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第1章 天国から地獄へ突き落されました
②
しおりを挟む思考の全てがフリーズした。
ケッコンヲハクシ…?
何それどういう意味だっけ。
つまり、私との結婚をなかったことにするとか、そういう話?
思わず立ち上がって、上から透を見下ろした。
「なんでよ! どういうこと?」
胸につかえていた言いにくいことを、言ってしまったせいか、今度は透の方が冷静だった。
「咲良には心から悪いと思っている。けど…好きな人が出来た」
透の話は全く理解できない。
まるで違う文化の人と商談でもしてるみたい。
私と透は恋人同士で、一生一緒にいる約束をして、もうじき結婚する――そんな幸せな時期じゃなかったの?
私と透の関係を、前提から見つめ直さないといけないみたい。
腸が煮えくり返る、ってこういうことなんだ、って慣用句の意味を身を以て知る。
身体中の血が逆流してるみたい。ぐつぐつ滾る怒りのオーラをどうにかして鎮めながら、私は透に聞いてみた。
「…好きな人って誰?」
ダイレクトな質問に、透はまた視線をテーブルに落とす。
相手のことを気遣ってる態度が、また私をイラつかせた。
「私の知ってる人?」
「…いずれわかるよ。だから…」
「いずれわかるんだったら、今言いなさいよ!」
人前でなかったら、ネクタイ掴んで引っ張るくらいはしてただろう。
重低音をこれでもかと響かせて、私は透に詰め寄った。
「総務の白井さん」
ああ、あの子か。白井美雪。仕事はとろくて、ミスが多くて。だけど若くてかわいいからと、何かと庇ってもらえる子。
「…付き合ってるの?」
婚約者に対して、何聞いてるんだろ、私。けど、私の不適切な質問に、透は信じられない回答をしてきた。
「彼女の胎内には、今、僕の子どもがいる。3か月になるそうだ」
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