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第二章 皇女様の飛空艇
初仕事
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「……という事で皇帝陛下から直々の依頼でスエンビーア王国カタリーナ元女王をお迎えに上がり、オリバイエ公国首都フランドワープまでお送りすることになった。この任務をクロード達に任せたい」
そう言うとシバは背もたれに身体を預けて椅子を軽く揺らした。アキトはシバの隣に立って黙って頷いていた。
新たに艇長室に呼ばれた五名はシバのデスクの前で一列に並んで、緊張した面持ちでシバの話を聞いていた。
最初に口を開いたのはソフィアだった。
「カタリーナ様なら良く存じ上げております。退位されたのでご公務から離れての、フランドワープの別邸までご静養旅行ですか?」
「いや、そうではありません」
とシバは首を振った。
「おや? 旅行ではないと?……それでは……あの、今回お付きの者たちは何人いるのでしょうか?」
ソフィアはシバの言葉から何かを感じ取ったようだ。
「……お付きの人は……おりません」
「誰もですか?」
「はい。誰も付き人はおりません」
「あのいつもおそばにいるエヴァ・ベルベッドもですか?」
とソフィアはカタリーナ元女王のお気に入りの侍女の名前を挙げて聞いた。
「はい」
「本当にカタリーナ様お一人だけをお迎えに上がるのですか?」
とソフィアは何度も同じ質問を繰り返した。
「そうです。お一人です」
「はぁ……そうですか……それって普通ではありませんよね」
流石ソフィアは皇族である。退位したとは言え元女王が護衛もお付きの人もなく一人で出歩くなんて、余りにも不自然な事であると気が付いたが
――でもあの女王様ならそれもあり得るかも……本当に自由奔放な人だから――
と同時にそういう考えも少し頭をよぎっていた。
「ちなみにカタリーナ様は今どこにお住まいですか?」
とソフィアは質問を重ねた。
「今はソリデン宮においでです」
「そうですか……それを聞いて少し安心しました。そこまでお迎えに上がる訳ですね」
ソフィアはカタリーナ元女王が王宮のどこかあるいは牢獄で幽閉されているのではないかと危惧していたが、今の住まいが彼女の避暑地の宮殿であったのを聞いて安堵した。しかしまだソフィアの不安が完全に払拭された訳ではなかった。
「そうです。そう言えばソフィア様はカタリーナ様と面識がありましたな」
「はい。あります」
とソフィアは即答した。
彼女にとってカタリーナの存在は、自らが目指す憧れの女性像だった。幼い頃に『男装の麗人』と呼ばれるその颯爽とした女王を目のあたりにして、女王と同じようにソフィアも幼少の頃から騎馬・剣術等の武術を学んでいた。
「実は今回、我々はカタリーナ元女王の亡命を手伝う事になります」
とシバは本題を口にした。
「亡命ですか!! 何故?」
ソフィアは驚いたように思わず声をあげた。
「それは分かりません。ただこの依頼はカタリーナ元女王からの直々の依頼です」
「そうなんですね……」
とソフィアは少し考えてから
「もうカタリーナ様は二度と自国には戻らないおつもりなんですね……」
と呟いた。
ソフィアは『カタリーナ本人からの依頼』というシバの言葉を聞いて少し安堵していたが、同時に『亡命』と言う言葉を聞いた時にカタリーナの強い意志も感じ取っていた。
――流石だな。この皇女様は勘も鋭い――
とソフィアのその様子を窺いながらシバは感心していた。
そして
「今回の任務はカタリーナ様と面識もあるソフィア様に活躍してもらわねばなりません。クロード達だけでは手に余りますからな」
と言った。
「なんでだよぉ?」
とクロードが不満げな声をあげた。彼らは『亡命』という言葉を聞いても全く動ぜずにいたが、『手に余る』と言われて憤慨していた。
「じゃあ聞くが、お前たちの中で元女王陛下やご貴族様とちゃんとお話ができる者がいるかね?」
と明らかにクロード達を高所から見下したような視線でシバが言った。
「いや……それは……」
とクロードは俯いた。つい最近、宮殿でまごついて醜態をさらしていた事をクロード達は思い出していた。
そう言うとシバは背もたれに身体を預けて椅子を軽く揺らした。アキトはシバの隣に立って黙って頷いていた。
新たに艇長室に呼ばれた五名はシバのデスクの前で一列に並んで、緊張した面持ちでシバの話を聞いていた。
最初に口を開いたのはソフィアだった。
「カタリーナ様なら良く存じ上げております。退位されたのでご公務から離れての、フランドワープの別邸までご静養旅行ですか?」
「いや、そうではありません」
とシバは首を振った。
「おや? 旅行ではないと?……それでは……あの、今回お付きの者たちは何人いるのでしょうか?」
ソフィアはシバの言葉から何かを感じ取ったようだ。
「……お付きの人は……おりません」
「誰もですか?」
「はい。誰も付き人はおりません」
「あのいつもおそばにいるエヴァ・ベルベッドもですか?」
とソフィアはカタリーナ元女王のお気に入りの侍女の名前を挙げて聞いた。
「はい」
「本当にカタリーナ様お一人だけをお迎えに上がるのですか?」
とソフィアは何度も同じ質問を繰り返した。
「そうです。お一人です」
「はぁ……そうですか……それって普通ではありませんよね」
流石ソフィアは皇族である。退位したとは言え元女王が護衛もお付きの人もなく一人で出歩くなんて、余りにも不自然な事であると気が付いたが
――でもあの女王様ならそれもあり得るかも……本当に自由奔放な人だから――
と同時にそういう考えも少し頭をよぎっていた。
「ちなみにカタリーナ様は今どこにお住まいですか?」
とソフィアは質問を重ねた。
「今はソリデン宮においでです」
「そうですか……それを聞いて少し安心しました。そこまでお迎えに上がる訳ですね」
ソフィアはカタリーナ元女王が王宮のどこかあるいは牢獄で幽閉されているのではないかと危惧していたが、今の住まいが彼女の避暑地の宮殿であったのを聞いて安堵した。しかしまだソフィアの不安が完全に払拭された訳ではなかった。
「そうです。そう言えばソフィア様はカタリーナ様と面識がありましたな」
「はい。あります」
とソフィアは即答した。
彼女にとってカタリーナの存在は、自らが目指す憧れの女性像だった。幼い頃に『男装の麗人』と呼ばれるその颯爽とした女王を目のあたりにして、女王と同じようにソフィアも幼少の頃から騎馬・剣術等の武術を学んでいた。
「実は今回、我々はカタリーナ元女王の亡命を手伝う事になります」
とシバは本題を口にした。
「亡命ですか!! 何故?」
ソフィアは驚いたように思わず声をあげた。
「それは分かりません。ただこの依頼はカタリーナ元女王からの直々の依頼です」
「そうなんですね……」
とソフィアは少し考えてから
「もうカタリーナ様は二度と自国には戻らないおつもりなんですね……」
と呟いた。
ソフィアは『カタリーナ本人からの依頼』というシバの言葉を聞いて少し安堵していたが、同時に『亡命』と言う言葉を聞いた時にカタリーナの強い意志も感じ取っていた。
――流石だな。この皇女様は勘も鋭い――
とソフィアのその様子を窺いながらシバは感心していた。
そして
「今回の任務はカタリーナ様と面識もあるソフィア様に活躍してもらわねばなりません。クロード達だけでは手に余りますからな」
と言った。
「なんでだよぉ?」
とクロードが不満げな声をあげた。彼らは『亡命』という言葉を聞いても全く動ぜずにいたが、『手に余る』と言われて憤慨していた。
「じゃあ聞くが、お前たちの中で元女王陛下やご貴族様とちゃんとお話ができる者がいるかね?」
と明らかにクロード達を高所から見下したような視線でシバが言った。
「いや……それは……」
とクロードは俯いた。つい最近、宮殿でまごついて醜態をさらしていた事をクロード達は思い出していた。
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