4 / 13
驚いた
しおりを挟む
お風呂から上がって来たいーちゃんはシャツにズボンとラフな格好で出てきた。
髪をちゃんと拭いてなくてポタポタ滴が落ちてるけど、まあいい。
……なんか、いーちゃんには聞きたいこといっぱいあるよ。
「おー、腹減ってたんだー!食べていい?食べていい?」
「うん、勿論。あ、でも髪もうちょっと乾かそうよ」
「大丈夫大丈夫、食ってりゃ乾く!」
……なんか昔よりおおらかになってない?
昔はもっと静かな感じで、落ち着いたお兄さんって雰囲気だったんだけどなぁ?
ばくばくお饅頭やお菓子を頬張る姿には叔父の威厳とかさっぱりなかった。
食べることに夢中ないーちゃんに苦笑いが浮かぶけど、久しぶりの家族との団欒って感じで、胸がじんわり温かくなった。
「はー、やっぱこっちの食い物は美味い」
「いーちゃん……晩御飯入るの……?」
「入るって!え、菜摘ちゃん作ってくれるの?いーちゃん嬉しいな!」
「簡単なものしか作れないけどね」
こうやって見てるといーちゃんの方が子供っぽい気がして、でもこんな気楽なやり取りや『家族』とのやり取りが嬉しくて、視界がじわりと滲んでしまう。
俯いて涙を隠すわたしを、子供っぽい表情から優しい大人の顔に変えて、いーちゃんは静かにわたしを抱き締めてくれた。
温かい人の温もりにしがみついて、わたしはまた泣いてしまった。
「落ち着いた?」
「ん゛……ごめんねいーぢゃ……」
「あああ、声ガラガラ。お茶飲んで」
肩に掛けていたタオルで目元を拭ってくれるいーちゃんの胸元は、わたしの涙や鼻水で大変きったないことになってしまっていた。
慌てて謝るけれど、気にしなくていいよ、と頭を撫でられていーちゃんの優しさは全然変わってないんだな、って思った。
「……それでいーちゃん、さっきの話だけど……」
「ああ、そうだね。ちゃんと話しておかないとダメだよね」
お茶を飲んで心を落ち着けたわたしはいーちゃんに話を切り出す。
お風呂に入って綺麗になったいーちゃんはやっぱりちょっとイケメンで、モテそうだな、なんて関係ないことを考える余裕も出来ていた。
そうしてまずはわたしが今の状況を説明する。
飯塚さんにお願いして、この家を相続する手続き書類書いちゃったからね。
祖父もそのつもりだったみたいだけど、いーちゃんがそれを知ってるかわからなかったから。
家の相続に関してはいーちゃんも宜しくな、ってにっこり笑って話がついてしまった。
「でも、いくらいーちゃんが放蕩息子でも、相続するの、わたしでいいの?」
「ちょ、放蕩息子って……」
「ふふ、おじいちゃんがそう言ってたよ」
顔に思いっきり心外だ!と書いているいーちゃんだけど、祖父曰く、殆ど帰って来ないから放蕩息子でいいんだ、って言ってたよと伝えると物凄く唸ってた。
「お仕事で長く家空けるにしても、家主はいーちゃんの方がいいんじゃない?」
「あー…………いや、菜摘ちゃんでいいよ」
「でも……」
「そこは色々説明しなくちゃいけないことがあるんだ」
そう言ったいーちゃんの表情はとても真剣なものになっていて、思わず背筋が伸びた。
「菜摘ちゃんには、そうだな……信じられないと思うんだけど、信じて欲しいことがある」
「うん?」
「実際に見てもらった方が早いかな?」
そう言って立ち上がったいーちゃんに手を引かれ、わたしは家の奥……いーちゃんと再会した部屋へと移動する。
途中でパチンと音がして、どうやら奥の部屋の電気を点けたっぽい。
扉を開いた先は、気付かなかったけど沢山の物が置いてあった。
それはまるでお店みたいで、家の裏手側にあるものじゃない気がする。
こういうのは道沿いに作るべきで、庭の方へ作るものじゃないだろう。
そんな疑問を抱きつつ、ぐるりと部屋の中を見回す。
なんだか違和感があって、首を傾げているといーちゃんが笑った。
「ここは父さんの店でさ、中身は後で。見せたいのはこっち」
そう言っていーちゃんは置いていた自分の靴を履く。
わたしは置きっぱなしになっていた祖父のつっかけを引っ掛けて、いーちゃんの後ろをついて行く。
「この店の名前はさ、安直なもんで『異世界の道具屋さん』っつーんだよ」
笑ってそう言ったいーちゃんが、庭への扉を開くと見知らぬ世界が広がっていた。
髪をちゃんと拭いてなくてポタポタ滴が落ちてるけど、まあいい。
……なんか、いーちゃんには聞きたいこといっぱいあるよ。
「おー、腹減ってたんだー!食べていい?食べていい?」
「うん、勿論。あ、でも髪もうちょっと乾かそうよ」
「大丈夫大丈夫、食ってりゃ乾く!」
……なんか昔よりおおらかになってない?
昔はもっと静かな感じで、落ち着いたお兄さんって雰囲気だったんだけどなぁ?
ばくばくお饅頭やお菓子を頬張る姿には叔父の威厳とかさっぱりなかった。
食べることに夢中ないーちゃんに苦笑いが浮かぶけど、久しぶりの家族との団欒って感じで、胸がじんわり温かくなった。
「はー、やっぱこっちの食い物は美味い」
「いーちゃん……晩御飯入るの……?」
「入るって!え、菜摘ちゃん作ってくれるの?いーちゃん嬉しいな!」
「簡単なものしか作れないけどね」
こうやって見てるといーちゃんの方が子供っぽい気がして、でもこんな気楽なやり取りや『家族』とのやり取りが嬉しくて、視界がじわりと滲んでしまう。
俯いて涙を隠すわたしを、子供っぽい表情から優しい大人の顔に変えて、いーちゃんは静かにわたしを抱き締めてくれた。
温かい人の温もりにしがみついて、わたしはまた泣いてしまった。
「落ち着いた?」
「ん゛……ごめんねいーぢゃ……」
「あああ、声ガラガラ。お茶飲んで」
肩に掛けていたタオルで目元を拭ってくれるいーちゃんの胸元は、わたしの涙や鼻水で大変きったないことになってしまっていた。
慌てて謝るけれど、気にしなくていいよ、と頭を撫でられていーちゃんの優しさは全然変わってないんだな、って思った。
「……それでいーちゃん、さっきの話だけど……」
「ああ、そうだね。ちゃんと話しておかないとダメだよね」
お茶を飲んで心を落ち着けたわたしはいーちゃんに話を切り出す。
お風呂に入って綺麗になったいーちゃんはやっぱりちょっとイケメンで、モテそうだな、なんて関係ないことを考える余裕も出来ていた。
そうしてまずはわたしが今の状況を説明する。
飯塚さんにお願いして、この家を相続する手続き書類書いちゃったからね。
祖父もそのつもりだったみたいだけど、いーちゃんがそれを知ってるかわからなかったから。
家の相続に関してはいーちゃんも宜しくな、ってにっこり笑って話がついてしまった。
「でも、いくらいーちゃんが放蕩息子でも、相続するの、わたしでいいの?」
「ちょ、放蕩息子って……」
「ふふ、おじいちゃんがそう言ってたよ」
顔に思いっきり心外だ!と書いているいーちゃんだけど、祖父曰く、殆ど帰って来ないから放蕩息子でいいんだ、って言ってたよと伝えると物凄く唸ってた。
「お仕事で長く家空けるにしても、家主はいーちゃんの方がいいんじゃない?」
「あー…………いや、菜摘ちゃんでいいよ」
「でも……」
「そこは色々説明しなくちゃいけないことがあるんだ」
そう言ったいーちゃんの表情はとても真剣なものになっていて、思わず背筋が伸びた。
「菜摘ちゃんには、そうだな……信じられないと思うんだけど、信じて欲しいことがある」
「うん?」
「実際に見てもらった方が早いかな?」
そう言って立ち上がったいーちゃんに手を引かれ、わたしは家の奥……いーちゃんと再会した部屋へと移動する。
途中でパチンと音がして、どうやら奥の部屋の電気を点けたっぽい。
扉を開いた先は、気付かなかったけど沢山の物が置いてあった。
それはまるでお店みたいで、家の裏手側にあるものじゃない気がする。
こういうのは道沿いに作るべきで、庭の方へ作るものじゃないだろう。
そんな疑問を抱きつつ、ぐるりと部屋の中を見回す。
なんだか違和感があって、首を傾げているといーちゃんが笑った。
「ここは父さんの店でさ、中身は後で。見せたいのはこっち」
そう言っていーちゃんは置いていた自分の靴を履く。
わたしは置きっぱなしになっていた祖父のつっかけを引っ掛けて、いーちゃんの後ろをついて行く。
「この店の名前はさ、安直なもんで『異世界の道具屋さん』っつーんだよ」
笑ってそう言ったいーちゃんが、庭への扉を開くと見知らぬ世界が広がっていた。
0
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる