アレク・プランタン

かえるまる

文字の大きさ
520 / 722
第2章 幼年編

521 地道な努力

しおりを挟む


 「みんないい?今日からこのノートに毎日書いていくわよ。絵でも字でもいいからね。
 メルルお姉ちゃんも一緒にやるからアレクお兄ちゃんにやり方をきこうか」

 「「「はーい」」」

 メルル先輩が肩の力も抜けてすごく良くなったんだ。子どもたちの信頼度も高くなったよ。サラさんやメアリさんたち先生との間でいい緩衝材的な役割を果たしてくれているよ。

 青雲館で宿泊する子どもたちも20人を超えたんだ。少しずつ少しずつ。この学び舎に慣れていくのは子どもたちも俺たちも同じなんだよね。

 
 ノートを1人1冊。
 子どもたちには日記をつけるのも習慣づけてもらうんだ。

 「何書いてもいいからな。絵でも、字を書けるようになった子は字でもいいぞ。
 とにかく毎晩やり続けること。毎日やり続ければ何か変わってくるからな」

 「「「はーい」」」

 「アレクちゃん何を書いたらいいの?」

 「何でもいいぞ。そのうちだんだん慣れてくるから、今日は何をやった、どう思った、明日はどうしたいって書けることがそのうち増えていくようになるぞ」

 「「「ふーん」」」
 
 「簡単だろ。俺が3歳からずっとやってる訓練と同じなんだよ。
 毎日毎日同じことを繰り返すんだよ。ずっとやり続けていれば、少しずつでも成長してくからな」

 「そしたらアレクちゃんみたいに強くなれるの?」

 「俺はなったぞ?だったらお前らだってなれるじゃん」

 「「「おぉ~!」」」



 1日の終わり。就寝前に。誰もが日記を書くんだ。そして、このときだけは遊んだり友だちと話しながらは禁止。部屋の仲間の邪魔をするのも禁止。
 わずかな時間を内なる自分とだけ向き合って自分自身の心と共有するんだ。

 「それとな。お前らには俺からのプレゼントだ。朝も寝る前も。この魔石をニギニギしろよ。魔力はな‥‥」

 買えばそれなりの価格だけど自分で狩ってきたからタダの魔石。この魔石を子どもたちにもプレゼントしたんだ。

 「「「アレクちゃんありがとう!」」」




 「(サラ先生、メアリ先生‥‥)」

 「(アレク君の言葉、深くて意味のある言葉ね)」

 「(そうね。単純なことも毎日やり続ける信念っていうのかしら。
 3歳のアレク君に聞いてみたいわね。何がそこまでさせたのって)」

 「「(そうですね)」」


―――――――――――――――


 「ウマッ!」

 我ながらバッチリの出来だよ。入手しやすいブッヒーの腸を使ってソーセージを作ったんだ。残ったホルモンもそのまんま炒めれば成人団員の大好きな酒のアテになるみたいだし。
 このソーセージもまだ俺が倒れる前、爺ちゃんに教わった作り方なんだ。なにから何まで爺ちゃんのおかげだよ。

 燻したソーセージを軽くボイルし直して試食してもらったんだ。

 「どう?ドン、おギン?アリサ、コウメ、ハチ?」

 「「「うま~い!」」」

 「団長めっちゃうまいです!」

 「団長すごいわ!」

 「お兄ちゃん天才!」

 「団長とっても美味しい!」

 「うますぎるっす!金の匂いしかしないっす!」



 天然のブッヒーの腸で作ったソーセージ。ソーセージは加工してから燻すから、生肉より断然日持ちもいいんだよね。魔獣肉でもできるから、ツクネ(ハンバーグ)と同じで買ったりするよりはるかに安くできるし。

 このソーセージはもちろんそのまま炙ったり茹でて食ってもうまいし、朝ごはんのスープに入れてもうまい。
 コッペパンの中にサンドしたら最高だよ。

 パン工房の第2弾は惣菜パンを考えてるから、ソーセージパンをその目玉にするんだ。てか、やっぱハム工房を建てるべきだよな、これは。

 「てことで、パン工房の隣にハム工房を建てようかと思うんだけどどうかな?」

 「「「いいですね!」」」

 「「「賛成!」」」

 「「「俺(私)覚えたい」」」

 「金の匂いしかしないっす!」

 ハチ……。

 「えらいぞ団長!」

 おギンが俺の頭を撫でてくれる。くそーっ。アザとかわいいな。

 「えへへへへ~っ‥‥」

 「お兄ちゃんまた変な顔になってるわよ!おギン先輩もお兄ちゃん撫でたらダメだよ!」

 「いいじゃんアリサちゃん。団長喜んでるし」

 「だからダメなの!」

 「いいじゃん!」

 「ダメ!」

 「いいじゃん!」


 なぜか最近おギンとアリサが張り合うようになったけど。なんでだろう?
 まあみんな仲良いからいいかな。


 試食第2弾はソーセージパンだよ。
 カレー味の刻みキャベツを炒めてソーセージと一緒にコッペパンにはさむ。
 たったこれだけで絶品の惣菜パンの完成なんだ。
 刻みキャベツのカレー味。第1弾は揚げパンだったよね。カレー味は‥‥そう第3弾への布石になるよ。第3弾も大成功しかないな。


 「「団長なんですか?この味?」」

 「「1度食べたら忘れられない、やめられない味だわ」」

 「お兄ちゃんカレーもこんなふうになるの?」

 「「アリサちゃんカレーって?」」

 「うん。お兄ちゃんが作るこの味をカレーって言うの」

 「「「かれえ?」」」

 「うん。今家で植えてる稲が4、5年したら帝国中で栽培できるんだって。
 その稲の実、ご飯で作るカレーライスは最強だってお兄ちゃんが言ってた」

 「「「かれえらいす‥‥最強‥‥」」」

 「「「ゴクンッ」」」

 「「「このパンでもすごいのに‥‥」」」


 王国から1、2年は遅れるけど早くみんなに米を食ってもらいたいな。

 「まあとにかくだ。ソーセージ工房もパン工房の横に作るぞ」

 「「「賛成!」」」







 いきなり。浮浪児、2、3歳の人族の女の子が1人で青雲館にやってきたんだ。

 「どうしたの?」

 「あのね、お母さんもお兄ちゃんもいなくなって、怖いおじさんがお家にやってきたの。お前はどれいだって。そしたら身体中にお絵描きのあるお兄ちゃんが怖いおじさんを追い払ってくれて、ここに行けって。途中まで連れてきてくれたの」

 「‥‥そっか。よく来たね。名前は?いくつ?」

 「あのね、マリンっていうの。2歳よ」

 マリンと名乗るその子は貧民街特有のすえた糞尿の匂いがした。

 「じゃあマリン、お兄ちゃんと狸さんと3人でお風呂に行こう」

 「おふろ?」

 「ああ。気持ちいいぞ。狸さんも一緒だから安心だろ」

 「うん。狸さんといっしょー」

 「(団長‥‥僕、なんか複雑っす)」

 「(いいんだよお前はそのまんまで)」


 そっか。この子寄越してくれたのはゼンジー一家のキュウとかいう入れ墨野郎だな。
 これは手土産持ってお礼に行かなきゃな。


 「ドン明日の昼からゼンジー一家のとこに案内してくれよ」

 「わかりました団長」


 大きな事件や問題のないうちに。毎日をちゃんと過ごさなきゃな。


―――――――――――――――


いつもご覧いただき、ありがとうございます!
「☆」や「いいね」のご評価、フォローをいただけるとモチベーションにつながります。
どうかおひとつ、ポチッとお願いします!
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

完結 シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣

織部
ファンタジー
 ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。  背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。  母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。  セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。  彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。  セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。 「セラ、ウミ」 「ええ、そうよ。海」 ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します! カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』 誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。 辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。 だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。 学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

処理中です...