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#21 悪魔たちのアジト
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「ここはどこだ?」
子爵が目を覚ましました。体を起こして縛られた場所の具合を確認しています。
「ここは悪魔城の地下牢です」
「悪魔城……?」
子爵は眉をひそめ、まだ殴られた頭が痛むのか頭に手をやりました。
「山賊たちのアジトです」
「……僕は誘拐されたのか」
「はい」
「連中は?」
「今はどこかに行ってしまいました」
「そうか……それはそれとして、どうしてイェスは牢の外にいるんだ?」
子爵が怪訝そうな顔を私に向けます。
今、私は子爵の言う通り牢の外で椅子に座っているのです。
「どうしてって……」
「君も僕と一緒に誘拐されたんだろう?」
「それは少し違います」
「違う?」
「はい、私があなたを誘拐したのです」
「……? どういうことだ? 君は山賊たちと仲間だと言いたいのか? ますますわからない」
「仲間というと少し違いますね。彼らは私の配下です」
子爵は鉄格子を両手で掴みグッと顔を近づけました。
「君が彼らの頭領だと? それを信じろと?」
「はい」
「信じたとして、何を理由に僕をさらったんだ? 金か?」
「いいえ」
私の要領を得ない答えに子爵は首を傾げます。
「じゃあなんだ?」
「わからないのですか? 私の声を聞いても?」
「なんのことだ?」
実を言うと、私は田舎娘に擬態して子爵に近づきましたが、一つ擬態をしていないところがありました。
声です。
声だけは何も変えずにレヴィのまま子爵の前に現れたのです。
「ではもう少しヒントを出しましょう」
私は指をパチンと鳴らし、魔法で開かずの間に入ったときに手に取ったあの服をまといました。
「……」
明らかに子爵の顔色が悪くなります。
「どうしました? 何かおっしゃったらどうです?」
「どうやって……その服は……?」
子爵はたじたじと鉄格子から離れました。
「はい。これは旦那様の奥様の服です」
「どうしてそれを着ている?」
「まだ気づきませんか?」
「……」
子爵は端正な顔を醜く歪ませ私を睨み付けます。
その様子はさながら収監された凶悪犯のようです。
「ではこうしましょう」
私は右手で顔を撫でるように覆い隠し、擬態を解いて元の姿に戻りました。
「お、お前は!? 確かに死んだはず! どうして生きている!?」
子爵が牢屋の壁まで後退りました。
「私が生きているか死んでいるかなんてどうでもいいでしょう? 現にこうしてあなたの前に立っているのですから。あっ、もしよければ足も見ますか?」
私はドレスを捲り上げて足を晒しました。
「これは悪い夢なのか?」
「いえいえ、現実ですよ。私は悪魔になったのです」
「悪魔?」
「ええ、ほら、この角としっぽを見て下さい」
「……」
私の両の手が指さす先には、羊のように捻じれた角と針のように細くなった先にスペードのような膨らみのあるしっぽがあります。
子爵は大きく唾を飲み込み額に浮いた汗を袖で拭いました。
「ね?」
「目的は僕への復讐か……?」
「ご名答です。話が早くて助かります」
「殺すのか?」
「はい、と言いたいところですが、ただ殺すのでは面白くないので、悪魔らしくあなたの命を賭けてゲームをしましょう」
「それに勝てば僕は自由になれるのか?」
「はい。負ければ殺します」
「わかった。その提案に乗ろう」
それまで小鹿のように怯えていた子爵が真っ直ぐ立ち上がりました。
何か秘策があるのでしょうか? ですが私はまだ勝負内容も言っていません。きっとハッタリでしょう。
「本当に話が早いですね。もしかして諦めたのですか?」
「僕に拒否権はないからな。覚悟を決めたんだ」
「ふうん、そうですか」
「僕には夢があるんだ。それをお前みたいなやつに邪魔されてたまるか」
「夢……ですか。そのために私は殺されたのですか?」
「ああ」
さも当たり前かのように言ってのける子爵に私は猛烈な怒りを覚えました。このままゲームなどせず一息に捻り潰そうかとも思いましたが、前言を翻すのはどうしても気が引けるため、それはどうにか踏み止まります。
「よかった」
「よかった?」
「ええ、実のところこの数か月、あなたの他人への接し方を見て、ほんの少し情が湧かないでもなかったのですが、やはりあなたは人間の屑でした。心おきなく試練を始められます」
子爵が目を覚ましました。体を起こして縛られた場所の具合を確認しています。
「ここは悪魔城の地下牢です」
「悪魔城……?」
子爵は眉をひそめ、まだ殴られた頭が痛むのか頭に手をやりました。
「山賊たちのアジトです」
「……僕は誘拐されたのか」
「はい」
「連中は?」
「今はどこかに行ってしまいました」
「そうか……それはそれとして、どうしてイェスは牢の外にいるんだ?」
子爵が怪訝そうな顔を私に向けます。
今、私は子爵の言う通り牢の外で椅子に座っているのです。
「どうしてって……」
「君も僕と一緒に誘拐されたんだろう?」
「それは少し違います」
「違う?」
「はい、私があなたを誘拐したのです」
「……? どういうことだ? 君は山賊たちと仲間だと言いたいのか? ますますわからない」
「仲間というと少し違いますね。彼らは私の配下です」
子爵は鉄格子を両手で掴みグッと顔を近づけました。
「君が彼らの頭領だと? それを信じろと?」
「はい」
「信じたとして、何を理由に僕をさらったんだ? 金か?」
「いいえ」
私の要領を得ない答えに子爵は首を傾げます。
「じゃあなんだ?」
「わからないのですか? 私の声を聞いても?」
「なんのことだ?」
実を言うと、私は田舎娘に擬態して子爵に近づきましたが、一つ擬態をしていないところがありました。
声です。
声だけは何も変えずにレヴィのまま子爵の前に現れたのです。
「ではもう少しヒントを出しましょう」
私は指をパチンと鳴らし、魔法で開かずの間に入ったときに手に取ったあの服をまといました。
「……」
明らかに子爵の顔色が悪くなります。
「どうしました? 何かおっしゃったらどうです?」
「どうやって……その服は……?」
子爵はたじたじと鉄格子から離れました。
「はい。これは旦那様の奥様の服です」
「どうしてそれを着ている?」
「まだ気づきませんか?」
「……」
子爵は端正な顔を醜く歪ませ私を睨み付けます。
その様子はさながら収監された凶悪犯のようです。
「ではこうしましょう」
私は右手で顔を撫でるように覆い隠し、擬態を解いて元の姿に戻りました。
「お、お前は!? 確かに死んだはず! どうして生きている!?」
子爵が牢屋の壁まで後退りました。
「私が生きているか死んでいるかなんてどうでもいいでしょう? 現にこうしてあなたの前に立っているのですから。あっ、もしよければ足も見ますか?」
私はドレスを捲り上げて足を晒しました。
「これは悪い夢なのか?」
「いえいえ、現実ですよ。私は悪魔になったのです」
「悪魔?」
「ええ、ほら、この角としっぽを見て下さい」
「……」
私の両の手が指さす先には、羊のように捻じれた角と針のように細くなった先にスペードのような膨らみのあるしっぽがあります。
子爵は大きく唾を飲み込み額に浮いた汗を袖で拭いました。
「ね?」
「目的は僕への復讐か……?」
「ご名答です。話が早くて助かります」
「殺すのか?」
「はい、と言いたいところですが、ただ殺すのでは面白くないので、悪魔らしくあなたの命を賭けてゲームをしましょう」
「それに勝てば僕は自由になれるのか?」
「はい。負ければ殺します」
「わかった。その提案に乗ろう」
それまで小鹿のように怯えていた子爵が真っ直ぐ立ち上がりました。
何か秘策があるのでしょうか? ですが私はまだ勝負内容も言っていません。きっとハッタリでしょう。
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「ふうん、そうですか」
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「夢……ですか。そのために私は殺されたのですか?」
「ああ」
さも当たり前かのように言ってのける子爵に私は猛烈な怒りを覚えました。このままゲームなどせず一息に捻り潰そうかとも思いましたが、前言を翻すのはどうしても気が引けるため、それはどうにか踏み止まります。
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