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滲みるねぇ
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俺は元々女だった、だが、とある遺跡に潜った時に、ちょっとミスって呪いにかかってしまった。
その呪いは性別を変えるもので、俺は男になってしまったのだ。
それはジュエリーヌさんと出会う前の話で、この度漸く解呪アイテムを揃えて、晴れて女に戻ることが出来た。
うむ、クエストでもそういうのあったし、これでいこう。
その呪いは性別が変わるんじゃなくて、動物になってしまうものだったけど。
嘘だと見抜かれないか心配だったけど、俺の言い分をそれなりに信用してくれたらしい。
黙ってたことも、『冒険者がそんなミスをするようなおっちょこちょいだと難しい依頼は頼まれなくなってしまうかもしれない』と懸念したんだと言えば、微妙そうな顔をしながらも頷いてくれた。
「……じゃあ、元々が女だったのね?」
「うん。ごめん」
「別に謝らなくてもいいわ。それならそうと言ってくれれば良かったのに」
「言えないって。俺女なんだぜ、って男の体で言うのもおかしいし、信じられないだろ?」
「まあそうだけど……でも、良かったわ」
「ん? 何が?」
「いいえぇ、なんでも」
訝しげな顔で俺の話を聞いていたジュエリーヌさんだったけど、苦笑いだったり微笑みだったりを見せてくれた。
良かった、なんとか親密度を下げずに終えたらしい。
まあ、胸がバレちゃってんだから今現在、俺が女であることに間違いはないし、立証することも今は難しいからそれ以上は踏み込んで来なかった。
最後に何か、含みのある笑顔を見せられたけど。
俺の説明が終わった頃に、漸く料理が運ばれてきた。
どうやら真面目な話をしていることが店員さんにバレていた模様。
ジュエリーヌさんが「気を遣わせてごめんなさいね」と謝っていたから。
俺も一つ頭を下げて、テーブルに乗せられたオレンジジュースで、からからになった喉を潤す。
っかー、滲みるねぇ。
世間話をしつつ、ジュエリーヌさんの食べ終わりを待つ。
これからの予定の話になって、買い物をしなければいけない、と言ったら一緒に来ると言い出した。
「え、店あんだろ?」
「ふふ、ミーアが居るから大丈夫よ、少しぐらい」
ミーアさんというのはジュエリーヌさんの店で働く針子さんだ。
この人はキツネの獣人さんで、職人気質のジュエリーヌさんの右腕になる。
まあ、簡単に言えば『服を作るのに夢中になって店をほったらかしてしまうジュエリーヌさんの代わりに店を切り盛りしている人』である。
いいって、気にしないの、と数度の押し問答を繰り返し……結局ジュースも奢ってもらって一緒に大通りに戻ることになった。
何故かまた抱っこされそうになって、慌てて距離を取るはめになったけどな。
ジュエリーヌさんはするりと俺の腕にその腕を回してきて、並んで歩くことで収めて来た。
いいけどさ……店員さん達になんか生暖かい目で見られていたのが微妙に気になる。
更に身長差のせいで、若干肩が辛いんだけど、言うまい。
「何を買うつもりなの?」
「あー……女物のやつとか」
そう、下着が一枚もない。
……あれ、いくらオネェとはいえ女物の下着って一緒に買いに行っていいものか?
あ、でもこれなら一人で行けるんじゃ。
そう思ってチラリと横顔を見上げる。
「じゃあこっちよぉ」
ダメっぽい。
腕を引いて進むジュエリーヌさんは、俺を離すつもりはなさそうだ。
俺は諦めてジュエリーヌさんに付いて行くことにした。
そうして着いたのは、可愛らしい飾りで飾り付けられたお店だった。
物凄く入りにくい!
滅茶苦茶女の子のお店!って感じがする。
引き攣った顔でジュエリーヌさんを見上げれば、にっこり微笑まれて連れ込まれた。
なんで一応女である俺が腰が引けて、男であるジュエリーヌさんが平気なんだよ!
あ、オネェだからか。
いや、納得いかん!
その呪いは性別を変えるもので、俺は男になってしまったのだ。
それはジュエリーヌさんと出会う前の話で、この度漸く解呪アイテムを揃えて、晴れて女に戻ることが出来た。
うむ、クエストでもそういうのあったし、これでいこう。
その呪いは性別が変わるんじゃなくて、動物になってしまうものだったけど。
嘘だと見抜かれないか心配だったけど、俺の言い分をそれなりに信用してくれたらしい。
黙ってたことも、『冒険者がそんなミスをするようなおっちょこちょいだと難しい依頼は頼まれなくなってしまうかもしれない』と懸念したんだと言えば、微妙そうな顔をしながらも頷いてくれた。
「……じゃあ、元々が女だったのね?」
「うん。ごめん」
「別に謝らなくてもいいわ。それならそうと言ってくれれば良かったのに」
「言えないって。俺女なんだぜ、って男の体で言うのもおかしいし、信じられないだろ?」
「まあそうだけど……でも、良かったわ」
「ん? 何が?」
「いいえぇ、なんでも」
訝しげな顔で俺の話を聞いていたジュエリーヌさんだったけど、苦笑いだったり微笑みだったりを見せてくれた。
良かった、なんとか親密度を下げずに終えたらしい。
まあ、胸がバレちゃってんだから今現在、俺が女であることに間違いはないし、立証することも今は難しいからそれ以上は踏み込んで来なかった。
最後に何か、含みのある笑顔を見せられたけど。
俺の説明が終わった頃に、漸く料理が運ばれてきた。
どうやら真面目な話をしていることが店員さんにバレていた模様。
ジュエリーヌさんが「気を遣わせてごめんなさいね」と謝っていたから。
俺も一つ頭を下げて、テーブルに乗せられたオレンジジュースで、からからになった喉を潤す。
っかー、滲みるねぇ。
世間話をしつつ、ジュエリーヌさんの食べ終わりを待つ。
これからの予定の話になって、買い物をしなければいけない、と言ったら一緒に来ると言い出した。
「え、店あんだろ?」
「ふふ、ミーアが居るから大丈夫よ、少しぐらい」
ミーアさんというのはジュエリーヌさんの店で働く針子さんだ。
この人はキツネの獣人さんで、職人気質のジュエリーヌさんの右腕になる。
まあ、簡単に言えば『服を作るのに夢中になって店をほったらかしてしまうジュエリーヌさんの代わりに店を切り盛りしている人』である。
いいって、気にしないの、と数度の押し問答を繰り返し……結局ジュースも奢ってもらって一緒に大通りに戻ることになった。
何故かまた抱っこされそうになって、慌てて距離を取るはめになったけどな。
ジュエリーヌさんはするりと俺の腕にその腕を回してきて、並んで歩くことで収めて来た。
いいけどさ……店員さん達になんか生暖かい目で見られていたのが微妙に気になる。
更に身長差のせいで、若干肩が辛いんだけど、言うまい。
「何を買うつもりなの?」
「あー……女物のやつとか」
そう、下着が一枚もない。
……あれ、いくらオネェとはいえ女物の下着って一緒に買いに行っていいものか?
あ、でもこれなら一人で行けるんじゃ。
そう思ってチラリと横顔を見上げる。
「じゃあこっちよぉ」
ダメっぽい。
腕を引いて進むジュエリーヌさんは、俺を離すつもりはなさそうだ。
俺は諦めてジュエリーヌさんに付いて行くことにした。
そうして着いたのは、可愛らしい飾りで飾り付けられたお店だった。
物凄く入りにくい!
滅茶苦茶女の子のお店!って感じがする。
引き攣った顔でジュエリーヌさんを見上げれば、にっこり微笑まれて連れ込まれた。
なんで一応女である俺が腰が引けて、男であるジュエリーヌさんが平気なんだよ!
あ、オネェだからか。
いや、納得いかん!
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