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第2章 幼年編
329 続 蘇生
しおりを挟む「じゃあリズ先輩いきますよ」
「スパーク!」
「バチッ!」
がくんっとリズ先輩の身体が揺れた。
‥‥‥‥
何も変わらない。リズ先輩は眠ったままだ。
「リズ先輩もう1回いきますよ」
「スパーク!」
「バチッ!」
がくんっ
‥‥‥‥‥‥
最初よりもう少しだけ電圧を上げたスパークを発現するのだが。まるで蘇生には至らない。焦る。どうしよう。
「リズ先輩早く起きなきゃ!スパーク!」
「バチッ!」
がくんっ
‥‥‥‥‥‥‥‥
焦る気持ちは極限に達した。だめだった。
認めたくないけど、それは諦めの境地だ……。
「リズ先輩!リズ先輩は俺を闇落ちから救ってくれたんでしょ!だったら責任とってくださいよ!俺を見守ってくださいよ!このままかくれんぼしてたら‥‥ううっ‥‥なんとか言ってくださいよぉ‥‥リズ先輩‥‥」
マジか‥‥こんな終わり方が許されるのか。こんなのって‥‥あんまり酷いじゃないか‥‥。
女神様!母上!どうかどうかリズ先輩をお救いください。お願いします!お願いします!
どれだけ俺が泣き喚こうが、女神様からも母上からも何の返答もなかった。
やっぱり……。
やっぱり上手くいかなかったんだ。結局俺1人で勝手に踊ってただけだったんだ。リズ先輩は眠ったままだった。肝心なところで上手くいかないのは俺らしいや……。
「うっ、うっ‥‥」
崩れ落ちる俺。
「アレク‥‥よく頑張ったわ。もう充分よ」
シルフィが慰めてくれる。
「ダメだよぉ‥‥リズ先輩起きなきゃダメだよぉ‥‥ううっ」
俺は土台に横たわるリズ先輩の横でさめざめと泣いた。
「アレク!もう1回やるわよ!」
脳内にあおちゃんの声が聞こえた。
「あおちゃん‥‥せっかく教えてくれたのに‥‥ごめんよぉ。やっぱり俺はダメな奴なんだよぉ‥‥結局転生してもこんな体たらくな‥」
「バカ!もっと集中しなさい。心を込めなさい。そして誰より自分自身を信じなさい!もう1回やるわよ。いいアレク、先ずは左手で魔法使いの子の魔力の流れを感知して!」
「何度もやったんだよぉ。ううっ、もうダメなんだよぉ‥」
「バカーッ!言うとおりしなさい!本当に間に合わなくなるわよ!」
「う、うん‥‥」
「ほら左手で魔法使いの子の手をにぎって。深呼吸よ。魔力回路がわかるでしょ」
冷たくなっていくリズ先輩の手をにぎりながら目を閉じる俺。リズ先輩の魔力を感知しようと試みた。
すううぅぅーーはああぁぁーー
「あった!」
指先から手のひら、手のひらから腕へと。途切れ途切れなんだけど全身を繋がる糸みたいに細い魔力回路が見えたんだ。
「う、うん。あおちゃん、見えた。俺にも見えた!ひょっとしてひょっとするかも‥‥」
「もう切れかかってるでしょ」
「うん。途切れ途切れだよ」
「いいアレク?これが最後のチャンスよ。気合い入れていくわよ!」
「うんあおちゃん!」
一気に俺も元気が出てきた。よーし、もう1度全身全霊で取り組まなきゃな。
「左手から魔力回路を修復しながら辿るのよ。辿りながら‥‥心臓まで行った?」
「う‥‥ん。着いたよ」
リズ先輩の魔力回路は既にあちこちが寸断してたんだ。俺は途切れ途切れの魔力回路を修復するイメージで辿りながら心臓へと進んだ。
「魔法使いの子の魔力回路、アレクの魔力を通して修復できた?」
「うん」
手から心臓へ。心臓から全身へ。リズ先輩の全身の魔力回路を修復していく。
繋がった!
「さあ急ぐわよ!繋がった魔力回路を活性化するのよ」
「うん」
「でもやり過ぎちゃだめよ。本来の回路に10%から15%増しでアレクの魔力を通すの」
俺はあおちゃんの指示どおりに実行していった。修復したリズ先輩の魔力回路に沿って少しずつ俺の魔力を流し込んだんだ。休憩室でリズ先輩とセーラと3人、手を繋いで反復練習をしてたのが良かったんだ。スムーズにいける!
「心臓の位置と形はわかってるよね」
「わかるよ」
「最後は心臓の形にそって魔力を注ぐのよ。でいよいよAEDの登場よ!」
「うん!」
「剣と魔法のファンタジー世界に現代日本の最先端医学のエッセンスを取り込むのよ!アレクならできるわ!」
イメージもバッチリ。実像もしっかりと頭に叩き込んだ。
「あおちゃんできた!準備できたよ!」
「よーし。じゃあやっちゃえーー!」
「うん。いくよ!スパーク!」
「バチッ!」
がくんっ
ドクンドクンドクンドクン‥‥
ドクンドクンドクンドクンドクン‥‥
「やったじゃん!アレク!」
「やった……。ううっ、ううっ。リズ先輩‥‥」
思わず号泣する俺。
「ア、アレク‥‥」
「リズ先輩!?」
「ア、アレクが戻してくれたの?」
「はい。ううっ‥‥リズ先輩は俺を闇落ちから帰してくれた責任があるんですからね!勝手に死ぬなんて絶対、ぜったい、ぜったい‥‥ううっ、ううっ‥‥」
リズ先輩の小さな身体に頭をつけて俺はわんわん泣いたんだ。
「アレクは泣き虫なの。よしよし‥」
泣きじゃくる俺の頭を撫でてくれるリズ先輩。
「アレク‥‥ゲージは?」
「リズ先輩の回復魔法のおかげでなんとか大丈夫ですよ。今は俺の土魔法の中に居ます。もうすぐセーラが来ますから安心してください」
「ん‥」
「じゃあ俺やかましい魔物たちをちょっと退治してきますね。リズ先輩は少し寝ててください。俺のシルフィが横にいてくれますから安心して眠って大丈夫ですよ」
「ん。シルフィさん‥‥ありがとうなの」
「ふふふ」
目を閉じたリズ先輩は寝息をたててあっという間に眠りについたんだ。
「シルフィ、シンディたちが来るまでリズ先輩を守ってあげてね」
「もちろんよアレク」
「じゃあ俺やかましい天狼たちを片づけてくるね」
「がんばれアレク!」
「あおちゃん、ありがとう!本当に本当にありがとう!」
「よかったわ‥‥」
「じゃあ俺天狼たちを倒してくるね。この後は撤退するから。後であおちゃんのところにみんなで寄るからね」
「ダメよ。アレク」
はっきりそう言ったあと。あおちゃんがゆっくり言葉を続けたんだ。
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