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第2章 目には目を パンケーキには蜂蜜を
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「…私、こんなの頼んでない…」
「サービスです。そもそもメニューにないものですし」
確かにそうかも。スイーツあんまり食べないから、長年ここに通っていても、メニュー詳しくないけれど。
パンケーキは薄くこんがりとまん丸に焼けたものが3枚重ねられ、その上にハチミツとバターが乗ってる。
私、甘いの苦手なんだけどな。
そう思いながら、ナイフで切り分け、1つを口に運ぶ。ふわりとした食感。溶けたバターの香り。
「おいし」
思わず言うと、マスターは目を細めた。
「良かった」
コーヒーにも合う。すごくいい。
スイーツの行列に並ぶ女の子って理解出来なかった。
あんだけダイエットダイエット言ってるのに、どうしてわざわざカロリーの塊を並んでまで摂取するんだろう、って。
けど、食べちゃいけないってわかってるのに、甘いものを欲しがるのが、ちょっとだけ理解できた。うん。体型には敵だけど、心の栄養になる。
ぎすぎすしてた気持ちが、甘いもので緩和されて、解れていく。
コーヒーを飲み干して、パンケーキを全部食べたら、大分調子が戻ってきた。
「ごちそうさまです、ありがとうございました」
「いいえ」
他の人のコーヒーをあっためながら、マスターは私に微笑み返してくれる。
マスターは何も聞かないし、言わない。それでいて、今、私が欲してる優しさをピンポイントで投げてくれる。
このお店には何度も通っていたし、もちろんマスターとも話したことがある。
けれど、そうだとしても、マスターの行動は親切すぎる気がした。
そして、気力が充填されて、クリアになった頭で、私はある一つの可能性を想像していた。
「あの…」
仕事の邪魔にならないように、話しかける。
「はい」
「もしかして…知ってましたか?」
ぴくっ。ビーカーを磨いていたマスターの手がぴたりと止まる。
「…な、なにをですか?」
「彼の浮気です。…というか、もしかしてあの人、ここに別の女性連れてきていませんでした?」
ぴくぴく。更に、マスターのこめかみが引きつった…ように見えた。
「お、お客様のプライバシーは私どもにはわかりかねますので」
「マスター嘘下手ですね。さっきから、不自然に視線逸らしてますよね」
指摘すると、マスターはやれやれと言った態でため息をついた。
これ以上は何も言ってくれないけれど、おそらく私の推理通りだったんだろう。
あーもうホントくそむかつく。
このお店は、私が新入社員の時に見つけたのに。
最近多いシアトル系コーヒーのチェーンじゃなくて、レトロな器具で、一杯一杯丁寧に淹れてくれる。値段もその分高いけど、でも家で自分で淹れたのとは比べ物にならないくらいおいしくて。
まだ、同僚だった透にも、私はどや顔で紹介したんだった。
そんな二人の思い出の詰まった店を、浮気相手との密会にも使うか~~~?
うん、あんな奴のために流す涙なんて一滴だってもったいない。
悔しい。納得いかない。このままになんてしておけない。
「絶対ぎゃふんて言わせたい…」
「サービスです。そもそもメニューにないものですし」
確かにそうかも。スイーツあんまり食べないから、長年ここに通っていても、メニュー詳しくないけれど。
パンケーキは薄くこんがりとまん丸に焼けたものが3枚重ねられ、その上にハチミツとバターが乗ってる。
私、甘いの苦手なんだけどな。
そう思いながら、ナイフで切り分け、1つを口に運ぶ。ふわりとした食感。溶けたバターの香り。
「おいし」
思わず言うと、マスターは目を細めた。
「良かった」
コーヒーにも合う。すごくいい。
スイーツの行列に並ぶ女の子って理解出来なかった。
あんだけダイエットダイエット言ってるのに、どうしてわざわざカロリーの塊を並んでまで摂取するんだろう、って。
けど、食べちゃいけないってわかってるのに、甘いものを欲しがるのが、ちょっとだけ理解できた。うん。体型には敵だけど、心の栄養になる。
ぎすぎすしてた気持ちが、甘いもので緩和されて、解れていく。
コーヒーを飲み干して、パンケーキを全部食べたら、大分調子が戻ってきた。
「ごちそうさまです、ありがとうございました」
「いいえ」
他の人のコーヒーをあっためながら、マスターは私に微笑み返してくれる。
マスターは何も聞かないし、言わない。それでいて、今、私が欲してる優しさをピンポイントで投げてくれる。
このお店には何度も通っていたし、もちろんマスターとも話したことがある。
けれど、そうだとしても、マスターの行動は親切すぎる気がした。
そして、気力が充填されて、クリアになった頭で、私はある一つの可能性を想像していた。
「あの…」
仕事の邪魔にならないように、話しかける。
「はい」
「もしかして…知ってましたか?」
ぴくっ。ビーカーを磨いていたマスターの手がぴたりと止まる。
「…な、なにをですか?」
「彼の浮気です。…というか、もしかしてあの人、ここに別の女性連れてきていませんでした?」
ぴくぴく。更に、マスターのこめかみが引きつった…ように見えた。
「お、お客様のプライバシーは私どもにはわかりかねますので」
「マスター嘘下手ですね。さっきから、不自然に視線逸らしてますよね」
指摘すると、マスターはやれやれと言った態でため息をついた。
これ以上は何も言ってくれないけれど、おそらく私の推理通りだったんだろう。
あーもうホントくそむかつく。
このお店は、私が新入社員の時に見つけたのに。
最近多いシアトル系コーヒーのチェーンじゃなくて、レトロな器具で、一杯一杯丁寧に淹れてくれる。値段もその分高いけど、でも家で自分で淹れたのとは比べ物にならないくらいおいしくて。
まだ、同僚だった透にも、私はどや顔で紹介したんだった。
そんな二人の思い出の詰まった店を、浮気相手との密会にも使うか~~~?
うん、あんな奴のために流す涙なんて一滴だってもったいない。
悔しい。納得いかない。このままになんてしておけない。
「絶対ぎゃふんて言わせたい…」
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