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第2章 目には目を パンケーキには蜂蜜を
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「…マスターはもうとっくに察してると思うんですけど、私、透…いつも一緒に来てた彼氏にフラれたんです。婚約破棄して別の女とデキ婚ですよ? ありえないですよね」
自分がされたことを自分で言うと、また別のむなしさというか、切なさが襲ってくるもんなんだなあ。マスターが私を見る目にも、同情の色が宿る。
「……」
「復讐してやりたい」
「…そんな…」
意味のないことを。マスターはそう言いたいんだろう。
自分でも愚かしい願望だって言うのはわかっている。
けれど、このまま泣き寝入りなんて冗談じゃない。
私が透と別れても、透とは同じ職場で同期で、しかも美雪までいる。
恋人を寝取られた挙句に、私は下手したら、職場にもいられなくなる。
恋も未来も仕事も取られたんだから、透にも美雪にも痛い目見せなきゃ気が済まない。
「具体的にどうすればいいと思います?」
気が付けば、客の姿はあと一人。スーツ姿のおじさんが小ぶりのノートパソコン開いて、何かやってるだけになってる。アルバイトの子も、表の黒板を下げ、店はオーダーストップの時間。
オーナーの手が空いたのをいいことに、私はそんな質問をしてみた。
「どうって…」
マスターは苦笑いしながら、言葉を濁した。
「だって悔しくないですか? ムカつきません?」
「それはわかりますけど…復讐」
「あ、もちろん合法的にですよ。流石に傷害とか脅迫とかは考えてないです。自分の首絞めるだけだから。復讐したはいいけど、自分も刑務所行きなんて、やです。絶対」
私が説明を加えると、マスターはほっとしたように息をついた。
…私が透と刺し違えでもすると思ったのかな。そんな過激に見えるかな。
自分では甚だ理性的な行動派だと思ってるんだけど。
「御園さん、一番の復讐は彼のことを忘れて、あなたが幸せになることだと思いますよ」
「マスターって年いくつですか?」
若く見えたけど、私を諭す言動は落ち着いてるから、意外と行ってるのかな。
マスターの言葉を茶化すように、私は聞いてみた。
「何ですか、突然」
「気になったことは突き詰めないと、気が済まない性格で」
「僕は…38です」
「え!」
絶句してしまった。
「…いくつだと思ってました?」
「30ちょっと過ぎ。行っても、半ばくらいかなあ、って」
「おっさんですみません」
「いえ! そういう意味では。マスター、肌も綺麗だし、お腹も出てないし、見た目若いですよ」
マスターが拗ねたような気がして、私は必死にフォローに入る。
「まあ、こういう仕事ですから…」
結局その日は閉店まで粘ってしまった。
マスターの年齢と独身だってことと、名前は聞き出してしまった。
森智之さんて言うらしい。
だから何だってわけじゃないけど。
パンケーキのお礼を言って表に出る。
行く時に小脇に抱えていたパンフは、コンビニのごみ箱に投げ入れて、私は家に帰った。
明日も仕事。どういう風に透に復讐してやろうか考えながら――。
自分がされたことを自分で言うと、また別のむなしさというか、切なさが襲ってくるもんなんだなあ。マスターが私を見る目にも、同情の色が宿る。
「……」
「復讐してやりたい」
「…そんな…」
意味のないことを。マスターはそう言いたいんだろう。
自分でも愚かしい願望だって言うのはわかっている。
けれど、このまま泣き寝入りなんて冗談じゃない。
私が透と別れても、透とは同じ職場で同期で、しかも美雪までいる。
恋人を寝取られた挙句に、私は下手したら、職場にもいられなくなる。
恋も未来も仕事も取られたんだから、透にも美雪にも痛い目見せなきゃ気が済まない。
「具体的にどうすればいいと思います?」
気が付けば、客の姿はあと一人。スーツ姿のおじさんが小ぶりのノートパソコン開いて、何かやってるだけになってる。アルバイトの子も、表の黒板を下げ、店はオーダーストップの時間。
オーナーの手が空いたのをいいことに、私はそんな質問をしてみた。
「どうって…」
マスターは苦笑いしながら、言葉を濁した。
「だって悔しくないですか? ムカつきません?」
「それはわかりますけど…復讐」
「あ、もちろん合法的にですよ。流石に傷害とか脅迫とかは考えてないです。自分の首絞めるだけだから。復讐したはいいけど、自分も刑務所行きなんて、やです。絶対」
私が説明を加えると、マスターはほっとしたように息をついた。
…私が透と刺し違えでもすると思ったのかな。そんな過激に見えるかな。
自分では甚だ理性的な行動派だと思ってるんだけど。
「御園さん、一番の復讐は彼のことを忘れて、あなたが幸せになることだと思いますよ」
「マスターって年いくつですか?」
若く見えたけど、私を諭す言動は落ち着いてるから、意外と行ってるのかな。
マスターの言葉を茶化すように、私は聞いてみた。
「何ですか、突然」
「気になったことは突き詰めないと、気が済まない性格で」
「僕は…38です」
「え!」
絶句してしまった。
「…いくつだと思ってました?」
「30ちょっと過ぎ。行っても、半ばくらいかなあ、って」
「おっさんですみません」
「いえ! そういう意味では。マスター、肌も綺麗だし、お腹も出てないし、見た目若いですよ」
マスターが拗ねたような気がして、私は必死にフォローに入る。
「まあ、こういう仕事ですから…」
結局その日は閉店まで粘ってしまった。
マスターの年齢と独身だってことと、名前は聞き出してしまった。
森智之さんて言うらしい。
だから何だってわけじゃないけど。
パンケーキのお礼を言って表に出る。
行く時に小脇に抱えていたパンフは、コンビニのごみ箱に投げ入れて、私は家に帰った。
明日も仕事。どういう風に透に復讐してやろうか考えながら――。
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