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レーシー
人形
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目が覚めた。
朝だった。
――ああ、今日は休みだった――
僕は天井を見上げなら今日が休日である事を思い出した。続けて昨日の夜の出来事も思い出していた。
オヤジと爺ちゃんとの会話が頭の中を駆け巡る。まだ完全に僕の頭は機能していない。
こうやってベッドの中で色々考えるのも嫌いではない。もう少し寝ていたいような気もしていたが、そうこうしている間に完全に目が覚めてしまった。
僕はベッドから起き上がり顔を洗ってからリビングに行った。
オフクロは既に起きてキッチンで朝食の用意をしていた。
僕の顔を見ると
「ご飯食べる?」
と聞いてきたので僕は黙って頷いた。
僕はいつも座るリビングの椅子ではなく、なんとなく視野の中に入って来たピアノの前に行きピアノ椅子に座った。
僕は黙って鍵盤蓋を上げた。
ぼぅとピアノを眺めていてふとある曲が浮かんだ。頭に浮かんだのは確かなのだが、それよりもこのピアノがこの曲を今弾かれたがっている様に感じた……と言った方が、今の場合は正確な答えに近い。そして僕はそっと鍵盤の上に指をおいた。
僕の指が奏でたのはパッヘルベルのカノンだった。
何故僕が『このピアノがこの曲を弾かれたがっている』と感じたのかは分からないが、この曲は僕がまだ小さかった頃に好きで良く弾いていた曲だった。このピアノで何回いや何十回いやいや何千回弾いただろうか……。
弾きながら懐かしさがこみ上げて来る。
やっぱりこの曲はいい曲だ。
この頃、全然弾いていなかったが、やっぱりいい曲だと思う。
――僕はこんな音で弾いていたっけ?――
いつもの僕の音とは違うような気がする。いつもより優しい音がする。
そんな事を感じながらカノンを弾いていた僕は、何気にピアノの屋根の上の人形が置いてある事に気がついた。
――こんなところに人形なんか置いてあったっけ?――
そう、背丈が30㎝ぐらいの人形がピアノの屋根の上にちょこんと座っていた。本当に自然に昔からそこにあったように当たり前の様に座っていた。
その人形はピアノの音を心地よさそうに聞いているように見えた。しかしこの人形を見るのは初めてだ。オフクロがこのピアノの上に置いたのか?
――オフクロにそんな趣味あったっけ?――
誰かにプレゼントやお土産で人形をもらったことぐらいはあるあkも知れないが、オフクロがピアノの上に人形を飾る事など僕には記憶が無い。
魔女が被りそうなとんがり帽子を浅くかぶり、気持ち良さそうな不思議な表情をした人形……オフクロの趣味ではない……と言うかそもそもこの家に人形なんてあったのか? 等と考えていたらその人形は旋律に合わせて頭を左右に振り出した。
――やっぱり人形でも心地いいんだ……え? 頭を振っているって? おい! それはおかしいだろう?――
その人形は僕の目の前で僕の弾くピアノの音に合わせて、間違いなく頭を振ってリズムをとっている。
とっても楽しそうだ。電動式のおもちゃか? と思ったがそうではなさそうだ。
いやこれは人形では無い……そう思ってから一瞬遅れて息が止まりそうになった……そうだ。これはこの世のものではない。
――もしかしてこれがお嬢と会った影響か?――
と僕は瞬時に悟った。
もう少しでピアノを弾く指が止まりそうになった。お嬢にはあの夏に一度……いやオヤジと一緒にもう一度あったから二度会っている……が、たった一日に続けて会っただけだ。それなのに……。
でも目の錯覚ではなさそうだ。確かに目の前にいる。それは何度見ても得体の知れないものだ。なのに怖いもの見たさで僕は目が離せないでいる。
その得体の知れないものが気持ち良さそうに僕のピアノの音色を聞いているのを見て、僕の指は何度も止まりそうになった。いやその前に驚いて心臓が止まりそうだった。しかしその何度も止まりそうになった指を何とか動かして僕はピアノを弾いた。
僕はピアノを弾くのをやめられなかった。演奏を止めたらどうなるのか分からなかったし、この得体の知れないものが気持ち良さそうにしているのを邪魔しちゃ悪いようなそんな気持ちにもなっていた。
僕はピアノを弾きながらもこの得体の知れない物を観察していた。ここまで来ると僕もじっくりと見る余裕も出てきた。
それは白雪姫に出てくる小人のようにも見える。でもここに白雪姫はいない。人生に白けたオカンなら今キッチンにいるが……。明らかに僕の感情は動揺している。
その微妙な僕の感情にの揺れに気づいたのだろうか? その得体のしれない顔のでかい物体と僕は目が合ってしまった。
案外可愛い目をしている。
朝だった。
――ああ、今日は休みだった――
僕は天井を見上げなら今日が休日である事を思い出した。続けて昨日の夜の出来事も思い出していた。
オヤジと爺ちゃんとの会話が頭の中を駆け巡る。まだ完全に僕の頭は機能していない。
こうやってベッドの中で色々考えるのも嫌いではない。もう少し寝ていたいような気もしていたが、そうこうしている間に完全に目が覚めてしまった。
僕はベッドから起き上がり顔を洗ってからリビングに行った。
オフクロは既に起きてキッチンで朝食の用意をしていた。
僕の顔を見ると
「ご飯食べる?」
と聞いてきたので僕は黙って頷いた。
僕はいつも座るリビングの椅子ではなく、なんとなく視野の中に入って来たピアノの前に行きピアノ椅子に座った。
僕は黙って鍵盤蓋を上げた。
ぼぅとピアノを眺めていてふとある曲が浮かんだ。頭に浮かんだのは確かなのだが、それよりもこのピアノがこの曲を今弾かれたがっている様に感じた……と言った方が、今の場合は正確な答えに近い。そして僕はそっと鍵盤の上に指をおいた。
僕の指が奏でたのはパッヘルベルのカノンだった。
何故僕が『このピアノがこの曲を弾かれたがっている』と感じたのかは分からないが、この曲は僕がまだ小さかった頃に好きで良く弾いていた曲だった。このピアノで何回いや何十回いやいや何千回弾いただろうか……。
弾きながら懐かしさがこみ上げて来る。
やっぱりこの曲はいい曲だ。
この頃、全然弾いていなかったが、やっぱりいい曲だと思う。
――僕はこんな音で弾いていたっけ?――
いつもの僕の音とは違うような気がする。いつもより優しい音がする。
そんな事を感じながらカノンを弾いていた僕は、何気にピアノの屋根の上の人形が置いてある事に気がついた。
――こんなところに人形なんか置いてあったっけ?――
そう、背丈が30㎝ぐらいの人形がピアノの屋根の上にちょこんと座っていた。本当に自然に昔からそこにあったように当たり前の様に座っていた。
その人形はピアノの音を心地よさそうに聞いているように見えた。しかしこの人形を見るのは初めてだ。オフクロがこのピアノの上に置いたのか?
――オフクロにそんな趣味あったっけ?――
誰かにプレゼントやお土産で人形をもらったことぐらいはあるあkも知れないが、オフクロがピアノの上に人形を飾る事など僕には記憶が無い。
魔女が被りそうなとんがり帽子を浅くかぶり、気持ち良さそうな不思議な表情をした人形……オフクロの趣味ではない……と言うかそもそもこの家に人形なんてあったのか? 等と考えていたらその人形は旋律に合わせて頭を左右に振り出した。
――やっぱり人形でも心地いいんだ……え? 頭を振っているって? おい! それはおかしいだろう?――
その人形は僕の目の前で僕の弾くピアノの音に合わせて、間違いなく頭を振ってリズムをとっている。
とっても楽しそうだ。電動式のおもちゃか? と思ったがそうではなさそうだ。
いやこれは人形では無い……そう思ってから一瞬遅れて息が止まりそうになった……そうだ。これはこの世のものではない。
――もしかしてこれがお嬢と会った影響か?――
と僕は瞬時に悟った。
もう少しでピアノを弾く指が止まりそうになった。お嬢にはあの夏に一度……いやオヤジと一緒にもう一度あったから二度会っている……が、たった一日に続けて会っただけだ。それなのに……。
でも目の錯覚ではなさそうだ。確かに目の前にいる。それは何度見ても得体の知れないものだ。なのに怖いもの見たさで僕は目が離せないでいる。
その得体の知れないものが気持ち良さそうに僕のピアノの音色を聞いているのを見て、僕の指は何度も止まりそうになった。いやその前に驚いて心臓が止まりそうだった。しかしその何度も止まりそうになった指を何とか動かして僕はピアノを弾いた。
僕はピアノを弾くのをやめられなかった。演奏を止めたらどうなるのか分からなかったし、この得体の知れないものが気持ち良さそうにしているのを邪魔しちゃ悪いようなそんな気持ちにもなっていた。
僕はピアノを弾きながらもこの得体の知れない物を観察していた。ここまで来ると僕もじっくりと見る余裕も出てきた。
それは白雪姫に出てくる小人のようにも見える。でもここに白雪姫はいない。人生に白けたオカンなら今キッチンにいるが……。明らかに僕の感情は動揺している。
その微妙な僕の感情にの揺れに気づいたのだろうか? その得体のしれない顔のでかい物体と僕は目が合ってしまった。
案外可愛い目をしている。
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