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オナーニッビュル国を歩く
じゅうはちわめ
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エルさんの荷物を俺の異空間収納にしまっていると、後ろで実験道具が、とエルさんが騒ぐ。
それをジュークが押さえてくれるんだけど、恨めしそうな表情でじーっと見つめられてしまって、俺はエルさんと目を合わせられなかった。
「戸締りは大丈夫だな?」
「うん。……ねえ、実験……」
「では行くぞ。エルも来るならば馬車も必要だろう」
「馬車ってどこで買えるの?あ、でもお金ないよ?」
「そうだな。ここの王都でクエストを受けて稼いで買う。それに資金はいくらあっても困らんからな」
「わかった。俺も頑張るからね!」
「ふ……無理はするな」
「ねえ、実験道具……」
実験道具しか頭にないエルさんをスルーして俺達は町を後にした。
オナーニッビュル国はセークスバッコン国より大きいので、魔物の討伐が人の住む近辺以外は手が回らないらしい。
というのも、この国に来て魔物に襲われるようになったことに疑問を持った俺が聞いたんだけど。
魔物は倒すとふわーっと消えていく。
その跡にアイテムとかが落ちている。
不思議現象だ。
ゲームみたいだよね。
道中現れる魔物は強くはないけど、数匹で現れるのがザラだ。
ジュークは剣だけど、エルさんはなんと篭手を着けて素手だ。
するりと魔物の傍に近付き、ジュークに向かって殴り飛ばしジュークが真っ二つ。
エルさんが魔物をジュークに向かって蹴り飛ばしジュークが真っ二つ。
連携プレーすげえ、と素直に感動した。
「ふわぁ、凄い凄い!」
「ゴブリンぐらいお前倒せるだろう?」
「やだ、汚れる」
なんとエルさんは手加減しているらしい。
汚れたくないからトドメはジュークに斬らせているって……それはそれで凄いし、エルさんの方から飛んでくるゴブリンを一刀両断するジュークも凄い。
安全ではあるけど、俺の出番は一切ありません。
それは問題かもしれない。
でも接近戦が俺に出来るかは不安である。
元々がアクティブな方ではなかったからね。
異空間収納に拝借してきた剣とかあるけど、どうせなら遠距離を希望したい。
自分が接近戦が嫌なことに加え、ジュークもエルさんも近接武器だしね。
「シオンは武器なに?」
「いや……まだ決まってないです」
「そうだな……。王都で武器を見繕わないとダメだな」
「俺出来たら遠距離がいいんですけど……」
「遠距離か……僕の薬品でも投げる?」
そう言ってエルさんはポケットから薬品をいくつか取り出した。
瓶をポケットに入れながら魔物を殴ったり蹴ったりと、よく割らないものだと思う。
「こっちは爆薬、こっちは凍らせて足止めさせるやつ。こっちは睡眠薬入りでこっちは麻痺薬」
「風の向きとか考えないとダメですね」
「そうだね」
「うーん…………あ、そうだ。俺に考えがあります!」
かっぽかっぽと道を歩いていると、またゴブリンが現れた。
数は5匹、ジュークとエルさんが相対して睨みを効かせている間に、俺は俺にしか見えない地図に指を滑らせる。
赤い印をタップして、魔法を使う。
セーなんちゃら国の玉座の間でやったあれである。
ゴブリン達はその場で崩れて地面に倒れ、ふがふごと鼾をかきはじめた。
「へえ、これが勇者の力か」
「そうです。俺が今使えるのは眠らせたり幻覚を見せたりするやつで、攻撃系じゃないんですけど。ジュークやエルさんの補助は出来るかと。……ただ、ゴブリンぐらいならあまり必要ないかなぁ……」
鼻提灯を膨らませるゴブリン達を見下ろしながら、3人それぞれが頭を悩ませる。
俺の使う魔法はただの睡眠魔法(スリープ)というやつである。
だけどこの世界でこの魔法を使うと範囲魔法となり、巻き込まれない為にも味方は近づけない。
その範囲も人それぞれで、魔力に依存するらしい。
俺の魔法は味方を巻き込まないから範囲とか考える必要は一切ないけどね。
ジュークやエルさん、この世界の原住民の人達が『現実』で生きているのに対して、俺だけがまるで『ゲーム』をしているみたいだが、器用でもないので味方を巻き込まずに済ませることが出来るのはとてもありがたい。
そのせいで俺の出る幕が一切ないのも悩むところだけどさ!
「うーん……もう少し考えてみないとダメだね」
「そうだな。まあ金を稼ごうと思うとこんな雑魚でははした金にもならんからな。俺たちが受けるクエストはもっと高レベルになる。そこを考えれば俺たちを巻き込まない範囲魔法は確実に重宝するだろう」
「そうだね。これが通用するならドラゴンとかでもいけるかもね」
「はは、だといいなぁ」
からからと笑いあう俺たち。
その間に足元に転がっていたゴブリン達は光の粒となって消えていった。
それをジュークが押さえてくれるんだけど、恨めしそうな表情でじーっと見つめられてしまって、俺はエルさんと目を合わせられなかった。
「戸締りは大丈夫だな?」
「うん。……ねえ、実験……」
「では行くぞ。エルも来るならば馬車も必要だろう」
「馬車ってどこで買えるの?あ、でもお金ないよ?」
「そうだな。ここの王都でクエストを受けて稼いで買う。それに資金はいくらあっても困らんからな」
「わかった。俺も頑張るからね!」
「ふ……無理はするな」
「ねえ、実験道具……」
実験道具しか頭にないエルさんをスルーして俺達は町を後にした。
オナーニッビュル国はセークスバッコン国より大きいので、魔物の討伐が人の住む近辺以外は手が回らないらしい。
というのも、この国に来て魔物に襲われるようになったことに疑問を持った俺が聞いたんだけど。
魔物は倒すとふわーっと消えていく。
その跡にアイテムとかが落ちている。
不思議現象だ。
ゲームみたいだよね。
道中現れる魔物は強くはないけど、数匹で現れるのがザラだ。
ジュークは剣だけど、エルさんはなんと篭手を着けて素手だ。
するりと魔物の傍に近付き、ジュークに向かって殴り飛ばしジュークが真っ二つ。
エルさんが魔物をジュークに向かって蹴り飛ばしジュークが真っ二つ。
連携プレーすげえ、と素直に感動した。
「ふわぁ、凄い凄い!」
「ゴブリンぐらいお前倒せるだろう?」
「やだ、汚れる」
なんとエルさんは手加減しているらしい。
汚れたくないからトドメはジュークに斬らせているって……それはそれで凄いし、エルさんの方から飛んでくるゴブリンを一刀両断するジュークも凄い。
安全ではあるけど、俺の出番は一切ありません。
それは問題かもしれない。
でも接近戦が俺に出来るかは不安である。
元々がアクティブな方ではなかったからね。
異空間収納に拝借してきた剣とかあるけど、どうせなら遠距離を希望したい。
自分が接近戦が嫌なことに加え、ジュークもエルさんも近接武器だしね。
「シオンは武器なに?」
「いや……まだ決まってないです」
「そうだな……。王都で武器を見繕わないとダメだな」
「俺出来たら遠距離がいいんですけど……」
「遠距離か……僕の薬品でも投げる?」
そう言ってエルさんはポケットから薬品をいくつか取り出した。
瓶をポケットに入れながら魔物を殴ったり蹴ったりと、よく割らないものだと思う。
「こっちは爆薬、こっちは凍らせて足止めさせるやつ。こっちは睡眠薬入りでこっちは麻痺薬」
「風の向きとか考えないとダメですね」
「そうだね」
「うーん…………あ、そうだ。俺に考えがあります!」
かっぽかっぽと道を歩いていると、またゴブリンが現れた。
数は5匹、ジュークとエルさんが相対して睨みを効かせている間に、俺は俺にしか見えない地図に指を滑らせる。
赤い印をタップして、魔法を使う。
セーなんちゃら国の玉座の間でやったあれである。
ゴブリン達はその場で崩れて地面に倒れ、ふがふごと鼾をかきはじめた。
「へえ、これが勇者の力か」
「そうです。俺が今使えるのは眠らせたり幻覚を見せたりするやつで、攻撃系じゃないんですけど。ジュークやエルさんの補助は出来るかと。……ただ、ゴブリンぐらいならあまり必要ないかなぁ……」
鼻提灯を膨らませるゴブリン達を見下ろしながら、3人それぞれが頭を悩ませる。
俺の使う魔法はただの睡眠魔法(スリープ)というやつである。
だけどこの世界でこの魔法を使うと範囲魔法となり、巻き込まれない為にも味方は近づけない。
その範囲も人それぞれで、魔力に依存するらしい。
俺の魔法は味方を巻き込まないから範囲とか考える必要は一切ないけどね。
ジュークやエルさん、この世界の原住民の人達が『現実』で生きているのに対して、俺だけがまるで『ゲーム』をしているみたいだが、器用でもないので味方を巻き込まずに済ませることが出来るのはとてもありがたい。
そのせいで俺の出る幕が一切ないのも悩むところだけどさ!
「うーん……もう少し考えてみないとダメだね」
「そうだな。まあ金を稼ごうと思うとこんな雑魚でははした金にもならんからな。俺たちが受けるクエストはもっと高レベルになる。そこを考えれば俺たちを巻き込まない範囲魔法は確実に重宝するだろう」
「そうだね。これが通用するならドラゴンとかでもいけるかもね」
「はは、だといいなぁ」
からからと笑いあう俺たち。
その間に足元に転がっていたゴブリン達は光の粒となって消えていった。
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