婚約破棄された俺をお前が好きだったなんて聞いてない

十山

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3.新しい出会い

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辺境警備の第一部隊の副隊長になり、交代勤務の日々を過ごしているうちに、24歳になった。相変わらず実家暮らしだが、近年、暴走した魔獣が頻繁に出没するので、見合いの話はしばらく保留だ。

オレの家の領地には、魔獣が生息している森がある。魔獣の森は神秘の土地で、希少な資材があり、魔獣の死体も魔術の材料になる。魔術師たちによって探索が行われ、生態系を崩さないように現在は王に許可された者しか入れない危険地域に指定されている。
だが、密猟者が入る事があり、その森を護る我が家の長年の悩みの種だ。
密猟者どもはマナーを知らないから、魔獣が荒れる。荒れると人里に降りてきて、地を荒らし人を襲う。
密猟者のとばっちりを受けるのは、我が領民なのだ。

魔獣を鎮めるために、領地の教会には浄化が行える司祭が王都の神殿から派遣されている。魔獣は闇の魔力を持つので、光の魔力で行う浄化で鎮める事が出来る。
だが、辺境に派遣される司祭はそんなに実力があるわけではないという現実がある。ぶっちゃけ役に立たない。
人格は良くても浄化の元になる光の魔力があまり無いとか、性格が歪んでるとか、引退間近とか。長くても2年で交替していく。
司祭の力では足りない部分は、魔術師に依頼するか、警備隊で対応するしかないのだ。

今年も入れ替えの時期になり、今回はこの領地になんと司教が来るという。司教といえば司祭の上の階級だから、いつもよりは期待できるだろう。しかも、駐在してくれるというのだ。

ここのところ、密猟者が単独ではなく組織化しているようで、なかなか阻止できていないのが現状だ。森を荒らされ飛び出てきた魔獣は気が立っていて、司祭と魔術師の力で鎮めることができず、警備隊でも怪我人が増えている。

「隊長、司教様が到着したそうです。早速、明日、打ち合わせをしたいそうなのですが」

警備隊の駐在所に、司教の警護で王都から来た聖騎士と、警備隊の隊員が一緒に報告にやって来た。
隊長と隊員が話している間に、聖騎士が話しかけてくる。

「兄さん、久しぶり」
「エミリオ、ご苦労だったな。道中は問題なかったか?」
「うん!司教様、すごい方なんだよ!まさかこんな辺境の地に駐在してくれるなんて、本当にラッキーだよ!」

司教に王都から同行した聖騎士は、5つ下の弟だった。弟は新しく駐在する司教に心酔しているようだ。腕がいいなら、ありがたい。
今までも一時的に高位司祭が派遣されてきたことはあったが、高慢で会話など出来る感じでは無かったから、あまりいい印象は無いのだが。

「初めまして。ティート神、第7番目の使徒、アトラと申します」

でかっ

翌日、教会に隊長と訪れた。前任の司祭は、引き継ぎを終えて、すでにこの地を離れたという。挨拶もせずに薄情な奴だ。

「7番目様とは…!こんなところに来ても大丈夫なのですか?本来は本殿に居なくてはならないのでは…」
「いえいえ、そんな事は無いんですよ。5番目から12番目までは、必要とあらばどこに居てもいいのです」

にこにこと隊長と話している司教は、背の高いオレと隊長よりも頭半分ほど大きい。濃い金髪に長い睫毛、ツヤツヤの肌に少し垂れた青く澄んだ大きな瞳。優しげな整った顔をしているが、背格好は聖騎士と言われても納得してしまいそうだ。

我が国が祀っているティート神に仕える司祭のうち、1番目から12番目までが高位司教にあたる。聖職者には光属性の魔力を持ち浄化を行える者が就くが、他にも得意分野というものを持つ。1番目から12番目までは、それぞれの力の役割があり、入替え制となっている。

「私の祈りの力が、この地には必要だと判断したまでです」
「失礼ですが、アトラ様はどういった…」
「私は魔獣と意思疎通ができるのです。司祭なら持つ浄化の力ももちろんあります。前々から、この地には私が必要だと願い出ていたのですが、未熟ゆえに許されず…昨年、7番目の使徒に昇格したので、来る事ができました」
「そうだったのですね。ありがたいことです。現在の状況なのですが…」

警備隊長からの状況説明が終わると、アトラ司教の元に1羽の白い鳥が飛んできて肩に留まった。ずいぶんと優美な鳥だが、魔獣のようだ。
白い司祭服の美丈夫と、白い鳥、なんとも絵になる。

「この子は、私の使い魔です。森の動向を探らせようと思います。話しを聞く限り、密猟者に苛立っているだけでなく、森に何か問題が起きているのかもしれません」
「なんと、そんなことが出来るのですか…頼もしい限りです」
「また明日も教会にお越しいただけますか?」
「わかりました。明日は私が森の入口番なので、副隊長のレオナルドが伺います」
「!わかりました。よろしくお願いします。レオナルドさん」

さっと司教が手を出してきたので、とっさに握手する。
「よろしくお願いします」

手を握ったその瞬間、司教の身体がピカピカと光った。

「?!」
「あっ、すみません。つい…」
「つい」
「はい、その…うっかり…」
「そうなのですね…?では、移動でお疲れでしょうから、明日もこの時間でよろしいでしょうか。教会に伺います」
「ええ。お待ちしてますね」

光った時は動揺していたアトラ司教は、こほんと咳払いすると落ち着いて、にこりと綺麗に笑った。

なんか、あの急に光るの、デジャヴ…前に見たような…?

………気のせいか?
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