腐女子の俺が逝く! ゲームから出られなくなった俺は趣味を堪能するはずが……あれあれ?

冬生羚那

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まったり

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 レオンにも小瓶を渡し、二人で汚れの上に黄色のスライムを落としていく。
 そうして長くない時間の間で、床の汚れは綺麗になった。
 その間に放り投げられていた服と下着を拾い、脱衣場の洗濯機に放り込んで回しておく。
 帰ってきたら干そう。
 リビングの棚に置いておいた錠剤の入った小瓶から、一粒取り出し飲んでおく。
 これが避妊薬だ。
 水がなくても飲める小さいものだけど、喉もついでに潤す為に水も飲む。

 そうして黄色から透明に近い状態になったスライムを小瓶に回収して回る。
 しっかりと蓋をして、また収納庫に戻しておくのだ。
 これが再び黄色に戻ったら、また使える。

 このスライムは他にも色々種類があるが、初期の頃のものだ。
 他のスライムは違う用途用ばかりなので、床などの掃除に使えるのはこの一種類だけだった。

「改良しておけばよかったな」

 今さら言っても詮無いことだが、ぽつりと零れてしまった。

 予定外の事態に時間を取られ、気が付けば昼も超えていた。
 二人で買ってきた料理を食べる。
 本当なら泉で摂ろうと思っていたんだけどな。

 ここでレオンと話していて知ったのだが、NPCにはインベントリがないらしい。
 なので皆アイテムバッグに色々突っ込んでいるそうだ。
 これはただ沢山のものが入るバッグである。
 なので、俺がインベントリからほっかほかの弁当を取り出したら驚かれ、外では絶対使うなとまで言われてしまった。
 ……もう使ったあとなんだが、大丈夫だろうか……。
 いや、大丈夫だと思おう、うん。

 アイテムバッグの中には時間経過を遅くするものはあるらしいが、数が少ないらしい。
 そうなれば、お高いそうだ。
 容量でも金額に差があり、レオンが腰につけているのはうん百万程のアイテムバッグだそうだ。
 その中に更にお高いアイテムバッグを入れているんだと。
 今日は泉に精霊を確認しにいくだけだからこの形だと言う。
 色々考えてんだなぁ。

 俺のアイテムインベントリには制限がない。
 制限はなくてもそこそこ片づけておかないと何をいれてあるか忘れてしまうから、使わないものは家に置いておいたりしてるけどな。
 ドロップ品や回復薬などはスタックも出来る。
 武器インベントリや防具インベントリも拡張済みで、旅先でも使えるものは殆どインベントリに入っている。
 俺が使っているアイテムバッグは回復薬しか入っていない、初期の辺りに貰えるものだ。
 インベントリが外で使えないとなると、もう少し大き目のものを準備しておく方がいいかもしれない。
 外で誤魔化せるようにね。

 食後のお茶を飲んで、漸く家を出ることになった。
 ここから泉までは、歩いて一時間程度だ。
 まったりしたおかげで、普通に歩けるぐらいには回復した。

 家の裏手から森に入れば、そこには雑草を簡単に刈っただけの道がある。
 俺が泉に行く為に使う道だ。
 そこかしこで若干伸びて来ているが、然程気にならない。
 しかし一人分の道なので、手に草刈鎌を持って、道を阻む草をざっくざく刈りながら進む。

 生い茂る草も、木々も、風に揺られていて、心地よい風が頬を撫でる。
 疲れも吹き飛ぶようだ。

「魔物は出てくるのか?」
「あー、たまに? どっちかってえと動物の方が出てくるよ」

 熊とかな。
 そう言うとレオンが微妙に鼻に皺を寄せた。
 大した強さじゃないから、困らないよと笑って進む。

 道を歩く音で、ぴょこぴょこと動物たちが逃げていく。
 驚かすつもりはないが、動物たちの方が遭遇した時に恐怖を感じるだろう。
 こっちには狼が居るからな。
 ……もしかしたら音を立てなくても逃げてくかもしんない。

 のんびりと道を進み、漸く泉の近くまで来た。
 泉の畔では色んな動物が各々思いのままに休んでいる。
 その中に熊を見つけてレオンが腰に手を伸ばした。

「大丈夫」
「……なにがだ」

 レオンを手で制して笑う。
 この泉には精霊が住んでいる。
 そしてその周辺では諍いが禁じられているのだ。
 争った瞬間、弾き出される。

「だから、この泉の周辺は安全なんだよ」
「……へぇ」

 腰から手を離したレオンはきょろきょろと周囲を探る。
 動物たちはそんなレオンをちらりと一瞥しただけで、またまったりと休み始めた。

 サクサクと土と草を踏み、泉に近づく。
 すると今の今まで凪いでいた水面に波紋が広がる。
 それは泉の中心からで、誰も近寄っていないし、石が投げ込まれたわけでもない。
 何もない泉の中心からさあああ、と波紋が広がり……泉から頭が生えてきた。

「よ、久しぶり」

 俺はしゅぴっと手を上げてそう告げる。
 泉から生えてきたのは頭だけじゃなく、首が、上半身が、下半身が次いで現れ、そうして俺に飛びついてきた。

「クピド! 久しぶり! もう、遅いよ!」
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