異世界の道具屋さん、引き継ぎます

冬生羚那

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数時間前

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 祖父の『道具屋』は結構な広さがある。

 元々その場所は廊下で繋がったちょっとした離れみたいなものだったらしい。
 2つの部屋と納戸があり、庭への勝手口として扉がついていたらしい。
 これはいーちゃんも祖父たちから聞いた話で、実際の所はもうわからないが。

 廊下側から扉を開けば、まず二段下がっている。
 この一段目に祖父のツッカケがあり、段差を降りた先にはレジがあるカウンターがある。
 レジといっても日本のようなレジスターがあるわけじゃなく、カウンターの棚に金庫が置いてあるだけの簡単なものだ。

 その金庫の中には100円玉サイズの硬貨と1円玉サイズの硬貨がたくさん入っていた。
 どうやらこれが異世界のお金らしい。
 1円玉サイズの硬貨は10円玉に似ている。
 似ている、というのは錆びらしき変色と、まるで苔のようなものがこびり付いているのが似ていると感じた部分だ。
 日本の硬貨のような○円とか両面のデザイン表記はないが、何か紋章らしきものが彫られていた。
 これは100円玉サイズの硬貨も同じで、こっちは100円玉に手触りも似ていた。

 左手には扉があって、その向こうはテーブルと椅子が数脚置いてあった。
 そしてその部屋の奥には小さなシンクとコンロが1つ、据え付けられている。
 シンクの横手には小さな冷蔵庫と食器棚が並んでいて、ちょっと休憩するぐらいなら出来る、といった部屋だ。

 その更に奥に入り口があった。
 こちらは暖簾がかけられただけになっていて出入りしやすくなっている。
 ここが元納戸だったのかもしれない。
 暖簾を掻き分けて中へ入れば店以上に雑多に物が置かれていた。
 室内を圧迫していると思えそうな天井までの棚がいくつもあり、ダンボールや大きな袋、それと何かの装置らしきものが置かれていた。
 更に言えば、物騒なものも置かれている。
 剣、だ。
 鞘に収まっている、どこからどう見ても剣である。
 形は日本刀とは違い、曲線は描いていないみたいだ。
 そう、物語の騎士や王子様、はたまたゲームの主人公がこういう剣を持って構えているCMとかが思い浮かぶ。
 それが傘立てを使って邪魔にならないように纏められている。
 ……剣って壁に飾って保管しているイメージがあったんだけれど、まさかの傘立て。
 どういう分類かはわからないけれど、いくつもの四角い傘立てに何本もの剣が纏めて立てられていて、それが更に一角に纏められている。
 いや、思いついたのが祖父でも祖母でも、いいアイディアだと思う。
 横に置くと場所とるし、重ねるのも崩れて来そうだしね。
 傘立てに刺さっているのは剣だけでなく、杖もだった。
 数で言えば、剣より杖の方が多いみたいだ。
 それらの近くには盾とか胸当てといった、所謂装備品が棚に収められていた。
 いーちゃんが言うには、これら装備品は買い取りはしているけれど、この店で売ってはいないらしい。
 祖母が簡単な手入れをしたりして、武器屋に卸していたんだって。
 あまりにボロいものは買い取っていなかったみたい。
 実際店内を見回しても武器や防具といったものは置いてなかった。
 そして、この倉庫は在庫置き場と店に置けないもの、売るには戸惑われるものを保管する場所のようだ。

 傘立ての中には普通のものがほとんどだがキンキラと輝くものがあったり、なんていうか……どよーんとしたオーラを纏う剣があったりする。
 杖の中にもこれはただの棒じゃないのか、と思うようなものもあれば高そうな装飾がされていて、宝石っぽい大きな石がついたものがあったりする。
 普通っぽいものは買い取ったものらしいが、それ以外は祖母が過去に手に入れたものだったり、いーちゃんが持って帰ってきたものだったり、人に貰ったものだったりするそうだ。
 キンキラの剣や高そうな杖は売るにしても場所とか考えないといけないんだ、とか、いくら吹っ掛けてやろうか、とかいーちゃんがボソボソ言ってたんだけどそこは聞かなかった。
 うん、聞いてませんよ。
 どんよりした剣については……いーちゃんはにっこり笑って何も言わなかった。
 ただ、そのにっこり笑顔がなんだか怖く感じたことは気のせいじゃなかったとだけ言っておく。

 そして片隅に片付けられている装置らしきものは祖母のものらしい。
 これで合成や分解が出来るとかいーちゃんは言っていたし、使い方はいずれ教えてあげると言われた。
 まあ、今合成だとかを覚えろと言われてもわたしの脳みそにそんな余裕はないので、頷いておくだけに留める。
 商品の知識を得ることだけでいっぱいいっぱいです。
 他の装置に関してもいずれ、だそうだ。
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