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~残された時間・I never lay down under my distiny~
代償
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「そうなんだ……」
キューピッドは明らかに落胆した表情を見せた。
キューピッドの表情が一気に曇った事に気が付いて
「誰か寿命を延ばしたい人でもいるのかぁ?」
と聞いてきたのはラケシスだった。
酒に満たされた器を片手に持ち、もうすでに出来上がっているような感じだった。
「あら、ラケシス。もう酔ったの?」
クロートーは呆れたようにラケシスを見た。
「うんにゃ。まだそんなに酔ってないぃぞぉ」
と赤ら顔で言葉とは裏腹にラケシスは明らかに酔っぱらいの域に達しようとしていた。
「実はそうなんだ……それでこの酒を持ってゼウスのところへ行こうと思っていたんだけど……」
とキューピッドはそろりと核心部分に触れだした。
「それはゼウスのところに持って行っても話にならんじゃろう……」
ラケシスが呆れたような顔をしてキューピッドを見た。
「え? そうなのか?」
とキューピッドは敢えて驚いて見せた。
ラケシスは少し重たくなった瞳でキューピッドを睨むと
「ワシらがここで何を紡いでいると思っているんじゃぁ?」
と言った。
「いや……そうだったな。運命の糸だったな……じゃあ、あんた達に頼んだらどうにかなるのか?」
「それは……ならんなぁ……」
そう言うとラケシスは頭を垂れた。案外、酔いが回ってきているようだった。彼女はそのままの姿勢で酒瓶に手を伸ばすと、自分の器に酒を注いだ。
「そうか……」
キューピッドは肩を落として落胆したそぶりを見せた。
「ラケシス姉さん……それはあまりにも無慈悲過ぎないか?」
と口を挟んだのはアトロポスだ。彼女はこの三姉妹の末っ子になる。
「……だが、人の運命はそう気安く変えるものではない」
酒を口に運びながらラケシスは言った。
「それは知っている。最後に寿命を決めるのは私だからな」
アトロポスはそういうと器の酒を一気に飲み干して、すぐにラケシスから酒瓶を奪い取ると器に酒を注ぎ入れた。
そして酒瓶を車座の真ん中に置くと
「さっき我々はキューピッドに『無常の果実』を食らわそうとして見破られた。普通ならそれで怒ってここを立ち去っても良いのに、キューピッドは酒を飲ませてくれた。だから私はそのお詫びも兼ねてキューピッドの願いを叶えてあげてもいいと思うのだがどうだろうか?」
というと二人の姉の顔を交互に見回した。
暫く二人は黙って考えているようだった。
先に口を開いたのはラケシスだった。
「うぃ。分かった。アトロポスの言う通りかもしれん。ワシは反対せん」
と言うと「もうこの話題は終わった」とばかりに酒を煽った。
自然とアトロポスとキューピッドの視線はクロートーに集中する。
クロートーは二人の顔を交互に見比べると
「分かったわ。あなたの言う通りよ。アトロポス」
クロート―はそう言うとキューピッドに向かって
「キューピッド、誰の寿命を延ばしたいの?」
と聞いた。
「ありがとう。羽鳥夕子という18歳の女の子だ」
とホッとした表情でキューピッドは答えた。
「分かったわ」
クロートーそう言うと
「ただし、身代わりを見つけて来て下さい」
と表情も変えずに言った。
「身代わり?」
キューピッドの眉間に険しさが現れた。
「そうです。彼女が瀕死の状況に陥った時に、自ら彼女の身代わりを願うものがいれば、彼女の寿命を延ばして差し上げます」
クロート―はキューピッドの顔をまっすぐ見つめてそう言った。
「そんな……身代わり無しではダメなのか?」
「ダメです」
「どうしても?」
「はい。同じ願いをアポロンに頼まれましたが、その時も身代わりを用意していただきました。オリンポスの十二神の一人であるアポロンと同じ条件です。これ以上の好条件は出せません」
クロート―のその言葉からは「これ以上の妥協は絶対にありえない」という強い意志が伝わって来た。
キューピッドは助けを求めるように他の二人を見たが、その眼にはほとんど酔いつぶれかけた二人の女神の姿を認めただけだった。
キューピッドは明らかに落胆した表情を見せた。
キューピッドの表情が一気に曇った事に気が付いて
「誰か寿命を延ばしたい人でもいるのかぁ?」
と聞いてきたのはラケシスだった。
酒に満たされた器を片手に持ち、もうすでに出来上がっているような感じだった。
「あら、ラケシス。もう酔ったの?」
クロートーは呆れたようにラケシスを見た。
「うんにゃ。まだそんなに酔ってないぃぞぉ」
と赤ら顔で言葉とは裏腹にラケシスは明らかに酔っぱらいの域に達しようとしていた。
「実はそうなんだ……それでこの酒を持ってゼウスのところへ行こうと思っていたんだけど……」
とキューピッドはそろりと核心部分に触れだした。
「それはゼウスのところに持って行っても話にならんじゃろう……」
ラケシスが呆れたような顔をしてキューピッドを見た。
「え? そうなのか?」
とキューピッドは敢えて驚いて見せた。
ラケシスは少し重たくなった瞳でキューピッドを睨むと
「ワシらがここで何を紡いでいると思っているんじゃぁ?」
と言った。
「いや……そうだったな。運命の糸だったな……じゃあ、あんた達に頼んだらどうにかなるのか?」
「それは……ならんなぁ……」
そう言うとラケシスは頭を垂れた。案外、酔いが回ってきているようだった。彼女はそのままの姿勢で酒瓶に手を伸ばすと、自分の器に酒を注いだ。
「そうか……」
キューピッドは肩を落として落胆したそぶりを見せた。
「ラケシス姉さん……それはあまりにも無慈悲過ぎないか?」
と口を挟んだのはアトロポスだ。彼女はこの三姉妹の末っ子になる。
「……だが、人の運命はそう気安く変えるものではない」
酒を口に運びながらラケシスは言った。
「それは知っている。最後に寿命を決めるのは私だからな」
アトロポスはそういうと器の酒を一気に飲み干して、すぐにラケシスから酒瓶を奪い取ると器に酒を注ぎ入れた。
そして酒瓶を車座の真ん中に置くと
「さっき我々はキューピッドに『無常の果実』を食らわそうとして見破られた。普通ならそれで怒ってここを立ち去っても良いのに、キューピッドは酒を飲ませてくれた。だから私はそのお詫びも兼ねてキューピッドの願いを叶えてあげてもいいと思うのだがどうだろうか?」
というと二人の姉の顔を交互に見回した。
暫く二人は黙って考えているようだった。
先に口を開いたのはラケシスだった。
「うぃ。分かった。アトロポスの言う通りかもしれん。ワシは反対せん」
と言うと「もうこの話題は終わった」とばかりに酒を煽った。
自然とアトロポスとキューピッドの視線はクロートーに集中する。
クロートーは二人の顔を交互に見比べると
「分かったわ。あなたの言う通りよ。アトロポス」
クロート―はそう言うとキューピッドに向かって
「キューピッド、誰の寿命を延ばしたいの?」
と聞いた。
「ありがとう。羽鳥夕子という18歳の女の子だ」
とホッとした表情でキューピッドは答えた。
「分かったわ」
クロートーそう言うと
「ただし、身代わりを見つけて来て下さい」
と表情も変えずに言った。
「身代わり?」
キューピッドの眉間に険しさが現れた。
「そうです。彼女が瀕死の状況に陥った時に、自ら彼女の身代わりを願うものがいれば、彼女の寿命を延ばして差し上げます」
クロート―はキューピッドの顔をまっすぐ見つめてそう言った。
「そんな……身代わり無しではダメなのか?」
「ダメです」
「どうしても?」
「はい。同じ願いをアポロンに頼まれましたが、その時も身代わりを用意していただきました。オリンポスの十二神の一人であるアポロンと同じ条件です。これ以上の好条件は出せません」
クロート―のその言葉からは「これ以上の妥協は絶対にありえない」という強い意志が伝わって来た。
キューピッドは助けを求めるように他の二人を見たが、その眼にはほとんど酔いつぶれかけた二人の女神の姿を認めただけだった。
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