アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

607 フライの練習

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 「まあいいよ。俺たちは騎士団さんに雇われたポーターだから。ここからはバリーの指示どおりに動くから。なあケント」

 「ああメンディーの言うとおりだ」

 「よ、よし。それじゃあ俺の指示どおり動けよ冒険者ども」

 「「はいはい」」

 「お前も変わんねぇなバリー。その上から目線はよぉ」

 「うるさい!」

 バリーさんは想像以上にメンタルが強い人だった。


 (ゴブリンソルジャーが現れたのか。油断しちゃいけないな。もうあんな目に遭うのはまっぴらごめんだから)

 「そうねアレク」

 「うんシルフィ」


――――――――――


 斥候が3人組となってからは、予想していた以上に出現してくる魔物の質も数も減ったんだ。

 シュルシュルシュルーーーッ‥‥

 体育館並に高い壁からぶら下がって襲ってくる蜘蛛には弓矢を射た。

 シュッッ!

 バシュュュッッッ!

 貫いた蜘蛛がバリーさんが歩く後に落ちる。
 すぐに俺に向けて刀を振って合図するメンディー君とケント君だけど。バリーさんはまったく気づいていないみたい。
 ほぼバリーさんの真上に蜘蛛がいたのにな。ぜんぜん気づかないのには逆に驚きだよ!

 ダッダッダッダッダッダッ‥‥

 ウオォォーーンッッッ

 今度はワーウルフが1体現れた。流石のバリーさんでもこれくらいは倒せるよな。

 「出たな魔獣ワーウルフめ!俺様の剣捌きを見よ!」

 斬ンンッッッ!

 「ギャッッッ!」

 ワーウルフを袈裟がけにしてるけど、魔石が剣に当たったらどうするんだよ!?

 「ほらアレク、予想どおり1体しか出てこないでしょ」

 「クックック。ホントだねーシルフィ」

 「アレク君シルフィ殿はなんと?」

 俺の横を歩くメイズさんが聞いたよ。

 「『ほら1体しか出てこないでしょ』って言ってます」

 「「「さすがシルフィ殿だ!」」」

 「「「さすが!」」」

 パチパチパチ
 ぱちぱちぱち
 パチパチパチ

 その拍手を自分に向けて送られたものと勘違いをするバリーさんは、後方の俺たちに向けて手を振っているよ……。

 「見ろお前ら。俺の勇姿に騎士団の先輩たちが拍手してるぞ!」

 「「違うと思うけど‥‥あはははは‥‥」」

 その後もなんの問題もなく進んだよ。
 ヘタレなバリーさんはヘタレなりに。メンディー君とケント君は俺の思う以上によく闘って。

 「(ねぇ分隊長)」

 「(言わなくってもわかるわ)」

 「「(ええ)」」

 「「「(あの子、ポーターの冒険者の2人よりもはるかに弱いわ‥‥)」」」

 それは先頭を歩く狂犬団の2人にも。

 「(なぁメンディー?)」

 「(ああケント)」

 コクコク
 こくこく

 「(でもさ、俺たちは団長に会えてよかったよな)」

 「(ああ。俺らも団長に会ってなかったら、こんなふうに勘違いしたままだったぞ)」

 「(そうだな)」


――――――――――


 ゴーン  ゴーン  ゴーン  ゴーン‥‥

 リアカーに積んだ時計が鳴ったんだ。

 「休憩しようか。どうしましょうシルフィ殿」

 メイズさんが聞いてきたんだ。

 「『ちょっと待ってて。向こうの2人に教えてくるから』って言ってます」

 「「「2人?」」」






 

  











 「「「あーなるほど‥‥」」」




 【  メンディー・ケントside  】

 後方の本隊から時計の音が聞こえてすぐに。

 「「!!」」

 唐突に立ち止まったバリーに思わず戸惑いを隠せないメンディーとケントの2人。

 すわゴブリンの矢が放たれたか!と警戒したのだが。

 カタカタカタカタカタカタ‥‥

 バリーの口からカタカタと不自然に歯が鳴る音が聞こえたと思ったら、いきなり白目を剥いてバリーが語りだした。

 「メンディー、ケント。私はアレクに憑く精霊のシルフィ。私は精霊のシルフィよ」

 「「あっ!団長の精霊さんだ!」」

 「いい?今から休憩にするわ。あんたたちの前にはアレクが土魔法で穴を掘ってるから魔獣が飛び越えてくる心配はないわ。だから軽い食事が済んだらすぐに仮眠をとりなさい。次に時計が鳴ったらまた出発よ。今度の休憩は6点鐘のあとの予定だけどたぶんそれまでに会敵するはずよ。食事は届けるから待ってなさい」

 「「了解です精霊さん」」


――――――――――


 先発隊の3人が立ち止まったからね。すぐにわかったよ。てかまた白目剥いたバリーさんをオモチャにしてるよこの人!

 「アレク、あんたもやってあげようか?」

 「絶対やめてください!」

 「休憩は1点鐘にしなさい。そのあとは必ず会敵するはずよ」


 シルフィの言うとおりにしたんだ。休憩時間も1点鐘。休憩中の食事も軽めのスープパスタだけにした。

 「シルフィ、ダンジョンみたく野営食堂はダメなの?」

 「いいような気もするだけど、検証してる時間もないわ。わからないからやめたほうがいいわ」

 「そっか」

 「アレク、いい機会だからフライの練習をしなさい。先発隊にお料理飛ばすくらいはできるでしょ」

 「うん。うぅばぁいっつぅ、いってらっしゃい!」

 シルフィの言いつけどおりにスープパスタの器を3つ、!50メル先の先発隊に届けたんだ。

 フラフラと飛んでいくスープパスタの器。地上10セルテだから、問題なく飛ばせたよ。

 「小童、お主フライもできたのか?」

 「うん。2年前は俺自身がもっとうまく飛べたけどね。今は忘れちゃってまだ思い出せないや」

 「これだけできれば大したもんじゃ」

 おっさんに褒められたよ。嬉しかねぇけど‥‥なんか嬉しいな。





 「おっ!団長からメシが届いた!」

 「おぉー!メシだメシだ!」


 「はっ!?」

 「バリーメシだぞ!」

 「お、俺は?」

 「お前歩きながら寝てたぞ」

 クックック
 わはははは

 「「いただきます!」」

 「うめー!やっぱ団長のメシはうめえや!」

 「ああ。めっちゃうまいな!」






 「あのさバリー‥‥」

 「お前、メシ食うときはちゃんと『いただきます』って言ったほうがいいぞ?」

 「なんでだよ!関係ないだろ!」

 「ああ関係ないよ。だけどさ‥‥全部のことは繋がってると思うぞ。なぁケント」

 「ああ。全部のことは繋がってると思うね、俺も」

 「うるさい!うるさい!だまれ冒険者!」

 「へいへいバリーさん。お山の大将の言うとおりにするよ」




 【  メンディーside  】

 「うるさい!」って感情任せに怒るバリーをみて思ったんだ。ちょっと前までの俺らもそうだったなって。

 もちろん俺は団長みたく、ずーっと努力し続けるなんてできない。だけど、毎日の中で少しずつ変えようって考えることくらいはできるんだよね。
 だから昔から変わらないバリー見て、ちょっと前の自分をみてるようだったよ。


――――――――――


 わずかばかりの休憩をとって、すぐに動きだしたんだ。

 そしたら‥‥

 ヒュッ!

 唐突に放たれた矢がバリーさんの肩を貫いた。

 「痛え、痛え、痛えーー!おいガキ、早く治療しろよ!早くしろよ!聞いてんのかよーー!」

 大声でバリーさんが後方の俺たちに向けて叫んだんだ。

 途端に。
 溢れる魔獣の気が一気に近づいてきたんだ。

 「ダメねアレク!これでダンジョンにバレたわ」

 「アレク君!?」

 「はいメイズさん。バレました!」

 「全員戦闘態勢だ!」

 「「「はい!」」」


――――――――――


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