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番外.王都からの道中
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「アトラ司教様が来てくださるとは、我が領地の誉れですっ。心より感謝申し上げます」
エミリオは、魔獣の森を保護する役目を持つ、侯爵家の出身だ。三男で、王立学園を卒業してから、王都で聖騎士をしている。
この度、魔獣の暴走に悩まされている侯爵家の領地に、高位神官の一人であるアトラ司教が配属されることになり、問題が落ち着くまでの警護を任された。
行きの警護は数人の聖騎士も同行し、現地に残るのはエミリオだけだ。
本来は他の聖騎士と同じように、外で馬に乗り護衛するのだが、アトラ司教の希望でエミリオは馬車に同乗している。
向かいに座るアトラ司教は、エミリオにとって雲の上の人であり、眩い聖人である。
「かねてよりの希望は出していたのですが、なかなか受理されなくて…嬉しい限りですよ」
「そうだったのですか!」
「エミリオ、と呼んでも?」
「光栄であります!」
「お兄さんには、そんなに似ていないのですね」
「兄、と言いますと?2人居ますが…」
「レオナルド先輩です」
アトラ司教が二番目の兄を先輩と呼んだのに、エミリオは驚いた。
「王立学園でご一緒でしたか?」
「ええ。お兄さんから聞いたことは?」
「無いですね…兄は寡黙で、自分の事はあまり話さないので…僕とは入れ替わりで卒業しましたし」
「そうですか。レオナルド先輩は、2学年上の先輩で、生徒会によく顔を出されていたので知っているんです」
「そうなんですね!知らなかったです」
兄の学生時代のことはよく知らないが、生徒会で活躍するアトラ司教の学生時代を知っている。その頃から光り輝いていたから。エミリオからは2つ上の学年で、平民にして生徒会に入り、しかも貴族を退けて首席で卒業していったのだ。
卒業後、光属性の者の多くがなる聖職者になり、数年のうちに7番目の使徒になったのだから、たいした実力者である。
ちなみに入れ替え戦は、従えた魔獣の数を競うものであったと聞く。
その過酷な争いのせいか、学園に居た頃の穏やかさとは違い、聖騎士として接するアトラ司教は、向かってくる敵に容赦なさそうな清廉潔白な孤高の人だった。
時折、聖騎士の訓練にも参加していて、質実剛健な人でもある。魔力に奢ることなく、ストイックに鍛える姿は、聖騎士たちにも大きな励みとなっていた。
「レオナルド先輩に会うのが、実は楽しみで…僕のこと、どう思うかな…」
頬を染めるアトラ司教が、普通の人に見えて、エミリオはほっこりする。
「きっと喜ぶと思います!兄はちょっと素っ気ないところもありますが…」
「口数が少ない方ですよね。そんなところも素敵でしたよ」
兄ちゃん、やるぅ~。
エミリオは、長兄とは8歳、次兄のレオナルドとは5歳離れている。兄たちは話し掛ければ答えてくれるが、自分たちから話すことといえば業務連絡みたいな内容だった。
自然と、エミリオは口数が多くなった。
肉親を褒められて単純に嬉しいし、こんな風に自分の知らない兄の学生時代を、アトラ司教に話してもらえるのも嬉しかった。つい、気安く、神殿に居る時と雰囲気が違いますねと言ってしまった。
優しげな見た目のため、特にベテランが多い神殿では舐められることが多かったと聞き、納得した。
きっとこれが素なんだろう。
すっかりアトラ司教に気を許したエミリオは、馬車の中で、王立学園での話しで盛り上がったり、家での兄の話しをしたりして、侯爵家までの3日間を過ごしたのだった。
エミリオは、魔獣の森を保護する役目を持つ、侯爵家の出身だ。三男で、王立学園を卒業してから、王都で聖騎士をしている。
この度、魔獣の暴走に悩まされている侯爵家の領地に、高位神官の一人であるアトラ司教が配属されることになり、問題が落ち着くまでの警護を任された。
行きの警護は数人の聖騎士も同行し、現地に残るのはエミリオだけだ。
本来は他の聖騎士と同じように、外で馬に乗り護衛するのだが、アトラ司教の希望でエミリオは馬車に同乗している。
向かいに座るアトラ司教は、エミリオにとって雲の上の人であり、眩い聖人である。
「かねてよりの希望は出していたのですが、なかなか受理されなくて…嬉しい限りですよ」
「そうだったのですか!」
「エミリオ、と呼んでも?」
「光栄であります!」
「お兄さんには、そんなに似ていないのですね」
「兄、と言いますと?2人居ますが…」
「レオナルド先輩です」
アトラ司教が二番目の兄を先輩と呼んだのに、エミリオは驚いた。
「王立学園でご一緒でしたか?」
「ええ。お兄さんから聞いたことは?」
「無いですね…兄は寡黙で、自分の事はあまり話さないので…僕とは入れ替わりで卒業しましたし」
「そうですか。レオナルド先輩は、2学年上の先輩で、生徒会によく顔を出されていたので知っているんです」
「そうなんですね!知らなかったです」
兄の学生時代のことはよく知らないが、生徒会で活躍するアトラ司教の学生時代を知っている。その頃から光り輝いていたから。エミリオからは2つ上の学年で、平民にして生徒会に入り、しかも貴族を退けて首席で卒業していったのだ。
卒業後、光属性の者の多くがなる聖職者になり、数年のうちに7番目の使徒になったのだから、たいした実力者である。
ちなみに入れ替え戦は、従えた魔獣の数を競うものであったと聞く。
その過酷な争いのせいか、学園に居た頃の穏やかさとは違い、聖騎士として接するアトラ司教は、向かってくる敵に容赦なさそうな清廉潔白な孤高の人だった。
時折、聖騎士の訓練にも参加していて、質実剛健な人でもある。魔力に奢ることなく、ストイックに鍛える姿は、聖騎士たちにも大きな励みとなっていた。
「レオナルド先輩に会うのが、実は楽しみで…僕のこと、どう思うかな…」
頬を染めるアトラ司教が、普通の人に見えて、エミリオはほっこりする。
「きっと喜ぶと思います!兄はちょっと素っ気ないところもありますが…」
「口数が少ない方ですよね。そんなところも素敵でしたよ」
兄ちゃん、やるぅ~。
エミリオは、長兄とは8歳、次兄のレオナルドとは5歳離れている。兄たちは話し掛ければ答えてくれるが、自分たちから話すことといえば業務連絡みたいな内容だった。
自然と、エミリオは口数が多くなった。
肉親を褒められて単純に嬉しいし、こんな風に自分の知らない兄の学生時代を、アトラ司教に話してもらえるのも嬉しかった。つい、気安く、神殿に居る時と雰囲気が違いますねと言ってしまった。
優しげな見た目のため、特にベテランが多い神殿では舐められることが多かったと聞き、納得した。
きっとこれが素なんだろう。
すっかりアトラ司教に気を許したエミリオは、馬車の中で、王立学園での話しで盛り上がったり、家での兄の話しをしたりして、侯爵家までの3日間を過ごしたのだった。
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