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第一章 きもかわマンドラの恩返し!

9 付き合い辛い異性関係(落書き表)

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 現国の授業は、どんどん進んでいく。ハヤシライスが好物な事で有名な担任のサムエルは、今やれとばかりにガンガン授業。
 リヴィは、時々は耳を澄まして、板書と担任の「重要なポイント」「テストに出る」と言った辺りはコマメにメモを取りながら、ノートの余白のメモ書きを見つめて自分の考えにふけった。

 土魔法のアダムズ家は、代々、農林水産省の大臣をしているはずだ。その影響……とは考えづらいが、土いじりや登山が趣味という令息のテッドは、確かに、リヴィと趣味が似ているので、メルから見ればまずそいつを攻略しろと言いたくなるだろう。ところで、テッドは、ブライアンと同い年ということだが、今どこにいるのだろう。恐らく貴族なので王立学院の大学部なのだろうが……。
 記憶があやふやということは、それだけ、リヴィが攻略キャラなどに興味がない人生を送ってきた証拠であった。

(高校一年生が大学生をゲームのためにたらすって……かなり無理があるよなあ? でもやらなきゃ、ダンジョンで殺されるし、そうでなくてもゲームクリア出来なくて、ラストでろくなことにならないのよね?)

 高等部と大学部では、建物からして別だし、大学部に行ってはいけないということはないが、基本的には関わらないで学園生活を送る事になっていると思っていた。だが、もしかしたら、高等部と大学部が接点を持つようなイベントがこの先起こるのかもしれない。後でメルに聞いてみよう。
 それから……。

(確か風魔法のハワード家って、奥さんと、お母さんが仲がよいんだよね。今朝も何か言っていたし。ハワード家の奥さんって社交家で派手な人じゃなかったかな。凄く綺麗だったし……いかにも貴族の美魔女って感じの?)

 リヴィは美魔女に悪いイメージはなかった。なぜなら、転生した時にリヴィは、既に現代日本で18歳。その後、15~6年生きているので、現在、精神年齢は33歳前後。その彼女が、見た目は15歳前後の高校生として生きているのである。美魔女のように麗しくエレガントとは言いがたいが、見た目の年齢と中身の年齢が一致しない件については全く口答えが出来ないからだ。それに、自分だって、肉体が年老いた後も、若く美しくしていたくないかと言ったら嘘になる。派手派手しくはしなくてもいいが、若さと健康は是非保っていたい。そうでなければ、大好きな農作業だって出来ないだろう。

(で、そのハワード家の美魔女の奥様の息子が、ヒュー……って誰だっけ?)
 リヴィは、しばらく考え込んだ。考えて、気がついた。

(ヒュー・ハワードって、もしかして……大学部の”雷の嵐サンダーストーム”ヒュー・ハワード!?)
 どこの大学にも名物会長はいるが、王立学院の今の代では、大学部の学生会長、ヒューの名前は、高等部はおろか、中等部でも知らない者はないレベルであった。
 とにかく、パワフルな人物で、学生会長の他にも文化祭や体育祭の実行委員会の会長を歴任しており、簡単な言い方をしてしまうと、”王立学院の番長”である。しかも、アイドル。
 どういうことかというと、それだけではなく、演劇部の部長も兼ねており、そっち系の能力にも非常に秀でているのだ。結果的に、彼が劇やダンスをやると、必ず”嵐のような拍手が起こる”、その結果ついたあだ名がサンダーストーム。大学生にもなって恥ずかしい話である。それで、本人に向かって”サンダーストーム”とか言ったりすると、非常な怒りを買うらしい。

 美魔女の母親から生まれ、本人も劇やダンスでそんな評価を得る訳だから、当然ながら、恵まれた容姿を持っている。それこそ母親似と言う噂を聞いた事がある。父親は、外務省の大臣で、やはり語学堪能で知的かつエレガントな容姿をしていたような。

(………………その、ヒュー・ハワードをたらせって…………どうしろってのよ……)
 リヴィは授業を聞くのも忘れて真っ青になった。
 どうしたって、どうやって接点を持っていいかすら、わからない。リヴィは、貴族の娘らしく、母親に連れられて観劇に行く事は何度かあった。劇やダンスは見れば面白いと思うが、自分でやってみようとか思わない。
 それに比べれば、性格はのんびり優しい、テッドの方に行けとメルが判断するのも当たり前だろう。

 そんな名物番長(会長)と、自分がいきなりどうこうなるなんて、考えた事もない。

 もちろん、アダムズ家のテッドともだが……。
(あれ? それで、ゲーム内補正で、ママとハワードの奥さんが仲良しなのか? 要するに、原作オリヴィアは親のコネ使って、ヒュー・ハワードをたらしたとか、そういう筋書きもあったのかな? ……まあ、どうしようもなかったら、ママを頼ろう。他にどうしようもないよ、こんなの)

 リヴィは冷静にそういうことを考えた。
 後の二人も、ヒューと同じかそれぐらい、難物のように思える。

 火のマーティン家のデビッドは、確か、代々海軍の将軍を担っている父親の血を引いて、相当な武闘派で、容姿端麗頭脳優秀だったはずだ。その妹も、同じ系統で”気が強い美人ハンサムガール”で、間違ってもチーズケーキじゃなかったはず。
 ヒューとの相性は良さそうな感じである。
 だが、肝心の本人が、真南のオーレリア王国に留学中であるから、たらすとかたらさないとかそういう問題では全然ない。
 今まで接点もなかったのに、いきなりオーレリア王国に文通でも申し込めというのか。

(……いつ留学から帰ってくるかわからないけれど、軍人で武闘派とか……コワイ……)
 リヴィは素直にそう思った。
(それぐらいなら…………まずは妹…………もこわそうだけど、妹さんの名前なんていったっけ? 妹さんとお知り合いになって、デビッドに殴られないように頼もう。うん、とりあえず、軍部を敵に回すのは絶対にやめておきたいところだよね。おっかないもん。たらすとかたらさないとか以前に、怒らせないようにして、妹さんと仲良くしておこう。私に出来るのはそれが精一杯だわ)
 と、リヴィはへたれ全開な事を考えた。

(きっとそのための妹で、アンシーも苦労しているんだろうなあ……)
 と、そこまでへたれで失礼な事まで考えた。
 確か、妹の名前はブリジット。兄同様、華麗な容姿で、サバサバながらも誇り高い性格のはずである。

 残るは、先ほどの、禁断の魔法”空(無)”のモーリス家である。
 そこには、妖艶で耽美な双子の兄妹がいる。そっくり同じ顔が二つで、禁忌の魔法を使いこなすという設定だけでもうおなかいっぱいだ。

 空属性というのは、”がれドル”の中では虚空、すなわち虚無を表すとされる。地水火風の四大元素の司る魔法のトップクラスを、五大公爵家は司っているのだが、まあその専門の魔法使いではあるのだが、その全てをキャンセルして「虚無」としてしまうのが空属性だ。
 要するに、全ての魔法を問答無用で無効化してしまうお家柄。それはそれで恐いし、だから禁忌の家門とされるのだが……。

(…………こっちにも妹いるし、確か私と同じ学年のはずだけど…………どうしたらいいのよ。そんなこってりした設定…………)
 だが、敵に回したら、自分の魔法も何もかも、キャンセルされてしまうのだ。付き合わざるを得ない。だが。

(つきあいづらっ……!!!!)
 そう思わざるを得ないリヴィであった。
 メルが、テッドを選んだのが、よくわかる。
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