婚約者にフラれたので、復讐しようと思います

紗夏

文字の大きさ
7 / 41
第2章 目には目を パンケーキには蜂蜜を

しおりを挟む
「…マスターはもうとっくに察してると思うんですけど、私、透…いつも一緒に来てた彼氏にフラれたんです。婚約破棄して別の女とデキ婚ですよ? ありえないですよね」

自分がされたことを自分で言うと、また別のむなしさというか、切なさが襲ってくるもんなんだなあ。マスターが私を見る目にも、同情の色が宿る。

「……」
「復讐してやりたい」
「…そんな…」

意味のないことを。マスターはそう言いたいんだろう。
自分でも愚かしい願望だって言うのはわかっている。

けれど、このまま泣き寝入りなんて冗談じゃない。
私が透と別れても、透とは同じ職場で同期で、しかも美雪までいる。

恋人を寝取られた挙句に、私は下手したら、職場にもいられなくなる。

恋も未来も仕事も取られたんだから、透にも美雪にも痛い目見せなきゃ気が済まない。


「具体的にどうすればいいと思います?」

気が付けば、客の姿はあと一人。スーツ姿のおじさんが小ぶりのノートパソコン開いて、何かやってるだけになってる。アルバイトの子も、表の黒板を下げ、店はオーダーストップの時間。

オーナーの手が空いたのをいいことに、私はそんな質問をしてみた。


「どうって…」

マスターは苦笑いしながら、言葉を濁した。


「だって悔しくないですか? ムカつきません?」
「それはわかりますけど…復讐」
「あ、もちろん合法的にですよ。流石に傷害とか脅迫とかは考えてないです。自分の首絞めるだけだから。復讐したはいいけど、自分も刑務所行きなんて、やです。絶対」

私が説明を加えると、マスターはほっとしたように息をついた。
…私が透と刺し違えでもすると思ったのかな。そんな過激に見えるかな。

自分では甚だ理性的な行動派だと思ってるんだけど。


「御園さん、一番の復讐は彼のことを忘れて、あなたが幸せになることだと思いますよ」
「マスターって年いくつですか?」

若く見えたけど、私を諭す言動は落ち着いてるから、意外と行ってるのかな。
マスターの言葉を茶化すように、私は聞いてみた。


「何ですか、突然」
「気になったことは突き詰めないと、気が済まない性格で」
「僕は…38です」
「え!」

絶句してしまった。


「…いくつだと思ってました?」
「30ちょっと過ぎ。行っても、半ばくらいかなあ、って」
「おっさんですみません」
「いえ! そういう意味では。マスター、肌も綺麗だし、お腹も出てないし、見た目若いですよ」

マスターが拗ねたような気がして、私は必死にフォローに入る。


「まあ、こういう仕事ですから…」

結局その日は閉店まで粘ってしまった。



マスターの年齢と独身だってことと、名前は聞き出してしまった。
森智之さんて言うらしい。
だから何だってわけじゃないけど。


パンケーキのお礼を言って表に出る。
行く時に小脇に抱えていたパンフは、コンビニのごみ箱に投げ入れて、私は家に帰った。


明日も仕事。どういう風に透に復讐してやろうか考えながら――。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ねえ、テレジア。君も愛人を囲って構わない。

夏目
恋愛
愛している王子が愛人を連れてきた。私も愛人をつくっていいと言われた。私は、あなたが好きなのに。 (小説家になろう様にも投稿しています)

【完】王妃の座を愛人に奪われたので娼婦になって出直します

112
恋愛
伯爵令嬢エレオノールは、皇太子ジョンと結婚した。 三年に及ぶ結婚生活では一度も床を共にせず、ジョンは愛人ココットにうつつを抜かす。 やがて王が亡くなり、ジョンに王冠が回ってくる。 するとエレオノールの王妃は剥奪され、ココットが王妃となる。 王宮からも伯爵家からも追い出されたエレオノールは、娼婦となる道を選ぶ。

教養が足りない、ですって

たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

殿下、妃殿下。貴方がたに言われた通り、前世の怨みを晴らしに来ましたよ

柚木ゆず
恋愛
「そんなに許せないのなら、復讐しに来るといいですわ。来世で」 「その日を楽しみに待っているぞ、はははははははははっ!」  濡れ衣をかけられ婚約者ヴィクトルと共に処刑されてしまった、ミリヤ・アリネス。  やがてミリヤは伯爵家令嬢サーヤとして生まれ変わり、自分達を嵌めた2人への復讐を始めるのでした。

二十年以上無視してきた夫が、今さら文通を申し込んできました

小豆缶
恋愛
「お願いです。文通から始めてもらえませんか?」 二十年以上会話もなかった夫――この国の王が、ある日突然そう言ってきた。 第一王妃マリアは、公爵家出身の正妃。だが夫はかつて、寵愛する第三王妃の話のみを信じ、彼女を殴ったことがある。その事件が原因で、マリアは男性恐怖症が悪化して、夫と二人きりでは会話すらできなくなっていた。 それから二十年。 第三王妃はとある事故で亡くなり、夫は反省したらしい。だからといって――今さら夫婦関係をやり直したいと言われても遅すぎる。 なのに王は諦めない。毎日の手紙。花を一輪。夜食の差し入れ。 不器用すぎる求愛に振り回されるうち、マリアの中で止まっていた感情が少しずつ動き始める。 これは、冷えきった政略夫婦が「文通」からやり直す恋の話。 ※本作は「存在されていないことにされていた管理ギフトの少女王宮で真の家族に出会う」のスピンオフですが、単体で読めます。

婚約を奪った義妹は王太子妃になりましたが、王子が廃嫡され“廃嫡王子の妻”になりました

鷹 綾
恋愛
「お姉様には、こちらの方がお似合いですわ」 そう言って私の婚約者を奪ったのは、可憐で愛らしい義妹でした。 王子に見初められ、王太子妃となり、誰もが彼女の勝利を疑わなかった――あの日までは。 私は“代わり”の婚約者を押し付けられ、笑いものにされ、社交界の端に追いやられました。 けれど、選ばれなかったことは、終わりではありませんでした。 華やかな王宮。 厳しい王妃許育。 揺らぐ王家の威信。 そして――王子の重大な過ち。 王太子の座は失われ、運命は静かに反転していく。 離縁を望んでも叶わない義妹。 肩書きを失ってなお歩き直す王子。 そして、奪われたはずの私が最後に選び取った人生。 ざまあは、怒鳴り声ではなく、選択の積み重ねで訪れる。 婚約を奪われた姉が、静かに価値を積み上げていく王宮逆転劇。

《完結》初夜をすっぽかされた令嬢は夫を死亡扱いする

さんけい
恋愛
クズ夫の非常識を帳簿で粛々と清算!真実の愛?笑わせるわね! 全14話。

処理中です...