口から店内に入り、いちばん奥に腰掛けた。(この世界には椅子とテーブルしかない。転生前に慣れ親しんだ畳の和室は無い)
「坊っちゃんお帰りー」
お店の制服を着た馬っぽい獣人の女性が言った。
「ただいまー」
(トール、坊ちゃんなんだ)
「友だちを連れてきたんだ。みんなちょっと待っててね」
そんなことを言いながら、厨房のほうへ行くトール。
すると、すぐに立派な体格の熊獣人の2人がやってきた。
上にも横にも大きな、立派な体格の男女だ。
「ハンスちゃんとシナモンちゃんも一緒のクラスだったのかい?えーとヒューマンの子もトールちゃんのお友だちね」
「そうだよ。おばさん、みんな1組なんだよ」
シナモンがうれしそうに話す。
「みんな領都学園の1組かい。ひょっとしてトールちゃんもかい?」
「うん、ぼくも1組だったよ」
「ひゃーすごいよ!母ちゃん嬉しいよ」
「ぼくもがんばったんだよ母ちゃん」
「ああトール、よく頑張ったな。父ちゃん嬉しくて嬉しくて‥ううっ」
「父ちゃん泣くなよ、恥ずかしいだろ」
「ホントだよアンタ!」
ばちーんとおじさんの背中を叩くすごい音がした‥。
(仲の良い家族の雰囲気がすごく伝わるよ。ヨゼフ父さん、マリア母さん、スザンヌ、ヨハン。みんなの顔が浮かぶ。こんなの見たら俺もホームシックになっちゃうよ)
「父ちゃん、母ちゃん紹介するよ。1組のクラスメイトのアレク君、アリシアさんにキャロルさん」
「「「こんにちは」」」
「アレク君はヴィンサンダー領から来たんだよ。ぼくたち1年の首席なんだよ」
「おーすごいな(すごいわ)」
「アレク君もお嬢さんたちもこれから息子と仲良くしてあげてくれよ」
「「「はい」」」
「アレクちゃん、トールちゃんをどんどん鍛えてやっておくれ」
「はいおばさん。俺、トールをビシバシ鍛えます」
「嫌だよーそんなの」
トールが大きな身体を縮こませて悲鳴を上げる。
ワハハ
あはは
フフフ
「さあ、お祝いだ。みんないっぱい食ってっておくれよ」
「「やったー!!」」
「そうそう、アレク君とこのヴィンサンダー領からきた粉芋とアレク袋は今こっちでも大人気なんだよ」
「えっ!そ、そうなんだ。あは、あはは‥」
「「「ん?」」」
ここで名探偵ハンスが推理を働かした。
「アレク、お前ヴィンサンダー領だよな?」
ハンスが俺に訊く。
「うん」
「100軒もないような小さなデニーホッパー村出身なんだよな?」
「うん」
「アレクって名前は多いのか?」
「ううん。」
「何人かいるのか?」
「あー俺だけ、かな」
「今話題の粉芋はデニーホッパー村産の芋でアレク工房製。アレク袋はもちろんアレク工房製。アレクはお前だけ。改良がうまくいったデニーホッパー村を主導したのは子どもだという‥それは‥」
「まさか?アレクって‥ダーリンなの?」
「あは、あはは‥そうなるのかな」
「「「「えー!!」」」」
隠していたわけじゃないとか、粉芋もアレク袋もたまたまアイデアが浮かんだから作ってミカサ商会に作ってもらったとみんなに話した。
貧しい開拓村をなんとかしたくって土魔法を使っていろいろ考えたってことも。
トールのお父さんが続いて訊く。
「じゃあアレク君、ひょっとしてあのミートチョッパーもアレク君が作ったものかい?」
「ミートチョップ?」
「違うよシナモンちゃん。ミートチョッパーだよ。シナモンちゃんが気に入ってるあのツクネを作る機械だよ。硬い肉が柔らかくなるから今じゃ王国中の料理人には欠かせなくなった調理器具なんだよ」
「にゃー!それは知らにゃかった!」
「えーツクネなら私の町でも食べたことあるわよ!」
「私の町も今大流行りよ!」
シナモンに続き、アリシアとキャロルも驚いて話した。
ここが落としどころと知ってか、ハンス刑事が尋問をまとめにかかった。
「「「アレク‥やったのはお前かー!!」」」
はい、すいません。俺がやりました‥。
まあ実際にはみんなに責められるどころか、感心されることになるのだが‥。
「アレク君、おじさんにも何か教えておくれ。最近近くに新しい店が次々とオープンして正直、ちょっと売上も落ちてきているんだよ」
(ん?どっかで聞いたような話だな)
「アレクちゃん、トールちゃんと一緒に食堂やったら?」
「いやいやおばさん、俺学園に入ったばっかりだし。冒険者になりたいし。でも俺、素人だけど、俺で良かったら何か考えるよ。トールの父さんと母さんが喜ぶんなら」
「アレクちゃん、ありがとうねー」
「ううっ、トールもいい友だちをもって‥父ちゃんはうれしいよ‥」
「だからなんでアンタはすぐに泣くの!」
ばちーん
わははは
あははは
ひとしきり盛り上がったあとで。
最後にキャロルが一言言い放った。
「でもさ、アレク君っていったい何者?」
「えーっとヴィンサンダー領から来たただの農民の子どもだよ」
「「「ふーん」」」
なぜかみんなが胡乱な目で俺を見ていた‥。
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