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バレた
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噴水広場を抜けて一本裏の道に入ったジュリエーヌさんはそこから遠くない店に足を進めた。
ここまで俺は一言も発することなく、連れ去られている。
美女に抱えられる男(仮)の構図は……どう見られていたんだろうな。
ジュエリーヌさんが入ったのは、カフェだった。
ネコミミ少女がいらっしゃいませー、と軽快に声を掛けて来て、俺を見てビシッと固まった。
「あっ、ちょ、下ろして!」
「はいはい」
ジュエリーヌさんに抱えられたままだった。
慌ててジュエリーヌさんの腕から下りるけれど、そのまま肩を抱かれて店内を歩くことに……。
慣れた様子のジュエリーヌさんだけど、ネコミミ少女が未だに固まっているぞ。
どうすんだよ。
ネコミミ少女に気遣いの視線を向けたらハッとされた。
そうして何か照れた表情をされてしまう。
恥ずかしいのはこっちだけどもな!
誤魔化しの笑顔を向けて頭を下げる。
ジュエリーヌさんはその間も店内を進み、店の隅にある席に俺を座らせた。
観葉植物がこの席を隠すようにして置かれている。
俺の向かい側にジュエリーヌさんが腰を下ろす時を見計らってネコミミ少女がメニューと水を置いて行った。
何回もチラチラこっちを見て行ったのは何故だろうね!
……わかってる、抱っこのせいです……。
「本当に食事はいいの?」
「あ? ああ、飲み物だけ」
「わかったわ。いいかしら?」
「はい! お伺いいたします!」
頬を紅潮させるネコミミ少女に注文を頼み、真っ直ぐ俺を見つめるジュリエーヌさんに、なんとなく居心地の悪さを感じる。
ジュリエーヌさんとの出会いは、その時仲良くなっていた男のデートの相談を受け、『FreeDom』の事を聞いたからだ。
そう、着て行く服に悩んでたから、有名だという店に視察に行ったのだ。
勿論腐ったおデートのね!
服目当てで行ったんだけど……オネェNPCに初めて出会った時、カップリングの妄想という本能に従って仲良くなろうと思ったのだ。
ついでに、仲良くなったらオーダーメイドも受けてくれるかもしれないという打算もあった。
オーダーメイドは一般人NPCの間で都市伝説的な噂になっていたからね。
高貴なお方に世間話で聞いてみたら本当のことだったもんで、つい。
オーダーメイド受けてくれるぐらいには仲良くなれたので、カップリング……今は無理か。
ぶっちゃけお相手に悩んでカップリング出来ていなかったんだよな。
勿体ない……。
ついでに服飾の受注クエストはジュエリーヌさんの所で受けてる。
親密度と小遣い稼ぎにね!
「で、ちょっと聞きたいんだけど」
「んぇ?」
「……アンタ、男じゃなかったの?」
「うぐ……っ」
めっちゃ答えにくい所ぶっこんでこられましたな!
俺は今まで男だったのだ。
勿論サイズを測ってもらうために、上半身裸になったことだってある。
何故バレたのだ、と思ったけれどすぐ思い当たった。
さっき抱き着いてしまった時に、当たったのだろう。
なにが、って胸が。
出っ張ってるんだから、それも仕方ない話だろう……けども、こんなに早くバレるとは。
何て言えばいいんだ?
俺をじっと見つめて、嘘を見抜こうとしてるような突き刺さる視線に、目が泳ぐ。
ゲームとか言ってもいいのか?
いや、頭おかしいと思われるだろう。
それに今、『俺』しかいないのだとしたら、NPCの間で不審者扱いは困る。
今まで築いてきた親密度がパーになるとか……それも嫌だ。
じゃあ、どう答えるべきなのか。
「アタシにも言いにくいことなの?」
「あー、の……その、えと……何て言えばいいか……えと……」
しどろもどろでそう言えば、ジュエリーヌさんの瞳が更に細められて、まるでカエルになってしまったような錯覚を覚える。
ジュエリーヌさんは蛇じゃないはずなんだけどな……。
目で言え、と命令されている状態で、俺は口を閉じておくことは出来なかった。
かといって『ここはゲームの中なんです』とは口が裂けても言えない。
と、なると俺の性別に関してだが……どう言えばいいだろうか。
何かいい案はないだろうか、と懸命に頭を回転させて、ふととある漫画を思い出した。
それは呪いで性別が変わってしまった男が主人公の話だ。
こ れ だ !
ここまで俺は一言も発することなく、連れ去られている。
美女に抱えられる男(仮)の構図は……どう見られていたんだろうな。
ジュエリーヌさんが入ったのは、カフェだった。
ネコミミ少女がいらっしゃいませー、と軽快に声を掛けて来て、俺を見てビシッと固まった。
「あっ、ちょ、下ろして!」
「はいはい」
ジュエリーヌさんに抱えられたままだった。
慌ててジュエリーヌさんの腕から下りるけれど、そのまま肩を抱かれて店内を歩くことに……。
慣れた様子のジュエリーヌさんだけど、ネコミミ少女が未だに固まっているぞ。
どうすんだよ。
ネコミミ少女に気遣いの視線を向けたらハッとされた。
そうして何か照れた表情をされてしまう。
恥ずかしいのはこっちだけどもな!
誤魔化しの笑顔を向けて頭を下げる。
ジュエリーヌさんはその間も店内を進み、店の隅にある席に俺を座らせた。
観葉植物がこの席を隠すようにして置かれている。
俺の向かい側にジュエリーヌさんが腰を下ろす時を見計らってネコミミ少女がメニューと水を置いて行った。
何回もチラチラこっちを見て行ったのは何故だろうね!
……わかってる、抱っこのせいです……。
「本当に食事はいいの?」
「あ? ああ、飲み物だけ」
「わかったわ。いいかしら?」
「はい! お伺いいたします!」
頬を紅潮させるネコミミ少女に注文を頼み、真っ直ぐ俺を見つめるジュリエーヌさんに、なんとなく居心地の悪さを感じる。
ジュリエーヌさんとの出会いは、その時仲良くなっていた男のデートの相談を受け、『FreeDom』の事を聞いたからだ。
そう、着て行く服に悩んでたから、有名だという店に視察に行ったのだ。
勿論腐ったおデートのね!
服目当てで行ったんだけど……オネェNPCに初めて出会った時、カップリングの妄想という本能に従って仲良くなろうと思ったのだ。
ついでに、仲良くなったらオーダーメイドも受けてくれるかもしれないという打算もあった。
オーダーメイドは一般人NPCの間で都市伝説的な噂になっていたからね。
高貴なお方に世間話で聞いてみたら本当のことだったもんで、つい。
オーダーメイド受けてくれるぐらいには仲良くなれたので、カップリング……今は無理か。
ぶっちゃけお相手に悩んでカップリング出来ていなかったんだよな。
勿体ない……。
ついでに服飾の受注クエストはジュエリーヌさんの所で受けてる。
親密度と小遣い稼ぎにね!
「で、ちょっと聞きたいんだけど」
「んぇ?」
「……アンタ、男じゃなかったの?」
「うぐ……っ」
めっちゃ答えにくい所ぶっこんでこられましたな!
俺は今まで男だったのだ。
勿論サイズを測ってもらうために、上半身裸になったことだってある。
何故バレたのだ、と思ったけれどすぐ思い当たった。
さっき抱き着いてしまった時に、当たったのだろう。
なにが、って胸が。
出っ張ってるんだから、それも仕方ない話だろう……けども、こんなに早くバレるとは。
何て言えばいいんだ?
俺をじっと見つめて、嘘を見抜こうとしてるような突き刺さる視線に、目が泳ぐ。
ゲームとか言ってもいいのか?
いや、頭おかしいと思われるだろう。
それに今、『俺』しかいないのだとしたら、NPCの間で不審者扱いは困る。
今まで築いてきた親密度がパーになるとか……それも嫌だ。
じゃあ、どう答えるべきなのか。
「アタシにも言いにくいことなの?」
「あー、の……その、えと……何て言えばいいか……えと……」
しどろもどろでそう言えば、ジュエリーヌさんの瞳が更に細められて、まるでカエルになってしまったような錯覚を覚える。
ジュエリーヌさんは蛇じゃないはずなんだけどな……。
目で言え、と命令されている状態で、俺は口を閉じておくことは出来なかった。
かといって『ここはゲームの中なんです』とは口が裂けても言えない。
と、なると俺の性別に関してだが……どう言えばいいだろうか。
何かいい案はないだろうか、と懸命に頭を回転させて、ふととある漫画を思い出した。
それは呪いで性別が変わってしまった男が主人公の話だ。
こ れ だ !
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