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コンクールの二人
理由
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やっと一時限目の終業のチャイムが鳴った。
授業中は完璧に上の空だった。僕は美乃梨に聞きたい事がいっぱいあった。
「美乃梨!」
僕はそう叫びながら振り向いた。
「なぁに? 亮ちゃん」
屈託のない笑顔で美乃梨は僕の顔を見た。
「なんでお前がここにおんねん?」
「転校してきたから」
「そんな事は分かっとるわ。だからなんで転校してきたんかって聞いとんや」
「それはここでは言えんわ」
と美乃梨は残念そうに首を振った。
「なんでぇ?」
「言うてええのか? あの一夜の事を……」
上目遣いで僕を見つめながら美乃梨は意味ありげに聞いた。
「えっええ? 一夜……って」
「そうあの夜の事は忘れられん出来事やったからね……」
と美乃梨は更に意味深な顔つきで答えた。というか不気味な笑顔と言った方がこの場合正しい。
一瞬何のことか分からなかったが、一夜と言われて思い当たるのはあの美乃梨の家で起きた仏間での出来事しかなかった。
確かにあの話はここでする話ではない。お嬢絡みの話をここでしても『変な奴』と思われるだけだし、僕の親族一同まで全て変わり者と思われかねない。
しかしこのシチュエーションでこんな言われ方をしたら、違う意味で誤解を招くではないかと思い当たった瞬間、僕はこの世で一番誤解されたくない宏美の存在を思い出した。
僕は慌てて宏美の顔を見たが、既に思いっきり誤解を招いていた上に哲也までもが疑いの眼差しを僕に向けていた。
「あの夜ってなぁに?」
宏美がにこやかに聞いてきたが目が笑っていなかった。隣で哲也も激しく頷いている。
「だぁ!! 紛らわしい言い方をするな! あの時は俺の父さんもおったやろ、他にも裕也も真由美ちゃんも……」
「真由美ちゃんってだぁれ?」
と宏美がすかさず聞いてきた。
「いや、こいつの姉貴や! 俺の従妹の……」
僕はそう応えながら更に深みにはまっていくような気がしていた。
――これは、あかん!! ――
「兎に角、ちょっと来い!」
僕はそう言って美乃梨の手を引っ張ると教室から出て行った。
「痛いって! 亮ちゃん。ちょっと待ってよ」
僕は校舎を出て自動販売機の前まで美乃梨を連れて出た。美乃梨は左手の手首をさすりながら僕を軽く睨んでいた。
そんな事はお構いなしに
「なんで? 転校してきたんや?」
と僕は美乃梨を問い詰めた。
「あ、それかぁ。今ね。亮ちゃんのお爺さんの家におるん」
美乃梨は僕の質問には直接的には答えずに微妙にはぐらかしたが、その答えは次に聞こうと思っていた事だから僕はそのまま聞き流した。
「へ? 爺ちゃん家に?」
「うん」
「だから、なんで?」
「実はね。あの夜から……というかお嬢に私も会った日の事。覚えてる?」
「うん。覚えとう」
「あれから本家のおじさんとうちのお父さんが話をしてね……『美乃梨は守人には成れんがお嬢に会う事が出来るようだ。でも、その力は不安定でこれからどんなことが起きるか分からんから心配だ』って話になったみたいなの……あの夜の仏間での出来事もあったしね」
美乃梨は僕達が本家から帰った後の出来事を話してくれた。
話を要約すると美乃梨の力はお嬢の姿を見る事が出来て会話もできるがそれだけだ。
それだけなら良かったのだが、他の訳の分からない魑魅魍魎の類までも引き寄せてしまう。それを制御する力も知識も美乃梨には無い上に、彼女を守ってあげられる人間も彼女に対してそういう事を教えてやれる人間も本家には居ない。
なのでオヤジか爺ちゃんのところへ住まわせて修行をさせるのが良いだろう……という事になったそうだ。
授業中は完璧に上の空だった。僕は美乃梨に聞きたい事がいっぱいあった。
「美乃梨!」
僕はそう叫びながら振り向いた。
「なぁに? 亮ちゃん」
屈託のない笑顔で美乃梨は僕の顔を見た。
「なんでお前がここにおんねん?」
「転校してきたから」
「そんな事は分かっとるわ。だからなんで転校してきたんかって聞いとんや」
「それはここでは言えんわ」
と美乃梨は残念そうに首を振った。
「なんでぇ?」
「言うてええのか? あの一夜の事を……」
上目遣いで僕を見つめながら美乃梨は意味ありげに聞いた。
「えっええ? 一夜……って」
「そうあの夜の事は忘れられん出来事やったからね……」
と美乃梨は更に意味深な顔つきで答えた。というか不気味な笑顔と言った方がこの場合正しい。
一瞬何のことか分からなかったが、一夜と言われて思い当たるのはあの美乃梨の家で起きた仏間での出来事しかなかった。
確かにあの話はここでする話ではない。お嬢絡みの話をここでしても『変な奴』と思われるだけだし、僕の親族一同まで全て変わり者と思われかねない。
しかしこのシチュエーションでこんな言われ方をしたら、違う意味で誤解を招くではないかと思い当たった瞬間、僕はこの世で一番誤解されたくない宏美の存在を思い出した。
僕は慌てて宏美の顔を見たが、既に思いっきり誤解を招いていた上に哲也までもが疑いの眼差しを僕に向けていた。
「あの夜ってなぁに?」
宏美がにこやかに聞いてきたが目が笑っていなかった。隣で哲也も激しく頷いている。
「だぁ!! 紛らわしい言い方をするな! あの時は俺の父さんもおったやろ、他にも裕也も真由美ちゃんも……」
「真由美ちゃんってだぁれ?」
と宏美がすかさず聞いてきた。
「いや、こいつの姉貴や! 俺の従妹の……」
僕はそう応えながら更に深みにはまっていくような気がしていた。
――これは、あかん!! ――
「兎に角、ちょっと来い!」
僕はそう言って美乃梨の手を引っ張ると教室から出て行った。
「痛いって! 亮ちゃん。ちょっと待ってよ」
僕は校舎を出て自動販売機の前まで美乃梨を連れて出た。美乃梨は左手の手首をさすりながら僕を軽く睨んでいた。
そんな事はお構いなしに
「なんで? 転校してきたんや?」
と僕は美乃梨を問い詰めた。
「あ、それかぁ。今ね。亮ちゃんのお爺さんの家におるん」
美乃梨は僕の質問には直接的には答えずに微妙にはぐらかしたが、その答えは次に聞こうと思っていた事だから僕はそのまま聞き流した。
「へ? 爺ちゃん家に?」
「うん」
「だから、なんで?」
「実はね。あの夜から……というかお嬢に私も会った日の事。覚えてる?」
「うん。覚えとう」
「あれから本家のおじさんとうちのお父さんが話をしてね……『美乃梨は守人には成れんがお嬢に会う事が出来るようだ。でも、その力は不安定でこれからどんなことが起きるか分からんから心配だ』って話になったみたいなの……あの夜の仏間での出来事もあったしね」
美乃梨は僕達が本家から帰った後の出来事を話してくれた。
話を要約すると美乃梨の力はお嬢の姿を見る事が出来て会話もできるがそれだけだ。
それだけなら良かったのだが、他の訳の分からない魑魅魍魎の類までも引き寄せてしまう。それを制御する力も知識も美乃梨には無い上に、彼女を守ってあげられる人間も彼女に対してそういう事を教えてやれる人間も本家には居ない。
なのでオヤジか爺ちゃんのところへ住まわせて修行をさせるのが良いだろう……という事になったそうだ。
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