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#17 三人目の付き人
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案の定、子爵は私を囲い込むべくハウスメイドの任を解くと、三人目の付き人に任命しました。あまりの露骨さに、この話をメイド長から聞かされたとき失笑してしまいました。
羨望と嫉妬の目に晒されるのは悪魔になった今でも慣れないので、部屋の整理をするという口実を設けて退散することにしました。
部屋のドアを開けた途端、中からジェシカさんが飛び出し私の腕を引いてベッドに座らせました。
「どんな魔法を使ったの?」
「魔法だなんてそんな……」
「冗談よ」
「……」
一瞬魔法を見破られたのかとヒヤヒヤしました。
「ほんとあんたって凄いのね。先輩面していた過去の私が恥ずかしいわ」
「いいえ、ジェシカさんはいつまでも私の大切な先輩です。誇りを持ってください」
「ははは、ありがとう。皆にイェスは私が育てたって自慢していい?」
「もちろんです」
「短い間だったけどあんたと同じ部屋で楽しかったわ」
「こちらこそメイドのイロハを教えていただきありがとうございました」
「またお会いしましょう」
「ええ」
私はジェシカさんに改めてお礼を言うと、荷物を持って子爵から与えられた個室に移動しました。
個室はいわゆる客室でした。子爵は屋敷に十以上ある客室の内、いくつかを付き人用に与えているのです。客室ということもあり、内装はそれなりに豪華で従者たちの暮らす別棟とは大違いです。
私は込み上げるなつかしさに胸を打たれました。
昔屋敷で父上とかくれんぼをしたとき、この部屋に隠れたのです。この部屋はあのときから何も変わっていません。
私は荷物を部屋の隅に置くと、ベッドに体を投げ出しました。こんな姿を誰かに見られでもしたら、きっと叱られてしまうでしょう。
その日の夜、子爵が商談から帰宅すると私は書斎へ呼び出されました。
「不思議に思っているだろう?」
「……はい。どうして新人である私が付き人に任命されたのでしょうか?」
「それは僕が君を側に置きたいと思ったからだ」
私が無垢な少女ならこの言葉に胸をときめかせていたでしょう。しかし、私はこの裏に潜む獣を知っています。
「私を? ですが私なんて田舎から出稼ぎに来たただの農民です。秀でた能力もございません」
「誰を隣に置くのかなんて僕の自由だろ?」
「それはそうですが……しかし、他のお二人は優れた能力がおありです。私ではとてもではありませんが隣に立てません」
「ではこうしよう。君にはハウスメイドの仕事をたった一つ気で完璧にこなせる要領の良さがある。その才をただのハウスメイドで使い潰すにはもったいない。だから、側で私の手助けをして欲しい」
「わかりました。ご主人様にそこまで言わせるメイドはメイド失格です。謹んでお受けします」
「そう言ってくれると思っていた。では早速明日からよろしく頼む」
こうして私は三人目の付き人になったのでした
羨望と嫉妬の目に晒されるのは悪魔になった今でも慣れないので、部屋の整理をするという口実を設けて退散することにしました。
部屋のドアを開けた途端、中からジェシカさんが飛び出し私の腕を引いてベッドに座らせました。
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「魔法だなんてそんな……」
「冗談よ」
「……」
一瞬魔法を見破られたのかとヒヤヒヤしました。
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「いいえ、ジェシカさんはいつまでも私の大切な先輩です。誇りを持ってください」
「ははは、ありがとう。皆にイェスは私が育てたって自慢していい?」
「もちろんです」
「短い間だったけどあんたと同じ部屋で楽しかったわ」
「こちらこそメイドのイロハを教えていただきありがとうございました」
「またお会いしましょう」
「ええ」
私はジェシカさんに改めてお礼を言うと、荷物を持って子爵から与えられた個室に移動しました。
個室はいわゆる客室でした。子爵は屋敷に十以上ある客室の内、いくつかを付き人用に与えているのです。客室ということもあり、内装はそれなりに豪華で従者たちの暮らす別棟とは大違いです。
私は込み上げるなつかしさに胸を打たれました。
昔屋敷で父上とかくれんぼをしたとき、この部屋に隠れたのです。この部屋はあのときから何も変わっていません。
私は荷物を部屋の隅に置くと、ベッドに体を投げ出しました。こんな姿を誰かに見られでもしたら、きっと叱られてしまうでしょう。
その日の夜、子爵が商談から帰宅すると私は書斎へ呼び出されました。
「不思議に思っているだろう?」
「……はい。どうして新人である私が付き人に任命されたのでしょうか?」
「それは僕が君を側に置きたいと思ったからだ」
私が無垢な少女ならこの言葉に胸をときめかせていたでしょう。しかし、私はこの裏に潜む獣を知っています。
「私を? ですが私なんて田舎から出稼ぎに来たただの農民です。秀でた能力もございません」
「誰を隣に置くのかなんて僕の自由だろ?」
「それはそうですが……しかし、他のお二人は優れた能力がおありです。私ではとてもではありませんが隣に立てません」
「ではこうしよう。君にはハウスメイドの仕事をたった一つ気で完璧にこなせる要領の良さがある。その才をただのハウスメイドで使い潰すにはもったいない。だから、側で私の手助けをして欲しい」
「わかりました。ご主人様にそこまで言わせるメイドはメイド失格です。謹んでお受けします」
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こうして私は三人目の付き人になったのでした
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