財産目当てに殺された私の魂は悪魔公に拾われました。

鉛風船

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#18 安息の終焉あるいは復讐の始まり

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 私が子爵の付き人になってしばらくしたある日、書斎で書類とにらめっこをしていた子爵が持っていた羽ペンを置いて顔を上げました。

「この仕事が終わり次第休暇を取ろう」

「休暇ですか。湖畔の別荘へ行かれるので?」

 子爵の付き人として身の回りの世話をしている私は、紅茶を注ぐ手を止めて聞き返します。

「ああ、空気の綺麗なところでゆっくりしたい。ここのところ働き過ぎた」

「では馬車の手配をしておきます。出立はいつに?」

「そうだな、あれこれを考えて四日後の朝にしようか」

「そのように馭者へ伝えておきます」

「ありがとう」

「従者は何人連れて行きますか?」

「付き人と護衛の私兵だけでいい」

「ご帰宅はいつにしましょう?」

「一週間ぐらいは休みたい。僕が別荘に行っている間は残った従者たちにも休暇を与えてくれ。とはいえ全員休暇にはするなよ? 交代で頼む。それとお前たち付き人にも別で休暇を出すから安心してくれ」

「かしこまりました」

 私は、書斎を出て厩舎へ向かい馭者へ出立の準備をするように伝えると、別棟にいるメイド長へ休暇が与えられる旨を伝え、私は自分の部屋に戻ってきました。

「この時を待ってました……!」

 思わず擬態が解けて尻尾と角が露になります。私は慌ててそれを直し、コホンと咳払いをしました。そしてジャジャを呼び出します。

「ジャジャ、マスターに復讐譚を特等席で見せられそうです、と伝えてくれる? それとマスターの配下のジンを五体ほど貸して欲しい、とも」

「言伝承ったぜ」

 ジャジャはニヤリと笑うと鳥の姿に変身し、窓から飛び立っていきました。

 私はジャジャの後姿を見送りながら窓を閉めると、残りの仕事を一刻も早く片付けるため、付き人二人も連れて子爵のいる書斎へ戻ることにしました。

 ちなみに、この付き人は二人とも私の魔法で既に言いなりにさせています。二人とも優秀な人間ですから、些細なことから私の正体に勘づく恐れがあるからです。

 それを言うなら子爵も相当ですが、彼の前では完璧な人間を演じられているので心配はありません。ならばこの二人の前でも完璧な人間を演じればいいだろうって?

 正直に話させてもらえば、私の悪魔としての力量では一人が限界なのです。マスターレベルにもなれば何千人の前でも簡単にやってのけるでしょう。しかし、私はまだまだ見習い悪魔です。

 確実に復讐を完遂するためにも少しでも不穏因子は排除したいのです。

 私は書斎をノックします。中から子爵の返答があったので入室し、とびきりの笑顔で、

「旦那様、付き人全員で仕事を終わらせていち早く別荘へ行きましょう!」

 と言いました。
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