アレク・プランタン

かえるまる

文字の大きさ
513 / 722
第2章 幼年編

514 メルル

しおりを挟む


 【  メルルside  】

 もうすぐ夏休み。夏休みも明けたらいよいよ青雲館が本格稼働をするわ。
 いよいよよ。じっとしていられないわ。

 「これもしなきゃ」

 「あれもしなきゃ」

 やることは山積みよ。でも焦りこそすれ、それは何の苦でもないわ。毎日が楽しいし。





 幸運なことに、メルルが尊敬して止まないサラにプラスして、もう1人大きく尊敬に値する人物ができた。

 それは面接以降新しく知ることとなった高齢の元シスターのメアリである。

 そんな2人に少しでも近づくこと。

 それがメルルの大きな目標となった。そしてその目標はメルル自身のやる気を一層引き出していた。




 ついに第1号の入寮者が現れたの。猫獣人の兄妹。サラ先生と同じ奴隷商バァムの元に捕らえられていた2人、トム君とチャムちゃん。


 私は思ったわ。この子たちが2度と騙されないように字の読み書きができるように教えてあげなきゃ。立派な大人にしてあげなきゃ!って。そうよ、私は心に誓ったわ。
 だから。

 「トム君チャムちゃんは◯◯しなさい」

 「チャムちゃんはもっと◯◯しなきゃいけないわよ」

 「トム君はお兄ちゃんなんだからもっと◯◯しなきゃ」


 毎日気づくことを2人の兄妹にたくさんたくさん教えてあげたわ。少しでも良くなるようにってね。





 メルル本人が意識はしていないが、メルルの子どもたちへの接し方はときに過剰、ときに高圧的なものに映ったようだ。

 「(サラ先生、メルル先生が怖いの)」
 
 「(メアリ先生、メルル先生にたくさんたくさん叱られるの)」

 それはメルル自身にも感じることとなる。

 なぜかな?
 あれだけ懐いてきたトム君とチャムちゃんの2人がいつのまにか私と距離を開けるようになったって思えるのだけど?
 なぜ?


 それはその後に入ってきた子どもに関しても同じだった。

 「(メルル先生はなんだか怖いね)」

 「(ホント!わたしメルル先生苦手‥‥)」

 そんな言葉が直接メルルの耳にまで入ってきた。

 「私メルルお姉ちゃんはイヤ!」

 「僕も嫌だ!」


 (なぜ?私はあの子たちのためを思って言っているのに!)

 (ひょっとして私が獣人のミックスだから?)


 だがメルルに懐かないのは同じ獣人の子どもも同じだった。

 「僕もメルルお姉ちゃんはイヤだ!」

 「私もメルル先生は怖い!」



 (なぜ?)

 (なにがいけないの?)


 そんな疑問、そんな不満はメルルの中でどんどん大きくなっていった。

 なぜ?

 でもこのままだと絶対ダメだ。私はいずれ子どもたちに大きな声で叱ることになる……。
 それは私が一番嫌だったことなのに。




 そんなときである。

 「「アレクお兄ちゃん!」」

 ダッとアレクに駆け寄る2人の兄妹。

 「よぉトム、チャム」

 「「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」」

 2人が身体いっぱいの喜びを現してアレクにしがみつく。

 「風呂入ったか?」

 「「まだー」」

 「よし兄ちゃんと風呂入るか」

 「「うん!」」

 「よしいくぞ」

 「アレクお兄ちゃんくすぐったいからあとで僕のお腹にお顔くっつけないでよね!」

 「私もー!お風呂上がりのお兄ちゃんのお顔はくすぐったいー」

 「あわわわっ!お前らしーっしーっ!言っちゃダメだぞ!
 は、早く風呂いくぞ。ハチお前もこい!」

 「「狸さんもお風呂いこー」」

 「狸じゃねーわっ!」

 わははははは
 キャッキャッ

 身体ごとアレクにぶつかって抱きついてくる2人を連れて大浴場に向かうアレク。


 同じようにじゃれつくような光景は歳の近い学園生にも見られた。

 「お兄ちゃん!」

 学園の2年生アリサである。アリサは頭からアレクにダイブしていた。

 「アリサ、お前もう2年生なんだぞ。いつまでも子どもだなぁ」

 「だってー」

 「やめてよお兄ちゃん!頭がくちゃくちゃになるわ!」

 そう言いながらアリサの頭をぐちゃぐちゃに撫でるアレク。アリサはイヤイヤと言いながらとてもうれしそうだ。これって……?


 メルルの横にきた同じ幹部連のギンがメルルに言う。

 「メルル先輩、団長が来る前のアリサちゃん覚えてます?」

 「えっ?」

 「私すぐ下の学年だからよく覚えてるですよ。アリサちゃんってあんな顔してなかったんですよね」

 「あまり記憶はないけど‥‥たしかいつも怒ってたように見えたわね」

 「ええ!そうなんですよメルル先輩。アリサちゃん、すっごく綺麗な顔をしてるけど誰も近づけない冷たい雰囲気だったんですよ。 
 なのに今なんか‥‥あれですもん!
 私卑怯だよなって思うんですよ」

 「なにが卑怯なの?おギンさん」

 「だってアリサちゃん、ただでさえすっごく綺麗な顔してるのに。その上、笑顔に溢れるようになって……。
これじゃ絶対勝てないじゃないですか。

 アリサちゃんの妹、クロエちゃんも団長が来るまでは誰とも口を聞かなかったんですって。うちのドン様やトン様が未だに笑って言うんですよ」

 「なにを言うの?」

 「団長が学園に来てすぐ。
 私たち海洋諸国人がする教会の炊き出しに団長とアリサちゃん、クロエちゃん、デーツ先輩の家族が観に来てくれたんです。団長はアリサちゃんたちを俺の家族だって自然に言うし。
 クロエがしゃべらないのは私たちは知らなかったんですよね。それが‥‥。
 私、その瞬間は忙しくって見てないんですけど、ドン様とトン様がクロエちゃんを何気にあやしたんですよ。赤ちゃんをあやすみたいに」

 「クロエちゃんって初級学校の1年生だよね」

 「ええ。うちのドン様もトン様もそんなこと知らなくって。どう見ても赤ちゃんかなって。
 そしたらクロエちゃんがキャッキャッって笑いだして。

 それを見た団長がいきなり大泣きしてドン様とトン様にありがとう、ありがとうって」

 「‥‥」

 「団長見てて。私最近ようやくわかったんですよね。子どもたちにも誰に接するのも構えてたらダメだなって」

 「えっ?!」

 おギンのその言葉に、脳天を撃たれたやうな気がしたメルルだった。

 「だって団長ったら誰にも遠慮なく話すじゃないですか。大人にも子どもにも。
 でもそれって案外とっても大事なことなんだなって‥‥」
 

 そうか!

 私はいつのまにか気持ちばかりが前のめりになって‥‥構えていたのね。

 そうよ!

 私もまだあの子たちと変わらないんだもん。先生って呼ばれて舞い上がってたのかな。でも違うわ。私も子どもたちと一緒に成長しなきゃ!


 「チャムちゃんお姉ちゃんと一緒にお風呂に入ろう!メルルお姉ちゃんが髪の毛を洗ってあげるね」

 「‥‥うん!メルルお姉ちゃん!」

 ガラガラガラガラ‥‥

 「あっ!メルルお姉ちゃん!お姉ちゃんもお風呂だ!」

 「そうよトム君。お姉ちゃんがトム君とチャムちゃんを洗ってあげるね」

 「えっ?アレク君?」




 「へっ!?
 め、め、メ、メル、メル、メル、メル~~~る~る~る~‥‥」

 ブッシュッッ!




























 「ブッシユユュュュュ~~~~~ッッッ!」

 「キャァァァーーーッッッッッ!!」












 
 目が覚めたのは青雲館の保健室だった。

 「ん?こ、ここは?」

 「「「団長(お兄ちゃん)‥‥」」」

 そこにはアリサとおギン、コウメもいたんだ。

 「メルル先輩が謝ってたわ。お兄ちゃんは悪くないって‥‥」

 「でも‥‥」

 (((メルル先輩の裸を見て鼻血だしたんだ‥‥)))

 「お、お兄ちゃん。何かいうことある?」

 「ありません‥‥ごめんなさい‥‥アリガトウ」

 「ん?なんか言ったお兄ちゃん?」

 「言ってません!」


――――――――――


 あゝ

 俺‥‥

 変態認定されたのかな?


――――――――――


いつもご覧いただき、ありがとうございます!
「☆」や「いいね」のご評価、フォローをいただけるとモチベーションにつながります。
どうかおひとつ、ポチッとお願いします!
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完結 シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣

織部
ファンタジー
 ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。  背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。  母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。  セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。  彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。  セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。 「セラ、ウミ」 「ええ、そうよ。海」 ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します! カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』 誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。 辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。 だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。 学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...