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1.瑠璃の章
4.神殿
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帝国は独自の神を信仰している。
それは初代皇帝であり、帝国の礎を築いた人物だった。
もともとこの土地で古くから敬われていた神と結び付けられ、太陽と穀物と帝国の守護を司る神とされている。
それを祀るのが皇城に隣接する神殿だった。
カイルはゆっくりと石段を上りながら、その絢爛豪華な威容を目にして眉をひそめている。
いつもそうだった。
皇城以上に資金を投じて建設された神殿は、華美な装飾が施され、煌びやかな色彩で彩られている。
質素を重んじる軍人であるカイルは、それをついつい嫌悪してしい、自然そこに向かう足取りも重くなってしまうのだ。
しかし行かなければならない。
すべてはこの国を守るために。
***
神殿を入ってすぐの応接室に通されて、四半刻が過ぎていた。
いつものことながら歓迎されていない。
神殿は多くの特権が与えられ、高度な自治が許されている。
国における実質的な権限は、皇室とほぼ同等だった。
だからこその、この態度。
いやカイルだけではない。皇帝に対してもそうだった。
しかしそれでも国の根幹に関わることを話に来ているのだから、もう少し対応のしようがあるのではないかとカイルは思う。
けれどこんな時でさえ、神殿の態度が変わることはなかった。
それからさらにしばらく待たされた後、扉の向こうの廊下をひたひたと歩く足音が聞こえてきた。
カイルが居住まいを正した時、重い木の扉がゆっくりと開かれ、ローブの長い裾をずるずると引きずりながら、一人の神官が入ってきた。
長い長い髭、目を覆いつくしてしまっている豊かな眉、帽子の下から流れ落ちているふさふさとした髪、すべて真っ白だった。
立ち上がり会釈するカイルに向かって仰々しく片手を挙げ、「よい」とひと言言うと、椅子に座るように促し自分も腰掛けた。
カイルが座るのを待つこともなく、
「はて、元帥どのがどのような用で参られたものか……」
と、困惑も顕わに尋ねてきた。
さすがのカイルも顔を強張らせる。
「セクン大司祭さま、例の件で話をしようと申されたのは、大司祭さまではありませんでしたか?」
心持ち冷ややかなカイルの声音を気にする風もなく、セクン大司祭は豊かな眉の下の眼を大仰に見開き、
「そうであったかな……取るに足らぬことは忘れる癖があるものでな……」
そう言って、ぐふぐふと笑っている。
「取るに足らぬこと……」
つまりそれが神殿の見解だという事か。
ここで腹を立てればこちらの負け。
カイルよりも遥かに人生の経験を積んできたこの大司祭に対するには、それ相応の忍耐が必要なのだ。
「大司祭さま」
「…………」
「日程を早急に決めて頂きたいのですが」
大司祭はゆったりと背もたれにもたれかかり、胸の前で手を組み合わせている。
目は眉に覆われていて、今どんな表情をしているのか窺い知ることはできない。
「大司祭さま」
いっこうに返事をしない大司祭をもう一度呼んだ時だった。
いきなりすごい勢いで立ち上がったのだ。
老齢とは思えない身のこなしに唖然とするカイル。
「は、なんと……しかし……はあ………かしこまりました……」
何もない宙に話しかけていたかと思うと、がっくりと項垂れてしまった。
「いかがなさいました?」
見たこともないほど生気を失っている大司祭が心配になり、カイルがそばに寄ろうとすると、大司祭はゆっくりと頭を上げ、
「お許しが出た」
「は?」
「そなたのようなものにお会いになるそうだ」
いかにも意に染まぬかのように、大司祭は大きな溜め息をついてみせると、さらに横柄な態度で言った。
「これを誉れに思うて、ご慈悲に感謝するがよい。付いて参れ」
大司祭はまたローブをずるずると引きずって歩き始めた。
(いったい誰に会わせると言うのだ?)
心当たりがないわけではなかった。
けれどその人が自分に会うとは思えない。
となれば、この神殿の長たる教皇か?
しかしそれもありえないように思えた。死亡説すらある教皇は、ここ何年も公に姿を見せてはいなかったからだ。
考えても分からない。
仕方なくカイルは大司祭の後に付いて歩き始めた。
***
薄暗く長い廊下の突き当りには、別棟へと渡るための渡り廊下があった。
その渡り廊下の存在を知ってはいたものの、許可を得た者しかその先へは行けないため、カイルがそこに足を掛けるのはこの日が初めてだった。
大司祭は不満そうな顔でひと言、「深い慈悲に感謝せよ」とまた同じようなことを言って別棟に向かって歩き始めた。
カイルは感謝する気持ちなど起こるはずもなく、ただ黙々と風の吹きすさぶ石造りの渡り廊下を進んで行った。
別棟はこじんまりとした平屋の質素な家だった。
神殿の煌びやかさとは対照的な建物で、とても違和感を誘うものだった。
その前には狭い庭のようなものがあり、たくさんの草木が植えられていて、さながら林のようになっている。
そして、その向こうに見える平屋の家は素焼きレンガで造られ、屋根の上に出ている煙突からは白い煙が一条上っていた。
渡り廊下を渡って、その林の中へ入っていくと、井戸やベンチなども見ることができた。
誰かの田舎の家を訪れたような、そんな感じだった。
「ここにどなたかがお住まいなのですか?」
カイルは思わず聞いていた。
帝国元帥であるのに、神殿の奥にこんな場所があることなどまったく知らなかった。
「じきに分かる」
大司祭は多くを語りたがらなかった。
カイルもそれ以上話し掛けることはなく、緑の美しい林の中を進んでいき、そしてとうとう建物の前に出た。
間近で見ると、ますます質素という言葉がふさわしい家だった。飾り気ひとつない、けれど住みやすいようにきちんと整えられている。生活の匂いのする家だった。
2人が扉の前に立ち、大司祭がいよいよノックするという時、扉が内から勢いよく開けられた。
ぶつかりそうになり慌てて飛びのいた大司祭の大きな体の向こうに小柄な人がちらりと見えた。
「おや、早かったねえ」
鈴を転がすような可愛らしい声で、その人は感心したように言って微笑んだ。
「ナイルターシャさま」
大司祭が小さく呟くのを聞いた。
『ナイルターシャ』
その人の名は文献で見たことがある。
けれどそれは今から何百年も前のことを書いた文献だったはずだ。
彼女は、おそらく子孫か何かなのだ。
目の前に座るこの若く美しい女性は、『稀代の巫女姫』として名を残すあのナイルターシャの子孫なのだ。
きっと…………。
扉の前でぶつかりそうになった後、「井戸に水を汲みに行く」という彼女の手伝いをし、さらには今夜の薪が乏しいというので薪割りを手伝った。
そしてようやく家に入り落ち着いたのは、空が夕焼けに染まる頃だった。
カイルが文句ひとつ言わず雑用を片付けている間、大司祭はいっさい手を出すことはなかった。
***
夕飯のシチューが、暖炉に掛けられている鍋からいい匂いを漂わせている。
そして焼きたてのパンがテーブルに置かれた。
ナイルターシャと呼ばれた女性は魅惑的な笑みを浮かべて、
「よく手伝ってくれたお礼だよ。さあ、召し上がれ」
と言いいながら、カップにお茶を注いでいる。
「ナイルターシャさま、どうぞおかまいなく」
大司祭は口では遠慮するようなことを言いながら、さっそくパンに手を伸ばしている。
「私の顔に何か書いてあるかい? アルファラ家の坊や」
食事に手を付けることもせず、ナイルターシャを見つめていたカイルは、慌てたように首を振り、顔を赤らめながら「申し訳ありません」と言って頭を下げた。
それに対して彼女はくすりと笑うと、
「よい。若く見目良い男に見つめられるのは非常に心地いいからな」
と、冗談とも本気とも取れぬ口調で言った。そう言われたカイルは、「はあ……」としか相槌を打つことができず、そこで思い出したようにスプーンを手に取った。
もう十分夕飯の時刻。
(随分長居をしたものだ)
シチューを口に運びながら、女性を観察する。
神殿の最深部に造られたこのような家に住まい、大司祭から崇敬を受けている、皇帝すらその存在を知らない女性。
(これだから神殿は信用できないんだ)
「うまいか?」
「は?」
物思いに沈んでいたカイルは一瞬何を言われたのか分からなかった。
「うまいか、と聞いたのだ」
正直味わっていなかった。
返事を渋るカイルに、ナイルターシャはその綺麗な顔をしかめて見せてから、
「こんなに美味なものを食べているというのに、上の空で味わわぬと言うのは、人生の半分は損しているぞ」
口調はぞんざいだが、怒っているわけではなさそうだった。口元に笑みがある。
「申し訳ございません」
カイルはとりあえず謝っておいてから、今度はゆっくりその味を噛み締めながら皿を空にしたのだった。
「さて、ナイルターシャさま」
食事が終わってお茶を頂いている時に、ようやく大司祭は本題に取り掛かることにしたらしい。
セクン大司祭が鷹揚な性格なのか、ナイルターシャのペースに合わせるというのが彼女に対する時の処世術として確立しているのか、いずれにせよ、よく待ったものだとカイルは胸の奥でそう思っていた。
「こうして本来この場所にいるはずのない者をお呼びになった意図をお聞かせいただけませんか?」
そう言ってセクン大司祭はカイルをちらっと横目で見た。
やはり大司祭は、この若い元帥のことを快くは思っていないらしい。
ナイルターシャは「そうね」と、今までとは違う静かな声音で言って席を立ち、隣の部屋へと入って行った。
足首に届くほどの長く艶やかな髪が、室内灯の光を受けて輝いていた。
それは初代皇帝であり、帝国の礎を築いた人物だった。
もともとこの土地で古くから敬われていた神と結び付けられ、太陽と穀物と帝国の守護を司る神とされている。
それを祀るのが皇城に隣接する神殿だった。
カイルはゆっくりと石段を上りながら、その絢爛豪華な威容を目にして眉をひそめている。
いつもそうだった。
皇城以上に資金を投じて建設された神殿は、華美な装飾が施され、煌びやかな色彩で彩られている。
質素を重んじる軍人であるカイルは、それをついつい嫌悪してしい、自然そこに向かう足取りも重くなってしまうのだ。
しかし行かなければならない。
すべてはこの国を守るために。
***
神殿を入ってすぐの応接室に通されて、四半刻が過ぎていた。
いつものことながら歓迎されていない。
神殿は多くの特権が与えられ、高度な自治が許されている。
国における実質的な権限は、皇室とほぼ同等だった。
だからこその、この態度。
いやカイルだけではない。皇帝に対してもそうだった。
しかしそれでも国の根幹に関わることを話に来ているのだから、もう少し対応のしようがあるのではないかとカイルは思う。
けれどこんな時でさえ、神殿の態度が変わることはなかった。
それからさらにしばらく待たされた後、扉の向こうの廊下をひたひたと歩く足音が聞こえてきた。
カイルが居住まいを正した時、重い木の扉がゆっくりと開かれ、ローブの長い裾をずるずると引きずりながら、一人の神官が入ってきた。
長い長い髭、目を覆いつくしてしまっている豊かな眉、帽子の下から流れ落ちているふさふさとした髪、すべて真っ白だった。
立ち上がり会釈するカイルに向かって仰々しく片手を挙げ、「よい」とひと言言うと、椅子に座るように促し自分も腰掛けた。
カイルが座るのを待つこともなく、
「はて、元帥どのがどのような用で参られたものか……」
と、困惑も顕わに尋ねてきた。
さすがのカイルも顔を強張らせる。
「セクン大司祭さま、例の件で話をしようと申されたのは、大司祭さまではありませんでしたか?」
心持ち冷ややかなカイルの声音を気にする風もなく、セクン大司祭は豊かな眉の下の眼を大仰に見開き、
「そうであったかな……取るに足らぬことは忘れる癖があるものでな……」
そう言って、ぐふぐふと笑っている。
「取るに足らぬこと……」
つまりそれが神殿の見解だという事か。
ここで腹を立てればこちらの負け。
カイルよりも遥かに人生の経験を積んできたこの大司祭に対するには、それ相応の忍耐が必要なのだ。
「大司祭さま」
「…………」
「日程を早急に決めて頂きたいのですが」
大司祭はゆったりと背もたれにもたれかかり、胸の前で手を組み合わせている。
目は眉に覆われていて、今どんな表情をしているのか窺い知ることはできない。
「大司祭さま」
いっこうに返事をしない大司祭をもう一度呼んだ時だった。
いきなりすごい勢いで立ち上がったのだ。
老齢とは思えない身のこなしに唖然とするカイル。
「は、なんと……しかし……はあ………かしこまりました……」
何もない宙に話しかけていたかと思うと、がっくりと項垂れてしまった。
「いかがなさいました?」
見たこともないほど生気を失っている大司祭が心配になり、カイルがそばに寄ろうとすると、大司祭はゆっくりと頭を上げ、
「お許しが出た」
「は?」
「そなたのようなものにお会いになるそうだ」
いかにも意に染まぬかのように、大司祭は大きな溜め息をついてみせると、さらに横柄な態度で言った。
「これを誉れに思うて、ご慈悲に感謝するがよい。付いて参れ」
大司祭はまたローブをずるずると引きずって歩き始めた。
(いったい誰に会わせると言うのだ?)
心当たりがないわけではなかった。
けれどその人が自分に会うとは思えない。
となれば、この神殿の長たる教皇か?
しかしそれもありえないように思えた。死亡説すらある教皇は、ここ何年も公に姿を見せてはいなかったからだ。
考えても分からない。
仕方なくカイルは大司祭の後に付いて歩き始めた。
***
薄暗く長い廊下の突き当りには、別棟へと渡るための渡り廊下があった。
その渡り廊下の存在を知ってはいたものの、許可を得た者しかその先へは行けないため、カイルがそこに足を掛けるのはこの日が初めてだった。
大司祭は不満そうな顔でひと言、「深い慈悲に感謝せよ」とまた同じようなことを言って別棟に向かって歩き始めた。
カイルは感謝する気持ちなど起こるはずもなく、ただ黙々と風の吹きすさぶ石造りの渡り廊下を進んで行った。
別棟はこじんまりとした平屋の質素な家だった。
神殿の煌びやかさとは対照的な建物で、とても違和感を誘うものだった。
その前には狭い庭のようなものがあり、たくさんの草木が植えられていて、さながら林のようになっている。
そして、その向こうに見える平屋の家は素焼きレンガで造られ、屋根の上に出ている煙突からは白い煙が一条上っていた。
渡り廊下を渡って、その林の中へ入っていくと、井戸やベンチなども見ることができた。
誰かの田舎の家を訪れたような、そんな感じだった。
「ここにどなたかがお住まいなのですか?」
カイルは思わず聞いていた。
帝国元帥であるのに、神殿の奥にこんな場所があることなどまったく知らなかった。
「じきに分かる」
大司祭は多くを語りたがらなかった。
カイルもそれ以上話し掛けることはなく、緑の美しい林の中を進んでいき、そしてとうとう建物の前に出た。
間近で見ると、ますます質素という言葉がふさわしい家だった。飾り気ひとつない、けれど住みやすいようにきちんと整えられている。生活の匂いのする家だった。
2人が扉の前に立ち、大司祭がいよいよノックするという時、扉が内から勢いよく開けられた。
ぶつかりそうになり慌てて飛びのいた大司祭の大きな体の向こうに小柄な人がちらりと見えた。
「おや、早かったねえ」
鈴を転がすような可愛らしい声で、その人は感心したように言って微笑んだ。
「ナイルターシャさま」
大司祭が小さく呟くのを聞いた。
『ナイルターシャ』
その人の名は文献で見たことがある。
けれどそれは今から何百年も前のことを書いた文献だったはずだ。
彼女は、おそらく子孫か何かなのだ。
目の前に座るこの若く美しい女性は、『稀代の巫女姫』として名を残すあのナイルターシャの子孫なのだ。
きっと…………。
扉の前でぶつかりそうになった後、「井戸に水を汲みに行く」という彼女の手伝いをし、さらには今夜の薪が乏しいというので薪割りを手伝った。
そしてようやく家に入り落ち着いたのは、空が夕焼けに染まる頃だった。
カイルが文句ひとつ言わず雑用を片付けている間、大司祭はいっさい手を出すことはなかった。
***
夕飯のシチューが、暖炉に掛けられている鍋からいい匂いを漂わせている。
そして焼きたてのパンがテーブルに置かれた。
ナイルターシャと呼ばれた女性は魅惑的な笑みを浮かべて、
「よく手伝ってくれたお礼だよ。さあ、召し上がれ」
と言いいながら、カップにお茶を注いでいる。
「ナイルターシャさま、どうぞおかまいなく」
大司祭は口では遠慮するようなことを言いながら、さっそくパンに手を伸ばしている。
「私の顔に何か書いてあるかい? アルファラ家の坊や」
食事に手を付けることもせず、ナイルターシャを見つめていたカイルは、慌てたように首を振り、顔を赤らめながら「申し訳ありません」と言って頭を下げた。
それに対して彼女はくすりと笑うと、
「よい。若く見目良い男に見つめられるのは非常に心地いいからな」
と、冗談とも本気とも取れぬ口調で言った。そう言われたカイルは、「はあ……」としか相槌を打つことができず、そこで思い出したようにスプーンを手に取った。
もう十分夕飯の時刻。
(随分長居をしたものだ)
シチューを口に運びながら、女性を観察する。
神殿の最深部に造られたこのような家に住まい、大司祭から崇敬を受けている、皇帝すらその存在を知らない女性。
(これだから神殿は信用できないんだ)
「うまいか?」
「は?」
物思いに沈んでいたカイルは一瞬何を言われたのか分からなかった。
「うまいか、と聞いたのだ」
正直味わっていなかった。
返事を渋るカイルに、ナイルターシャはその綺麗な顔をしかめて見せてから、
「こんなに美味なものを食べているというのに、上の空で味わわぬと言うのは、人生の半分は損しているぞ」
口調はぞんざいだが、怒っているわけではなさそうだった。口元に笑みがある。
「申し訳ございません」
カイルはとりあえず謝っておいてから、今度はゆっくりその味を噛み締めながら皿を空にしたのだった。
「さて、ナイルターシャさま」
食事が終わってお茶を頂いている時に、ようやく大司祭は本題に取り掛かることにしたらしい。
セクン大司祭が鷹揚な性格なのか、ナイルターシャのペースに合わせるというのが彼女に対する時の処世術として確立しているのか、いずれにせよ、よく待ったものだとカイルは胸の奥でそう思っていた。
「こうして本来この場所にいるはずのない者をお呼びになった意図をお聞かせいただけませんか?」
そう言ってセクン大司祭はカイルをちらっと横目で見た。
やはり大司祭は、この若い元帥のことを快くは思っていないらしい。
ナイルターシャは「そうね」と、今までとは違う静かな声音で言って席を立ち、隣の部屋へと入って行った。
足首に届くほどの長く艶やかな髪が、室内灯の光を受けて輝いていた。
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